©Sami Drasin

文字どおり珠玉の〈宝石たち〉が散りばめられた最新ベスト・アルバム『ジェムズ』。

 アンドレア・ボチェッリの代役に急遽抜擢されてセリーヌ・ディオンとのデュエットを成功させ、〈カリスマ〉デイヴィッド・フォスターに見出されたゴールデン・ボーイ〈ジョシュ〉。これまでのキャリアを集大成した本盤の内容をチェック。

JOSH GROBAN 『Gems』 Warner/ワーナー(2025)

 先ずは2001年11月にリリース(※本国、以下同じ)された記念すべき1stアルバム『ジョシュ・グローバン』から3曲。[02]“アラ・ルチェ・デル・ソレ”は“太陽の光の中で僕は君を探し続ける”と歌う全てイタリア詞の曲。[09]“ユーアー・スティル・ユー”と[05]“トゥ・ホエア・ユー・アー”は共にTVドラマ「Ally McBeal(アリー my Love)」関連で、[09]はシーズン4最終話でジョシュ演じる内気な高校生マルコムがプロムのステージで披露した曲。[05]は〈同時多発テロ事件〉の追悼的エピソードであるシーズン5第7話にて、(妻を殺害されて)神の存在を疑う牧師のために息子のマルコムが教会の礼拝で歌った曲で、こちらも視聴者の大反響を呼び、ジョシュの人気を決定付けた。

 初の全米No.1アルバムに輝いた2nd『クローサー』(2003年3月)からは、[03]“ユー・レイズ・ミー・アップ”、[13]“ホエン・ユー・セイ・ユー・ラヴ・ミー”、[17]“ペル・テ/君のために”の3曲。特に心を振るわせる[03]は、今や100組以上にカヴァーされている〈シークレット・ガーデン〉作の佳曲だが、ジョシュはいち早くこの曲に注目してとりあげていた。初めてプロデューサーとして名を連ねた『アウェイク』3rd(2006年11月)からは3曲。シングル第1弾となった[04]“ドント・ギヴ・アップ~愛されている君へ”から自身も一歩踏み出す勇気を得たジョシュは、[06]“アウェイク”と[12]“フェブラリー・ソング”ではソングライターとしても本格的に参加している。

 『ノエル~クリスマス・コレクション』(2007年)、『イルミネーション』(2010年)、『オール・ザット・エコーズ』(2013年)の3枚を経て、デビュー前はミュージカル俳優を目指していたというジョシュが、原点回帰して名作の劇中歌カヴァーばかりを集めた7th『ステージズ』(2015年4月)からも3曲。アルバムのオープナーだった[08]“夢のチョコレート工場”は1971年のミュージカル映画版のために書かれた楽曲で、ティム・バートン映画版(2005年)では使用されなかったが、映画「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」(2023年)でリバイバルを果たした。[14]“虹の彼方に”は元祖「オズの魔法使」(1939年)からのあまりに有名なナンバー。そして「オペラ座の怪人」からの[15]“オール・アイ・アスク・オブ・ユー”では「アメリカン・アイドル」出身で米国の国民的女性シンガーとなったケリー・クラークソンとの豪華デュエットも話題を呼んだ。また2017年4月公開の実写映画版「美女と野獣」のサントラ盤から[10]“ひそかな夢”が収録されているのも嬉しい。

 8th『ブリッジズ』(2018年9月)からは2曲で、1stシングルだった[07]“グランテッド”はギタリストのトビー・ガッドらを交えた共作曲。タイトルに因んでか、サイモン&ガーファンクルが1970年度のグラミー賞で最優秀レコード賞と最優秀楽曲賞を獲得した[16]“明日に架ける橋”のドラマティックなカヴァーが秀逸。そしてコロナ禍を乗り越えて発表された9th『ハーモニー』(2020年11月)から、ミュージカル「ラ・マンチャの男」の[18]“見果てぬ夢”が壮大な男の浪漫を歌い上げて、本盤は締め括られる。

 もちろんお待ちかねの新曲も2つ。先行シングル曲の[01]“ビー・オーライト”もかなり陽気でポジティヴな楽曲だったが、[11]“オープン・ハンズ”も人生の応援歌的な雰囲気をたたえているのが何ともジョシュらしい。