8月にアルバム『暴動クラブ』をリリースし、渋谷CLUB QUATROでのワンマンライブも成功させた暴動クラブが、年を跨がないうちに1st EP『撃ち抜いてBaby,明日を撃てLady』を届けてくれた。1960年代のR&B、ガレージ、プロトパンク的な音楽性に振り切り、サウンドもアナログヴィンテージ機材による当時のやり方の再現性プラスアルファにこだわったアルバムに対し、タイトル曲はその荒々しい魅力を残しつつ、パワーポップ創世記を思わせるメロディオリエンテッドな方向性に向かっている。カバー曲も、ロックンロールとポップの間に橋を架けるような浜田省吾の“あばずれセブンティーン”をチョイス。作品全体として暴動クラブの新たな魅力を味わうことのできる内容に。今回はバンドのフロントマンである釘屋玄に、アルバムリリース後の活動の流れやEPに込めた想いについて、話を訊いた。

暴動クラブ 『撃ち抜いてBaby,明日を撃てLady』 BEAT EAST/FORLIFE SONGS(2024)

 

僕らがカッコいいと思う音楽は現在進行形で輝ける

――8月7日に1stアルバム『暴動クラブ』をリリースして、同月末にバンド史上最大キャパの渋谷CLUB QUATTROでワンマンを行いましたが、振り返ってみて感触はどうでしたか?

「『暴動クラブ』は曲も音も、1960年代のビート音楽に振り切った内容だったので、ライブのお客さんも、そういった時代の音楽に精通した方々が多いんだろうなと思っていたんですけど、意外とそうでもなくて、僕らがカッコいいと思ってやっていることが、現在進行形でカッコいいものとして輝ける可能性を感じられたことが嬉しかったですね。

でも、それで一区切りついたとか、何かを成し遂げたとか、そういう感覚はなくて。ワンマンが終わってから早い段階で今作の制作に取り掛かりましたし、ライブもたくさんありましたし」

――いまだに興奮冷めやらぬ、みたいな?

「いえ、単純にやることがいっぱいあるなあって。いつ頃までに曲作らなきゃとか、あのライブに向かってどんなことをしようかとか」

――アルバムを出してまたすぐにEPをリリース。そして制作中の曲もたくさんあるわけですよね? ビートルズやローリング・ストーンズ、昔とはベクトルは違いますが現代のキング・ギザード&ザ・リザード・ウィザードやタイ・セガールも、とにかくたくさん作品を出している。そういうロックンロールやガレージロックの系譜が重なったのですが。

「当時の音楽業界の事情とか、アーティスト単体が考えていることとか、いろいろあると思うので、彼らと僕らが同じ気持ちかどうかはわかりません。ただ、曲を作り溜めて1年にアルバム1枚、もしくはそれよりも長いスパンで出すよりは、思い立ったらすぐに作ってすぐに出す。それをかなえられる環境がありがたいですね」

 

ソフトロックの意外な影響

――タイトル曲の“撃ち抜いてBaby,明日を撃てLady”は、いつ頃どのようにして作ったのですか?

「元になったコード進行は2年くらい前にiPhoneで録りました。iPhoneのデータがいっぱいになったので、いらないものを消していた時に、これは捨てずに何かに活かしたいと思って。それがアルバムをリリースして、ワンマンを終えた頃。そこから10月の頭頃に、あらかた仕上げてレーベルに提出した、という流れでした」

――アルバム収録曲よりもメロディオリエンテッド、当時の歴史と照らし合わせると1960年代後半のパワーポップ前夜のような音楽性、という印象を受けました。

「もともとは、ヴェルヴェツ(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド)の“After Hours”みたいな、アコースティックな曲を作ろうとしていたんです。ルート音が半音ずつ下がる感じは、シーナ&ロケッツの“MOONLIGHT DANCE”がリファレンスになっています。それを4人でアレンジしていったら、みんないい感じで好きに弾いてくれて、パワーポップバンドによるソフトロックのカバーのようなノリになりました。

アルバムではメンバーの気持ちが1960年代のビートミュージックに向いていましたが、今回は作曲した僕から特に何も注文しなかったし、完成した時のイメージも決めずに作っていきました。そういう視野のオープンさがいい感じに転がった曲だと思います」

――ソフトロックというのは、ビーチ・ボーイズの『Pet Sounds』を象徴とする、日本国内で生まれたカテゴリーのことを指していると思うのですが、そこは暴動クラブの音楽において激しいだけではないレイヤーの、重要な要素になっているのではないかと。

「レコード屋の棚でソフトロックと書かれているコーナーにあるアーティストの作品が好きで、最初はコンピレーションアルバムを買って聴いていました。アーティスト単体で好きな作品となると、スパイラル・ステアケースの『More Today Than Yesterday』が特に好きですね。レフト・バンクもめちゃくちゃ聴いてました。

僕の中で、ガレージロックがアドレナリン注射だとしたら、ソフトロックはわりと日本的というか、昔の歌謡曲のアーティストや作曲家たちに影響を与えていたという意味で、昔から聴き馴染みのある音楽なんです。暴動クラブには、どちらの要素も入っているんじゃないかなと」

 

反復せず突き進むユニークな曲構成

――いわゆるAメロ→Bメロ→サビの繰り返しではなくて、サビが2段階になっていて頭のメロディは使い回さない構成になっています。曲が前に進みながら展開していく、6分近い大曲です。このアイデアはどこから出てきたんですか?

「制作用のグループLINEにデモを送ったら、メンバーから〈長い!〉って返ってきました(笑)。

僕は普段の会話でもそうなんです。長々喋らずに端的に一言で言える人がカッコいいと思いつつ、話がアチコチに飛んじゃうタイプで……って今喋ってるこの感じがまさにそうなんですけど。これ、答えになってます(笑)?」

――はい。ここから話が展開されて、曲の話題に繋がっていくんだろうなと(笑)。

「ならよかったです(笑)。で、ソフトロックの曲って、メロディはわかりやすいんですけど、コード進行が変わっていたり、曲の展開がおもしろかったり、それ以前のオールディーズ音楽と比べると、さまざまな要素が詰まった凝った作りになっていますよね。

ソフトロックのそのあたりにフォーカスしていたら、僕の話がアチコチに飛んじゃうように、A→B→C→D→E→Fみたいな曲構成になって、戻れなくなっちゃったんです。その名残が、この曲には残っています。あと、前提としてアルバムとは違うことをやろうと思っていたので、そういった感覚が重なって6分近くになっちゃったんだと思います」

 

井上富雄&飯尾芳史のサポートで辿り着いた自由で個性的なアンサンブル

――プロデューサーに迎えたTHE ROOSTERSの井上富雄さんとのレコ―ディングはどうでしたか?

「音の面は、井上さんとエンジニアの飯尾(芳史)さんにほぼお任せしました。アルバムをプロデュースしてくださったTHE NEATBEATSの眞鍋(崇)さんからは、ヴィンテージ機材のこと、1960年代の音や曲を活かすための演奏方法などについて教わりました。そして、井上さんと飯尾さんとの制作もまた、僕らにとって新しくて大きな学びがありましたね。今回のように歌のメロディを際立たせようとすると、演奏はどうしてもこじんまりして伴奏的になってしまうイメージがあるんですが、僕はそうなるのが少し恥ずかしいんですよね(笑)。

それについては、メンバーそれぞれの感性でクリアできそうだなって、作業を進めていくうちに実感できたんですけど、やっぱり音がぶつかっちゃうところや、しっくりこないところが出てくる。そうなると、僕らは音楽理論がわからないので、うまく回避できない。で、手慣れたロックンロールマナーに走ってしまいがちなんです。そこを、井上さんと飯尾さんが、プロデューサー、エンジニアというそれぞれの立場から、うまくサポートしてくださいました。お2人がいたからこそ、ジャンルを気にせずに、メンバーそれぞれの個性が活きた自由なフレーズの重なりが生み出せたと思います」

――サビでがなる釘屋さんのボーカルと、ベースの城戸“ROSIE”ヒナコさんのハモリのコントラストがすごくよくて。

「あそこはがなりたかったけど、がなるだけだとメロディが立っている曲の中でギザギザしすぎちゃうから、ヒナコさんの声を入れてみようって。いい感じにハマったと思います」

――MVもカッコいいですね。

「僕らのレパートリーの中ではポップな曲なのに対して、MVは殺伐としていますよね(笑)。ロケ地やセットは、なかなかエキサイティングでした。炎がめちゃくちゃ燃えてるし、血のりも使ったし、昔の刑事ドラマみたいだったんです。

撮影前にちょうど『あぶない刑事』を一気観したタイミングで、ヒナコさんと昭和の男のやさぐれ感やカッコよさについて話していたところだったので、個人的にも熱い内容になっています」

 

ロックンロールを信じて成り上がった浜田省吾へのリスペクト

――続く“あばずれセブンティーン”は、釘屋さんと同じ広島県出身のアーティスト、浜田省吾さんのカバーです。

「EP全体として、ポップだけど誰が聴いてもロックンロール、という印象にしたかったのと、単純に僕が浜田さんのファンなので、カバーすることにしました」

――この“あばずれセブンティーン”が収録されているアルバム『Home Bound』は、浜田さんのキャリアにおいて、飛び抜けてロックンロール色の強い作品ですが、それ以外のアルバムも含め、お好きなんですか?

「はい。フォーキーなデビュー期から、オールタイムで好きです。浜田さんは、アウトプットの色はさまざまでも、ずっとロックンロールという言葉を意識して第一線を走っていた人なんだろうなって、ライブからも作品からも感じることができるんです。僕はシンガーソングライターではないので、ロールモデルと言うとニュアンスは違ってきますが、ロックンロールを信じて売れた、成り上がることができた方のお一人という印象を持っていて、すごく勇気づけられました。〈オレについてこい〉みたいなタイプではなくて、人間の根源的な弱さとか情けなさとかを歌っていて、そういうことを汲み取ってくれている感じも、好きですね」

 

ミック・ジャガーのようにバンドの中で輝く人

――釘屋さんの自認について訊きたいです。シンガーなのか、ソングライターなのか、バンドマンなのか、いろいろあると思うんですけど。

「難しいですね……。歌についてはなりゆきで歌うことになった感じなんです。ドラムはまったくできないので論外として、ギターもそんなにうまくない。けどバンドにいられるならギターでもドラムでもシンセでもありかなと。

そうですね……、ソニック・ユースにいた頃のジム・オルーク、〈道楽担当〉みたいな(笑)。ジムさんはいろんな楽器ができますけど、ニュアンス的には近いかもしれません。何か特定のプレイヤーという自認はなくて、〈大きい人が真ん中でグネグネしているな〉くらいの感じで捉えてもらえたらと。

あ、でも、やっぱりミック・ジャガーですかね。この流れだと、ミック・ジャガーが存在感だけの人みたいな話になっちゃうんで、それは違うということは大前提です(笑)。ミック・ジャガーって歌が上手いんですけど、テクニカルなところを打ち出すわけではなく、20代前半からずっとあの感じで、バンドの中で輝く人、そしてバンドをデザインできる人だと思うんです」

――2025年の活動について、言える範囲で教えていただけますか?

「4月にLIQUIDROOMでワンマンライブを開催します。今それに向けていろいろと準備していますし、これから作品のリリースも含め、いくつかの報告ができると思います」

 


RELEASE INFORMATION

暴動クラブ 『撃ち抜いてBaby,明日を撃てLady』 BEAT EAST/FORLIFE SONGS(2024)

リリース日:2024年12月4日(水)
品番:FSCR3
価格:1,650円(税込)

※CDのみの発売で、配信等はありません。

TRACKLIST
1. 撃ち抜いてBaby,明日を撃てLady 作詞・作曲 釘屋玄 編曲 暴動クラブ
2. あばずれセブンティーン 作詞・作曲 浜田省吾 編曲 暴動クラブ
3. 欲望 作詞・作曲 釘屋玄 編曲 暴動クラブ
4. 撃ち抜いてBaby,明日を撃てLady - Alternate version 作詞・作曲 釘屋玄 編曲 暴動クラブ

プロデュース:井上富雄(M1, M4)
エンジニア:飯尾芳史(M1, M4)

 

LIVE INFORMATION
暴動集会・第二回

​2025年4月22日(火)東京・恵比寿 LIQUIDROOM
開場/開演:18:30/19:30

■チケット販売スケジュール
プレイガイド先行(抽選):2024年12月16日(月)12:00~2024年12月22日(日)23:59
一般チケット(先着):2024年12月28日(土)10:00~
ライブ物販手売りチケット(一般&学割)

 

■暴動クラブ公式HP
https://voodooclub.fanpla.jp/