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ポール・モチアンに影響を受けた北沢大樹、アンダーシュ・ヤーミンを尊敬する小美濃悠太

――このアルバムでは、マレットを用いた北沢さんの演奏も非常に印象的です。もちろんスティックのプレイも聴けますが、ブラシやマレットが本当に効果的に使われていると感じました。

北沢「マレットやブラシを使って演奏する機会はスティックを使うよりも多くはないと思うんですが、ドラマーという業種である以上、例えば瑶子が譜面を渡してきて、ボブ・ミンツァーみたいに〈こういうふうにドラムを叩いてください〉というパターンが書いてある場合ならその通りにやりますけれど、そうじゃないときが99.9%ぐらいです。言ってしまえば、僕にやってほしいことは楽譜上に何も書いてないんですよ。〈イマジネーションを使ってどうにかしてください〉みたいなことが多いんです(笑)。

僕が海外で習っていた頃は、ドラムの機能の中には〈誰かのためにカーペットを敷いてあげること〉とは別に〈下で支えるのではなくて、他のプレイヤーと同じ立場で並行してドラムを演奏していくアプローチもある〉とよく言われました。海外ではマレット、ブラシ、素手などを活用して、ドラムセットにすらとらわれずに演奏するドラマーもいます」

――海外にいらっしゃった頃、特に影響を受けた奏者は?

北沢「ポール・モチアンですね。あの人の変遷は本当にすごいと思います。空飛ぶカーペットみたいなイメージです」

小美濃「確かにそうだよね」

北沢「ブラシを勉強したいと思ったときにビル・エヴァンスとモチアンの共演作を聴いて、すごいことをやってるなと思いましたが、70年代にスティックを握ってキース・ジャレットとやり始めたときにはもう〈浮いてる〉。つまり、下で支える人ではない。そこからバリー・アルトシュルなども聴くようになりました」

――小美濃さんもピチカート(指弾き)はもちろん、雄弁なアルコ(弓弾き)も聴かせてくれます。どのあたりからジャズに入門したのでしょうか?

小美濃「僕は中学生の頃にT-SQUAREなどのフュージョンから入りました。当時はテクニカルなものばかりを聴いていて〈とにかく音数が多ければ最高〉という感じでしたね。その流れでめっちゃ音数が多いジョン・コルトレーンに行って、ファラオ・サンダースや渋さ知らズなども聴きました。

それと並行して地元の図書館でCDを片っ端から借りて、すごく好きになったのはトミー・フラナガンの『Overseas』とキース・ジャレットの『Whisper Not』。そこからキースと共演しているベーシストのゲイリー・ピーコックとかチャーリー・ヘイデンなどにも関心を持つようになって、キースのヨーロピアン・カルテットを聴いてからヨーロッパのベーシストに注目するようになりました。ヨーロッパのベーシストはみんな弓もうまいですし。

自分の中で最高峰なのはアンダーシュ・ヤーミン(アンデルス・ヨルミン)ですね。弓でも特殊奏法やオーバートーンを使ったり、そのあたりも含めて自分の中に刻み込まれています」

 

ホーレンベック、エリントン、モンク……鈴木瑶子の原点

――鈴木さんのジャズルーツについても教えていただけますか。

鈴木「最初にジャズピアノを始めたときはオスカー・ピーターソンやレッド・ガーランドなどが好きでした。同時に、ビッグバンドにも関心があって、最初にビッグバンドで好きになったのは小曽根真さんのNo Name Horsesです。それからジム・マクニーリーの音楽も好きになって、そこを起点に見よう見真似でビッグバンドの譜面を書くようになりました。

その後バークリー音楽大学に行ったんですが、そこで出会ったのがボブ・ブルックマイヤーを熱烈に敬愛する先生です。1セメスターの間、いかにブルックマイヤーが素晴らしいかという話だけをし続けるような方で(笑)。その授業を受けたあたりから近代のビッグバンドに興味を持って、ジョン・ホーレンベックのライティング(書法)にも惹かれました」

――クローディア・クインテットのリーダーでもあるジョンは、ブルックマイヤーに学んだ大変な才人ドラマーですね。

鈴木「参加していたバークリーのビッグバンドで彼の曲を彼も入って演奏したことがあるのですが、譜面で自分のパートも見ても、それを音楽としてどう捉えたらいいのかわからないほど衝撃的なアプローチなんです。ジョンが来る前に私達だけでリハーサルをしていても〈何が何だか〉という感じなのに、彼が来て私達のバンドと一緒に演奏した瞬間、〈この音はこういう意味だったのか〉と全部が腑に落ちていく。メンバーの意志が交錯することによって音楽全体を作っていく凄さ、そしてそれをドラムで促していることに大きな衝撃を受けて、そういうプレイをピアノでもしたいと思うようになりました。

それと並行して、デューク・エリントンのめちゃくちゃコアな組曲を研究する授業もあって……」

――“The Afro-Eurasian Eclipse”や“ユーウィス組曲”など、晩年のエリントンの組曲は秘境ですね。クラリネットの響きなんかは、5次元・6次元ぐらいから降りてくるかのようです。

鈴木「エリントンのアプローチは、調性がどんどん混ざっていくんです。全然違うキーのトライアドがバーッと鳴ったときに、すごく分厚いハーモニーになる。また、エリントンを研究したときは、宛て書きというものの大切さをめちゃくちゃ感じました。例えばハリー・カーネイのバリトンサックスが上の音域にいるんですよ。サックスセクションのトップに立っている感じで。また、クラリネットをトップラインの5度上に置くと倍音が強調されてオルガン的なサウンドになるとか、発見がありました。

あとは、セロニアス・モンクについて〈何を考えてこの人はこんな曲を書いたんだろう?〉みたいな研究もしましたね。なので、どちらかというとライティングの方から影響を受けて、それをピアノの方にも生かせるようになってきた感じです。(北沢と小美濃の)2人と出会ってから、ピアニストとしてのアプローチをもっと考えるようになりました」