インタビュー

毛玉が語る、ポップに突き抜けた新作『まちのあかり』

実験音楽から歌モノへ――彼らが歩みを止めない理由

(左から)黒澤勇人(ヴォーカル/ギター)、露木達也(ドラムス)、石黒健一(ベース)

いま現在のシーン(のようなもの)を見渡してみて、即興演奏/実験音楽を背景に持つ音楽家たちがそういったフィールドとは別の場所で活動していることは興味深い。例えば、hikaru yamada and the librariansの山田光。あるいは、元・吉田ヨウヘイgroupで最近THE RATELというバンドを始動させた池田若菜。そして毛玉の中心人物である黒澤勇人も、同様に即興演奏の出自を持っている。

ポップな歌モノのなかにストレンジな実験性をナイフのように忍び込ませた毛玉の音楽は、実にユニークだ。そのサウンドは、ステレオラブやトータス、ガスター・デル・ソルなど、ポップ・ミュージックにおける実験性をひとつ上の段階に押し上げた先達たちと共有しているものも少なくないだろう。

そんな毛玉が、3作目となるアルバム『まちのあかり』を発表する。これまで通りHEADZ/WEATHERからのリリースで、これまで以上にポップに突き抜けた快作だ。毛玉の音楽の源泉はどこにあるのか? 彼らはなぜその歩みを止めないのか? 黒澤と露木達也、石黒健一の3人に訊いた。

毛玉 まちのあかり HEADZ(2019)

即興演奏/実験音楽から歌モノバンドへ

――黒澤さんは、2012年に毛玉を結成される以前はギターの即興演奏をしていらっしゃったんですよね? ジム・オルークの音楽をきっかけにその道に進まれたとか。

黒澤勇人(ヴォーカル/ギター)「大学の先輩から大友良英さんのニュー・ジャズ・オーケストラがジム・オルークの“Eureka”のカヴァーをしていると聞いたので、そのライヴを観に行ったことがきっかけですね」

露木達也(ドラムス)「即興は毛玉を始める1、2年前までやってたよね」

黒澤「そうですね。でも、hikaru yamada and the librariansの山田(光)くんとやった即興演奏のアルバムが来年(2019年)出せそうなので、細々と続けてはいます」

『まちのあかり』収録曲“雨降りの午後に珈琲を”

――ファースト・アルバムの『新しい生活』(2014年)に岡田拓郎くんが寄せたコメントには、〈工具や謎のマシン(!)を使った恐ろしくシビアなギターでの即興演奏〉と書かれていますね。

黒澤「それは山田くんと出会った頃ですかね。当時、僕は森は生きているのファンだったんですけど、その岡田くんがFtarriにも顔を出しているらしいぞと聞いて。イヴェントで一緒に演奏したりもしました」

※即興演奏や実験音楽を扱う東京・水道橋のCDショップ。イヴェント・スペースとしてライヴも開催している

――山田さんや池田さんなど、即興をやっているミュージシャンがいま、東京のシーンにたくさんいるというのはおもしろいと思っています。

露木「10年前くらいだとmmmさんとか、即興をやりながら歌う人もいたんですよね。七針周辺とかに」

※東京・八丁堀のイヴェント・スペースおよびスタジオ

黒澤「自分は少し年齢が上なので、彼らとはまた即興の感じが違ったりするんです。自分たちは杉本拓さんとか、宇波拓さんとか、音響派からの影響もあって。海外だとラドゥ・マルファッティとか、わりとストイックな〈1分間に音が鳴らない系〉の音楽というか(笑)。あと、〈半分作曲〉みたいなものですとか」

露木「ストップウォッチを使うのとかね」

――えっ、どういうことですか?

露木「ストップウォッチで作曲するんです(笑)。譜面上に〈何秒で音を出す〉とか」

黒澤「快楽的な要素が削ぎ落とされている音楽というか」

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