2026年も幕開けとともに、ビルボードライブは一気に華やぎを帯びていく。2025年も偉大なアーティストたちが来日してくれたが、来年も見逃せないライブが目白押しだ。

今回はその中でもマーティン・マクアルーン、エディ・ジョブソン、オールマン・ベッツ・バンドの公演を紹介する。それぞれがキャリアの重要なタイミングを迎えており、ビルボードライブという親密な空間で、ぜひそれぞれの音楽世界を体感してもらいたい。


 

マーティン・マクアルーン

マーティン・マクアルーンが『Steve McQueen』を全曲演奏

来年2月に大阪と東京のビルボードライブに登場するのは、プリファブ・スプラウトの中心メンバーであるマーティン・マクアルーンだ。プリファブ・スプラウトは、マーティンの兄パディ・マクアルーンによる精細なアレンジと詩情に満ちたメロディで80年代の英国に独自の陰影を刻み、今なお多くのアーティストに影響を与え続けている存在だ。

現在マーティンは、プリファブ・スプラウトの2ndアルバム『Steve McQueen』(1985年)のリリース40周年を祝して、同作の全曲再現ツアーを開催中。今回の来日公演も同ツアーの一環で、単にアルバムを再現するだけでなく、成熟した声と演奏で作品の新たな側面を浮かび上がらせてくれるようなパフォーマンスに期待したい。

バンドの代表曲である“When Love Breaks Down”をはじめ、アルバム全体が持つ繊細な温度感がライブでどのように立ち上がるのか。すでに終了した公演のセットリストをチェックしたが、前半は『Steve McQueen』の再現セット、後半は“The King Of Rock ‘N’ Roll”“Life Of Surprises”など名曲群が並ぶ内容となっていた。同様のセットが来日時にも披露される可能性は高く、プリファブ・スプラウトの全キャリアを総括するようなステージになるだろう。

公演の副題には『Steve McQueen』のアメリカ版タイトル〈Two Wheels Good〉の表記も。長年のファンはもちろん、プリファブ・スプラウトを直接見たことがない世代にとっても歴史的なライブになるはずだ。

※編集部注 当時米国でのリリースに際して、アルバムタイトルが俳優のスティーヴ・マックイーンと同じだったため、バンド側が何かしら法的な問題が発生することを懸念して『Two Wheels Good』とタイトルを変えて発売した

 

エディ・ジョブソン

エディ・ジョブソンとともにU.K.を再訪

同じく2月には、プログレッシブロック史の節目をいくつも通過してきたエディ・ジョブソンが東京、横浜、大阪のビルボードライブに登場する。10代でロキシー・ミュージックにブライアン・イーノの後任として抜擢された早熟の天才は、キーボードとヴァイオリンを自在に操り、スーパーグループU.K.の共同創設者の1人としてプログレシーンで独自のキャリアを築いていった。

フランク・ザッパ、キング・クリムゾン、イエスといった名だたるアクトのツアーや作品に関与してきたエディは、ライブや作品の音像を押し広げる重要な存在として機能してきた。今回の来日公演は2017年に宣言したライブ活動からの引退を撤回し、本格的にステージへと復帰する貴重な場でもある。

公演名に〈U.K. Revisited〉とあるように、マーク・ボニーラ、マイク・ケネリー、マルコ・ミンネマンといった技巧派を率いてU.K.時代を再訪するようなセットが組まれるのではないだろうか。言うまでもなく“In The Dead Of Night”や“Presto Vivace And Reprise”などのアンセムは、ぜひ演奏してもらいたい。

パンクやニューウェイブの波に押し流され、そうしたシーンからプログレ自体が忌み嫌われる対象となってしまった70年代末に、変革と起死回生を図るために結成されたU.K.。彼らの音楽はジャズフュージョンの要素も含んでいるだけに、今こそ再評価されるべきである。今回のエディの来日公演は、そのきっかけの1つになるかもしれない。