仙人のような雰囲気のクリエイターは孤高にして寡作なイメージを纏っていることが多いものだが、BudaMunkに関してそれは当てはまらない。作り手本人のプロフィールなどはディスコグラフィーを通して知るしかない程度に謎めいてはいるものの、とにかく多作な人である。昨年だけでも金子巧(cro-magnon)×mimismoothとのトリオ作をはじめ、盟友ジョー・スタイルズにISSUGIそれぞれとのタッグ作、そしてソロでの『Boom Bap Theory』と4枚のアルバムを発表。その間にはKID FRESINOや5lack、Mr. PUG、仙人掌、Vito Foccacioといった面々へのトラック提供も手掛けてきた。そのように膨大な仕事を通じて、感覚的というか〈ノリでやってる〉というノリをビートに落とし込んでくるあたりが、説明しづらいものの、彼のトラックの最高にカッコイイところなのだ。
そんな前年の成果と(単純に数量を)比べれば緩やかではあるが、今年に入ってからもBudaの休日は少なそうだ。Sick Teamとしては年初に『Sick Team II』を発表し、Green Butterなども一堂に会した〈20140530 -Sick Team Release Party〉を開催。また、ジョー・スタイルズとのタッグ新作『Soul Quest』はLAの老舗デリシャス・ヴァイナルからの全米配信リリースも実現し、LAでの活動も本格的に再起動しはじめたばかり。この後にもトラック提供したDoubleDoubleのリリースが控えていたりするのだが、そんな賑わしいタイミングで届いたのが約1年ぶりとなるソロ名義でのアルバム『The Awakening』となる。
表題をそのまま和訳してDJ KRUSHの『覚醒』を連想する人もいそうだが、90年代のNYヒップホップにジャズやダブのスモーキーな意匠を掛け合わせた独創的な揺らぎの形、オリジナルに確立されたBuda流のブーンバップ・スタイルはもちろん不変だ。とはいえ前作『Boom Bap Theory』とは趣をやや異にし、神秘性を酩酊ではなく瞑想へと誘導するような機能性を深めているのが特徴的。“Zen Garden”や“Waterfall Meditation 2”などから顕著に広がってくるオリエンタル・ムードも、海外での展開を視野に入れたことで改めて自覚を強めた結果の産物なのだろうか。いずれにせよ、ここからさらに飛躍していきそうなBudaから目が離せないだろう。
▼関連作品
左から、BudaMunk×Takumi Kaneko×mimismoothの2013年作『First Jam Magic』(Jazzy Sport)、BudaMunk & Joe Stylesの2013年作『From LA To TOKYO』(King Tone)、ISSUGI & BudaMunkの2013年作『II BARRET』(DOGEAR)、BudaMunkの2013年作『Boom Bap Theory』(King Tone/Jazzy Sport)
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