©Makoto Kamiya

遂に日本で実現するシュトロッセとのデュオ、〈目玉〉はルクー

 1997年生まれのヴァイオリニスト、辻彩奈が長く熱望してきたフランス人ピアニスト、エマニュエル・シュトロッセ(1965年ストラスブール生まれ)との日本での共演を3月18日、東京の紀尾井ホールで実現する。2017年に江口玲のピアノと共演したデビュー公演以来2年に1度のペースで開き重ねてきた自主リサイタルの5回目。プログラムはベルギーの作曲家で固め、イザイの小品“悲劇的な詩”の後はフランク、ルクーとソナタの大作2曲に挑む。

 「2019年にフランス・ナントのラ・フォル・ジュルネ音楽祭でシュトロッセさんと初めて共演したのがフランクでした。うんと若い時に手がけて以降長く封印していた作品でしたが、とても素晴らしいピアノと出会い、初めて公開の演奏会で弾くことができました。いつかまた共演したい、と思っていたら翌年のナントでも実現してベートーヴェンの“ロマンス”2曲とソナタ第7番を演奏。私の恩師である(レジス)パスキエ先生とも親しい方なので勇気を出して〈日本でもご一緒したい〉とお願いしたところ、万事に優しいシュトロッセさんが〈もちろん〉と快諾してくださったのです」

 しかし、日本までの道のりは長かった。2019年の無伴奏(J ・S・バッハの“ソナタとパルティータ”全曲)に続く2021年のリサイタルでシュトロッセとモーツァルト、ベートーヴェン、権代敦彦への委嘱新作を共演する予定だったが、コロナ禍で来日中止、「初めての同世代のパートナー」として阪田知樹が代役を務めた。この縁が阪田とブラームスの“ヴァイオリン・ソナタ”全集をソニーにセッション録音する企画に発展したのはもう1つ、 別のストーリーだ。2023年の第4回はコンサートマスターを水谷晃、チェンバロを指揮者の阪哲朗が務めたヴィヴァルディ、ピアソラの「2つの“四季”」と決まっていたため、シュトロッセとのデュオはナントでの最後の共演の5年後、2025年の第5回リサイタルまで持ち越された。

 中でもルクーには今回、初めて挑む。「パスキエ先生に〈(辻に)合っているから弾きなさい〉と言われ続けた作品でもあり、せっかくならシュトロッセさんと演奏したいと願ってきました。早逝した作曲家の迸る若さの情熱に耳を奪われがちなソナタですが、私は普通あり得ない8分の7拍子の第2楽章が大好きです。年輪を重ねた夫婦がゆっくりと歩むような音楽。まだ若い私がどう表現するか、ご期待ください」

 


LIVE INFORMATION
辻彩奈 ヴァイオリン・リサイタル

2025年3月18日(火)東京・紀尾井ホール
開場/開演:18:30/19:00
共演:エマニュエル・シュトロッセ(ピアノ)

■曲目
ルクー:ヴァイオリン・ソナタ ト長調 ほか

https://www.kajimotomusic.com/concerts/ayana-tsuji-violin-recital2025/