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〈攻め〉と〈ポピュラリティ〉を両立する強み
2024年の元日にデビューしてからわずか1年で「NHK紅白歌合戦」に出場するなど、快進撃を続けているNumber_iの平野紫耀、神宮寺勇太、岸優太。間違いなく、2024年の日本で最も輝いていたアーティストの一組だろう。
“GOAT”での衝撃的なデビューから攻めの姿勢を貫きつつも、J-POPの中心にすぐさま辿り着けた理由は何なのだろう? もちろん3人にはNumber_i以前のキャリアがあり、知名度は高かった。スター性も元から備えていた。そのことを否定せずに過去の経験を活かし、延長線上での発展形としてNumber_iがある。とはいえNumber_iは、ほかのアーティストとは異なる個性の輝きを最初から放っていた。それは、やはり音楽性が攻めているからだろう。
攻めすぎなのにiLYsというファンがついていっている、そしてその輪が拡大しているのはなぜかとさらに問えば、〈攻めすぎだから〉ということが答えなのだろう。数多いるアーティストの中で埋もれない個性、一聴してそれとわかる固有性が、Number_iの最大の強みだ。〈このアーティストはほかと違う〉というのは常套句だが、それを誰が聴いてもわかる形で提示し、新しい音楽に敏感なリスナーをどんどん惹きつけている。その姿勢が、Number_iの〈攻め〉と〈ポピュラリティ〉の両立の肝なのではないだろうか。
美しさと攻めた実験性が同居した“GOD_i”
そんなNumber_iの2025年最初の作品として、さらに攻めすぎな新曲が届けられた。“GOD_i”という不遜なタイトルが冠された、岸優太プロデュースの曲だ。
ORICON NEWSのインタビューによると、3人は「試行錯誤を重ねた自分自身を信じる強さ、大切さを伝えたい」「“GOAT”“BON”“INZM”とはまた違うかまし方をしている」「キラキラしてた自分たちだけではなく、苦悩や生々しい部分も表現している」といったことを“GOD_i”について語っている。
作詞はPecori(ODD Foot Works)とNumber_i、作編曲はMONJOE(DATS)、SHUN(FIVE NEW OLD)、Number_iという安定した布陣で、“GOAT”から続くチームにメンバー自身もがっつり携わったということなのだろう。
まずはイントロ。神宮寺の最大の魅力の一つである美声によるスムーズ&メロウな歌い出しで始まったかと思えば、うねるサブベースと荘厳なクワイア(生でレコーディングすることにこだわったという)、連打されるキックが殴り込んできて、暴力的で急速な場面転換に圧倒される。
この美しさと攻めた実験性の同居、その絶妙なバランス感覚というのは、Number_iの個性の一つだ。低音ボイスを強調した前半から〈Glowing Numbers〉とメロディアスに歌う後半に至る、サビについても同様である。美の基準や心地よさからギリギリ外れてしまいそうなゆがみ、ひずみ、裂け目を積極的に音楽に取り入れて、未知の領域に踏み出す、聴いたことがない音楽を生み出す、そんなことがNumber_iの創作のルールに思える。