G-DRAGONが2024年10月、実に7年ぶりとなるソロの新曲“POWER”を発表し、続けて11月にも“HOME SWEET HOME (feat. TAEYANG & DAESUNG)”をリリースした。後者のリリースの翌日には京セラドーム大阪で開催された〈2024 MAMA AWARDS〉に出演、BIGBANGのSOL(TAEYANG)とD-LITE(DAESUNG)がサプライズで登場し、BIGBANGの久々の再結集は大きな話題になった。

BTSの成功以来、K-POPの世界的全盛期と言える昨今。そんななか2010年代中盤から活躍した第3世代以降に大きな影響を与えたとされるのが、革命児G-DRAGONとBIGBANGである。では、彼らはK-POPの何をどう変えたのか? K-POP番長こと音楽ライター・まつもとたくおが解説する。 *Mikiki編集部


 

弾劾デモでG-DRAGON“Crooked”を歌う若者たち

ここ最近、韓国で大きな関心を集めているのは、ユン大統領の〈非常戒厳〉の宣布に関連する動きだ。隣国の民主主義に対する思いが伝わる関連トピックが連日報道されているが、なかには音楽ファンとして見逃してはいけない場面もあった。それは抗議集会でK-POPのヒットソングを歌う若者の姿である。

参加する彼ら・彼女らは、普段はコンサートで使用するペンライトを振りながら、よく知られた曲を合唱し、ユン大統領の弾劾と処罰を求める。そのような状況を見て特に驚いたのは、国会前で何万人もの人たちが歌うG-DRAGON“Crooked”だ。〈永遠なんて絶対ない/結局君は変わったんだ/理由なんてない/心がない〉という歌詞は、ユン大統領への非難にぴったりだったからこそ選ばれたのだと推測できるが、あれだけたくさんの市民たちがこの曲を歌えることは、海外に住む人にとって意外であり、驚きを隠せなかった。

 

ヒップホップやEDMの昇華とセルプロデュースの確立

ではG-DRAGONは何故これほどまでに支持されているのか――。その理由は人によって異なるかもしれないが、音楽に限れば、断言できるポイントがいくつかある。何よりもまず取り上げるべきは、アジアの風土になじむヒップホップをいち早く完成させた点だ。

G-DRAGONの個性が確立したのは、リーダーとして率いるボーイズグループ・BIGBANGの全盛期であることは誰も否定しないだろう。同グループ名義の大ヒット曲“LIES”(2007年)で、彼の才能が開花。アジア的な情緒が漂うメロディラインとラップが美しく絡み合うトラックは、新世代の音楽の到来を告げるとともに、あらゆる世代を受け入れる懐の深さも感じられた。この曲で提示したスタイルは以降のK-POPの定番となり、さらにソフィスティケートされた音が国境を越えて世界中で愛されている。

EDMの大衆化を推し進めた点も忘れてはいけない。2012年に発表した“FANTASTIC BABY”は、このジャンルの魅力を余すところなく伝えるもので、知性を感じさせるサウンドメイクを通じて単にフロアを揺らすだけの音ではないことも強調。ほぼ同時期に注目を浴びたPSYの“江南スタイル”とともに、〈EDMと言えばK-POP〉のイメージを国外に広めた功績は、もっと評価すべきだと思う。

セルプロデュースを得意とするK-POPアーティストは、今やBTSやStray Kids、(G)I-DLEなど、例をあげればきりがない状況になっている。実はそのきっかけを作ったのはG-DRAGONである。アイドルが自作曲、しかもマニアックなサウンドを作る。こうしたことに対して自称〈本物のヒップホップファン〉が嚙みつく場面が少なからずあったものの、2012年発表のソロ作“One Of A Kind”では、〈俺は違うから それが俺だから〉と堂々と反論。このように自分への攻撃に毅然と対峙する姿も、後進に多大な影響を与えたのは言うまでもない。