©YOSUKE SUZUKI

新たなる挑戦としてゲーム音楽集をリリース!

 村治佳織が7年振りの新譜を発売。ゲーム音楽を何曲か取り上げてみては?というレコード会社からの提案がきっかけだった。

 「前作のアルバム『シネマ』で丸々1枚、映画音楽を取り上げてみて、〈浸る〉っていいなって思ったんです。自分のなかの残り方も違いますし、ひとつひとつのアルバムで新しい世界を開拓できる実感を得られたので」

 とはいえ、村治自身は熱心なゲーマーではない。そこで弟・村治奏一をはじめ、ゲーム好きの友達や仕事仲間に声をかけた。

 「皆さん、熱量こもったお返事をくれて、YouTubeで演奏・実況された動画のリンクをつけてくださいました。ひとつひとつ丁寧に聴いて、15曲に絞っていく作業がとても楽しかったです。自分なりにも調べていくなかで、ゲーム音楽はゲームにとって酸素のようなものとおっしゃっている方がいて、そういう言葉がアルバム制作でも参考になりました。最近は映画もひとりで観ることが増えましたが、もともとは映画館で多くの人たちと一緒に楽しむものでしたよね。それに対してゲームは対戦型もありますけど、画面と自分が一対一で向かい合うものなので、よりダイレクトに心の深いところまで入ってくる音楽なのかなと私なりに考えるようになりました」

村治佳織 『エターナル・ファンタジー』 Decca/ユニバーサル(2025)

 ひとつひとつの楽曲の個性が活きるよう、どの曲を誰にアレンジしてもらうのかは村治自身が決めていったというが、その過程は柔軟で実にユニークだ。

「テクニカルな効果が必要になると予感した曲はギタリストに、メロディの美しさを淡々と聴かせたい曲は必要な音だけを残してくれそうなアレンジャーにお願いしています。“プリンのうた”の原曲は30秒もないので、ジャズピアニスト大林武司さんに広げてもらって、それを小関佳宏さんにギターで弾きやすいように手を加えてもらいました」

 個性の違う5本のギターを使いわけているのも、聴きどころ。公演で普段使わない楽器も弾いていることにも注目したい。

 「“リアラのテーマ”と、奏一とCocomiさんと3人で弾いた“ワルツィング・イン・ザ・レイン”は、ある方から譲り受けて父がレッスンの時などに使っていた1930年代の楽器を選びました。遠くに音を飛ばすのは得意ではないけど、近くで優しい音を聴かせてくれるギターで、レコーディングだからこそ輝くギターがあるんだと固定概念が取り払われましたね」

 村治が真摯にむきあって辿り着いた新境地。ゲームのファン以外も必聴のアルバムだ!

 


LIVE INFORMATION
府中の森芸術劇場リニューアルオープン記念 府中の森クラシックコレクション
村治佳織&村治奏一 ギター・デュオコンサート

2025年11月15日(土)東京都・府中の森芸術劇場 ウィーンホール
開場/開演:13:00/14:00

村治佳織&村治奏一 ギターデュオ・コンサート
2025年11月30日(日)宮城県・名取市文化会館
開場/開演:13:30/14:00

https://www.officemuraji.com/schedule