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自分にとってのビートルズを見つけたい

──実はhenrytennisには、ポストロックの印象はそれほどなかったんです。歌のない歌ものというか、ポップな感覚で活動しているんだろうなと思っていました。今回、MellMellを聴いて感じたのも、たとえばソフトロックやパートリッジ・ファミリーのようなコーラス、ハーモニー重視の60~70年代のポップスだったんです。

オクムラ「おっしゃる通りです。自分が最初に影響を受けたのってビートルズなんですよ。小学校の頃、“Hey Jude”に感銘を受けて、そこから曲を作るようになって……気づいたらビートルズ狂になって、まずいと思ったんです。いろんな音楽を聴いているのに、結局ビートルズでいいのかな?って。henrytennisはそういうところから始めたバンドなんです。

ただ、今回MellMellで歌ものをやるにあたって、新たに自分にとってのビートルズを見つけたいと思って、ビートルズのコーラスを楽器に置き換えて曲を作ったことはあったんです。4人のコーラスだけ抽出してコードを作っていったり、そこに自分が培ってきたメロディをつける感覚で。そうするとうまい具合に曲ができるようになって、楽しくなってきて」

──henrytennisがひと段落したというわけではなく。

オクムラ「そうですね。歌ものをやりたいっていうポジティブな面が大きいです。henrytennis用に作った曲が、このまま歌ものにした方がいいんじゃないかってなっていった感じです。作曲家として自信をもって高いクオリティを出せるのは何かって考えたとき、自然とこの形になったというか」

 

盃唐浪漫でも活躍する夢千代の高いボーカルスキル

──夢千代さんとはその時点で出会っていたんですか。

オクムラ「実は別の女性ボーカルがいて、短期間で抜けてしまったんですけど、そのあとに夢千代さんと会ったんです。

そもそも僕はイッツ・ア・ビューティフル・デイのような男女混合ボーカルのグループに憧れていたので、女性ボーカリストでいい人がいないかと思っていたんですよ」

夢千代「私は音楽スタジオで働いてまして。そこにhenrytennisが毎週のように入っていて、顔見知りになった流れで誘っていただきました。henrytennisの曲は好みだったんですが、インストバンドなんだ……と思っていたので意外でしたね。

そしたら〈歌ものバンドを始めた〉と教えてもらい、オクムラさんの声や歌詞を聴きたいと思っていたので、一緒にやれることになったのは嬉しかったです。聴かせてもらったMellMellの曲がいいなと思ったので」

オクムラ「バンドを組む仲間として大事だと思っているのが、技術より気が合うこと、楽しくやれる人と一緒にやることです。

で、夢千代さんと話すうち、この人とは楽しく話せると思って〈楽器やってるんですか?〉って聞いてみたら、ボーカルだっていうから、これは一緒にやりたいなと。人間性ありきで始まった感じですね」

夢千代「私はシンガーソングライターなんです。小学校のとき、父がクラシックギターの先生と友達で、〈娘に教えてやってくれ〉って感じでギターを習い始めて、そのうち弾き語りをするようになって。

で、高校の時に上京して、バンドに興味を持つようになりました。最初は一緒に組む人がいなかったんですけど、〈一緒にやろう〉って言ってくれる人が集まってきて、バンドを始めたんです」

──どういう音楽を聴いてこられたのですか。

夢千代「小さい頃はミュージカルが好きでした。劇団四季に入りたかったし、舞台で演技をしながら歌うことに憧れていたんです。ただ、ダンスが苦手で……」

──では、ボイトレは受けてらした。

夢千代「はい、でも周りはもっとすごくて、宝塚に行った人もいました。私は高校を中退して、その後東京に出てきて、バンドを始めた感じです」

──ちなみに、今、なんというバンドをやっているのですか。

夢千代「盃唐浪漫(ハイカラロマン)っていいます。そこでは曲を作って歌っています。演技を入れたり朗読入れたり、ミュージカルの要素を入れられたらと思っているんです。

オクムラさんの作るメロディって、ミュージカルの歌い方で歌えるんですよね。ロングトーンが多くて、演技がしやすいっていうか、私の好きな歌い方で歌えるんですよ。なので、ミュージカル好きな感覚が生かされてるんじゃないかなと思います」

オクムラ「僕自身、わざと白玉(ロングトーン)を使っているところがあるんです。メロディの音をどんどん上げていって、高揚させたいところで、最後は白玉で伸ばす……みたいな。と同時に、自分の作るメロディって音符が上下するところが多いんです。夢千代さんは、それをサッと歌えちゃう。それで、〈やっぱこの人しかいない〉と思ったんです」