We Love David
[ 特集 ]デヴィッド・フォスターの世界
この男の足取りに触れてみることは、ポップ音楽史を知ることでもある。もはや説明不要のヒットマン……なれど、必要ならばここで説明しよう!
21世紀のデヴィッドは……
143を動かすなかで徐々に現場での采配が少なくなっていったデヴィッド・フォスターは、2000年代に入るとシングル・ヒットを狙うサウンド・プロデューサーではなく、より越境しながらアルバム・トータルでのコーディネート的な背広組の仕事をメインとしていく。マイケル・ブーブレやジョシュ・グローバンを見い出し、アンドレア・ボチェッリとの仕事はその最たるものだろう。それでもミュージシャンとしての意欲を失うことはなく、並行して自身の冠ツアーを始めたのもこの時期のことだ。2010年に〈Songwriter's Hall Of Fame〉入り、2011年にはスーパーモデルのヨランダ・ハディッドと結婚(4度目!)と公私のイヴェントを経て、2012年にはヴァーヴのチェアマンに就任。責任ある立場で動きつつも趣味性の高い(?)作品をマイペースに送り出してくる彼は、もちろん現役である。
デヴィッドが見い出したなかでは、コアーズと並ぶ最大の原石はこのマイケル・ブーブレということになるでしょう。フンベルト・ガティカと共同で手掛けたこのメジャー・デビュー作では、ポップ/ロック/ソウルの名曲をポピュラー調に披露するメソッドを確立。デヴィッドの元を離れた現在も活動は絶好調です。
いろいろあったタイミングでエリック・ベネイに手を差し伸べたデヴィッド。ファンにも驚きを与えた合体でしたが、フンベルト・ガティカを伴ったアダルト・コンテンポラリーな手捌きはもともとAORなどにも親和性のあるエリックの資質ともマッチ。極めて品の良い上質なヴォーカル作に仕上がっております。
クラシカルにしてハートウォーミングな歌声が日本でも愛され、全米1位に輝いた『Closer』でクロスオーヴァー歌手としては破格の成功を収めたジョシュ・グローバン。その発掘者でもあるデヴィッドはこのサード・アルバムも采配し、上品なアレンジと共に深みと安定感をじっくり伝えてくれます。
オプラ・ウィンフリーから紹介され、世界デビューに先駆けて〈David Foster & Friends〉で腕を磨いていたフィリピンのスター。デヴィッドも直截プロデュースに関与した今作のヒットで、全米アルバム・チャートのTOP10に入った初のアジア人ということに。「Asia's Got Talent」ではデヴィッドと再会したばかり!
「アメリカン・アイドル」出身の熊男をヴァーヴに招いたデヴィッドは、エリック・ベネイにも制作を任せつつ、自身もアレンジやプロデュースで積極的に関与しています。規定演技もイケる資質はいかにも御大好み……ではありつつ、デヴィッドのペンによるスロウ“Meant To Be”が非常に良いのは嬉しい驚きで。
カナダの大物同士によるコラボがガッチリ実現。過去にノーザン・ライツやバーブラとのデュエットにおける手合わせはありましたが、ここではデヴィッドの意向を汲んだチョイスにより、アマチュア時代に親しんでいた曲のカヴァーを披露しています。軽快なピアノなどデヴィッドの演奏家としての助力にも注目を!