歌謡曲の要素とビーチ・ボーイズのコーラス
──夢千代さんも60年代の音楽に愛着があるのですか。
夢千代「私は歌謡曲ですね。父に聴かされていました。坂本九とか山口百恵とかがすごく好きです。その点、オクムラさんの曲は同じ感じの懐かしいメロが魅力だと思います」
オクムラ「僕は、歌謡曲は後追いなんです。一通り海外の音楽を聴いたあとに日本の歌謡曲を聴くようになったので。
だから、歌謡曲のクセがわかった上で、そこをうまく取り入れて一歩先に行く感覚が、自分が作曲すると出てきちゃうんです。洋楽に影響を受けた感覚を先に進める上で、歌謡曲の要素は重要でした」
夢千代「“ランドスケープ”とか、すごく歌謡曲っぽいと思います」
オクムラ「あれは思いっきり狙いました。サビから始まる曲なんですけど、モロに英語で歌っているじゃないですか。実際、洋楽でありそうなコード進行なんです。つまり、サビで洋楽っぽさを使って、Aメロで歌謡曲の進行にする組み合わせ。その違いを楽しんでほしい気持ちがありました。
実は日本の歌謡曲やポップスに対して、〈ここまでは行っちゃいけない〉って思っている部分があるんです。キャラメル・ママとかがそうですけど、あそこまでいくと自分の中では洋楽なんですよね(笑)。でも70年代初頭の井上陽水さんとかを聴くと、〈なるほどな、日本のポップスってこういうのだな〉って思うんです。その感覚と洋楽感の折衷が今回のアルバムに出ている気がします」
夢千代「ほぼ全曲どこかに歌謡曲っぽさが入っている感じがします。特にコードに歌謡曲の影響があると思って。メロディやサウンドには60年代の洋楽……特にハーモニーにはビーチ・ボーイズの要素を感じます。ライブでオクムラさんとハモっていて、〈これはビーチ・ボーイズ〉だなって思ったりしますね」
オクムラ「見透かされてるなあ(笑)。ビーチ・ボーイズのハーモニーってファーストアルバムの頃から完成しているじゃないですか。あれは会得したいと思ってて。
henrytennisでは、楽器パートでハーモニーを作ることでウォールオブサウンドを作り上げられたんです。でも、MellMellでは譜面を書かなくてもメンバーが形にしてくれるのでありがたい。逆にメンバーから言われて気づくことも多いから楽しいんです。みんなで同じ方向を向いているというより、目的は一緒だけど、出自が違うので楽しめているんですね」
──具体的には?
オクムラ「それこそあちこちにあって、驚きながら一日が終わる感じですね(笑)。意図してなかったアレンジを出してくれて、みんなセンスがいいので、予想してなかったけどこれでいいな、みたいなのは結構あります。
“尾の先へ”でホーンアレンジをしてくれたのはカメダくんなんです。最初はウィーザーみたいな感じでやろうと思ったんですけど(笑)、ホーンアレンジしてくれたのを聴いて、面白いなと思って。僕からすれば、バッキンガムスみたいな感じで、そうなるとウィーザーをやってる場合じゃなくなるんです(笑)。歪みのエフェクターでギターを歪ませることをやめて、音の抜き差しを頻繁にやって調整して完成させていく作業になるんですよね」
シカゴの神がかったホーンをアンサンブルで超える
──“尾の先へ”は初期シカゴやブラッド・スウェット&ティアーズを思い出しました。ブラスロックが取り入れられてるのかなと。
オクムラ「僕、シカゴのファーストとセカンドが神様だと思うぐらい好きなんです。あの2枚のホーンアレンジってすごいですよね。
ホーンアレンジをしたいと思ったとき、当然ホーンを使用しないといけないわけですけど、僕は他の楽器があのハーモニーをやればシカゴのセカンドを超えられるかもしれない!って思っちゃうタイプなんです(笑)。
そういうことをいつも考えているから、メンバーとの会話の中で、さりげなく〈この曲のホーン、最高なんだよな〉とかって話しておくんです。すると半年くらいしてカメダくんがそういうアレンジをしてくれるんですよね(笑)」
──匂わせる!
オクムラ「匂わせに気づいてくれるんでしょうね(笑)。今は〈この音源良かったよ!〉と伝えておくと、しばらくしてそれに返答するようにアレンジしてくれたりする。そういうのがとても楽しいんです。このバンドを組んだときの目的の一つでもあったんで、今は楽しいし満足しています」
夢千代「リハに入ったときにそういうことをボソッと呟きますよね(笑)」
オクムラ「(苦笑)」
夢千代「〈このギターの音は譲れないんだよな〉とか。オクムラさんはこうしたいんだなって感じますね(笑)。それを受けて、みんな準備したり自分で考えたり……」
オクムラ「自分が考えていたものと違うアレンジや演奏になっても、逆に面白かったりするんです。そういう意味で、出自が違う仲間とバンドをやるって面白いなって気づきました」