THE ROOSTERSのアルバム『The Basement Tapes~Studio Session 1980』『The Basement Tapes~Live 1982』が、2025年1月22日(水)にリリースされる。両作は結成45周年記念作品の第2弾で、レコードデビュー直前のバンドがオリジナルメンバーでおこなったスタジオセッションと、同じく4人による東京・新宿LOFTでのライブをそれぞれ収録。そんな貴重音源を編集者/ライターの荒野政寿に紹介してもらった。 *Mikiki編集部


 

デビュー前の危うい魅力に満ちたセッション

メンバー公認のもと、リイシューが活発に続くTHE ROOSTERS。昨年の『The Basement Tapes~Live at Shibuya eggman 1981.7.14. 1st show』『The Basement Tapes~Live at Shibuya eggman 1981.7.14. 2nd show + Rehearsal』に続いて、新たに2タイトルがCD・アナログ盤の2フォーマットで再発される。どちらも第1期の4人=大江慎也(ボーカル/ギター)、花田裕之(ギター)、井上富雄(ベース)、池畑潤二(ドラムス)による演奏だ。

『The Basement Tapes - Studio Session 1980』は、日本コロムビアからデビューする以前の貴重なスタジオ録音を収録。『THE BASEMENT TAPES~SUNNY DAY未発表スタジオ・セッション』として2003年にCDがリリースされるも、長い間入手が困難になっていた音源だ。

ザ・ルースターズ 『The Basement Tapes~Studio Session 1980』 ユニバーサル(2025)

DISC 1の①~⑨は、契約寸前までいったビクターのスタジオで録音されたデモ。ディレクターと相性が合わずビクターとは間もなく破談になるが、同社のシンボルマークにちなんでニッパー・セッションと呼ばれることになる9曲が記録された。初期ローリング・ストーンズやヤードバーズなど、60sブリティッシュビートの香りが濃厚に漂うが、スピード感やビートの強度はドクター・フィールグッドやパンクロックのそれに更新済みだ。

全体にリバーブが多めにかかった、湿り気のあるサウンドなのがニッパー・セッションの特徴。オリジナル5曲、カバー4曲という構成で、後者はすべてローリング・ストーンズがレパートリーにしていた曲だ。ファーストアルバム『THE ROOSTERS』に収められる“新型セドリック”はむき出しの原石という感じだし、“気をつけろ”は歌詞がアルバムのバージョンと一部異なる。“ROUTE 66”はローリング・ストーンズとドクター・フィールグッド、両方のアレンジをミックスした感じの荒々しい演奏。

一方、跳ねるビートと独特なポップさのバランスがおもしろい“ONE MORE TRY”のように、その後の展開を予期させるオリジナル曲もある。“BABY I LOVE YOU”はデイル・ホーキンスの“Susie Q”を彷彿させるメロディが印象的。その“Susie Q”をカバーしたクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルが池畑潤二のお気に入りだったことも思い出す。

DISC 1の⑩~⑰は、ビクターと決裂後に録音されたデモ。ニッパー・セッションに比べて残響音の少ない、比較的ストレートな演奏が聴ける。今回のリマスターでリズム隊がいくらか前に出たようで、“WALKING THE DOG”は力強いキックとベースのグルーヴ感がつかみやすくなった。のちに『INSANE』に収められる“ALL NIGHT LONG”の初期デモも貴重。ドン・コヴェイのオリジナルともローリング・ストーンズ版とも異なる、ざらついた質感の“MERCY, MERCY”は、この時期ならではの危うい魅力に満ちている。

 

ルーツ志向から脱皮、THE ROOSTERSサウンドに近付いた演奏

DISC 2に収められた15曲は、ファーストアルバム『THE ROOSTERS』のために赤坂ミュージックスタジオで録音されたもの。引き続きローリング・ストーンズがらみの曲を多く取り上げているが、中でもアップテンポで繰り出される“UNDER MY THUMB”のカバーはこれまでとベクトルが異なり、ルーツ志向からの脱皮を感じさせる。ニッパー・セッションで演奏していた“ONE MORE TRY”や“BABY I LOVE YOU”も、我々が知っているTHE ROOSTERSのサウンドにいよいよ近付いた印象だ。

オリジナルアルバム未収録曲が聴けるのもポイントで、ヘヴィな演奏が押し寄せる“TELL ME YOUR NAME”はバレット・ストロングの“Money (That’s What I Want)”を下敷きにしたはず。軽快な“BYE BYE MY GIRL”はファーストアルバムに収録されても違和感がなさそうな佳曲だ。こうした強力な楽曲群から収録曲が選び抜かれたのだから、『THE ROOSTERS』が純度の高いロックンロールアルバムになったのも当然なのであった。