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詩、SF小説、女性作家……イメージをかき立てる影響源

――2024年になると、アルバム作りや音については何も言わない方がいいだろうと思い始めて、本の話をするようになったんです。北園克衛の詩集を無理矢理貸したりして。その時にyagiさんから尾崎翠の名前が出てきた。

「尾崎翠はあくまでもイメージですね。言葉の面ではそんなに影響を受けていないかもしれない。昭和初期のモダニズム文学に対してはすごく新鮮な気持ちで向き合えて。ロマンチシズムを排除しているのに、それが出てしまっている美的感覚と、単なる恋愛感覚で終わらせようとしない、その矛盾みたいなのを感じて一気に好きになりました」

――SFも読むようになったよね。

「山尾悠子を読みました。日常からちょっと遠い日常みたいなのが好きだって気づきました」

――そのあたり、音作りについて〈こういうものを作りたい〉みたいなアイデアは出てきましたか?

「その時点では具体的にはないけど、前のカセットがノイズっぽかったから、クリアで綺麗なものを作りたいとは思っていました」

――その時期は、ギターインストがメインで歌が数曲あるんだろうな、と思い描いてましたね。少し心配したのは今年に入った頃から「2000年代のフリーク・フォークを聴いてます」って言い出して。

「全然覚えてない。でも、〈そんなジャンルがあるんだ〉みたいに思ったのは覚えてます。すごく好きなやつだって。これだったなって思いました」

――で、「それはやらないでくれ」って言ったんです。

「アコギでフリーな感じで弾くっていうこと?」

――影響を受けすぎると良くないってことです。そして実際の作業に取り掛かったのは今年になってからですよね。

「2月、3月頃でした」

――そのとき、初めて歌がメインになるんだって知りました。

「歌ものという意識はなかったですけど、普段聴いてるのが歌ものだったり、詞を先に作ることが多いからかな。詞を見てギターを弾きながら考えてました」

――3月くらいからデモが届き始めて、これはいいアルバムになると確信しました。というのは、ギターをジャーンと鳴らしたときの、あるいはサラッと触れたときの、そのままの感触的なところが、うまく形になったと思ったんです。その瞬間瞬間、そのままの音なんですね。声で歌を歌っているけど、ギターが言葉を歌っているわけです。その言葉にならない言葉を感覚的に発見したのは、この1年くらいに読んできた本からの影響なんだろうな、と思いました。そうやって新しく自分の体になった言葉が、鳴らしてみたギターと、yagiさんの心の中にあるものとうまくハマったというか。

「宅録は、チャランと弾くのが醍醐味じゃないですか。レコーディングスタジオに行くと気張ってしまうし。普段の音と言葉が録音されやすいのが宅録だと思っていて、結構それは意識しました。音源用に録音ボタンを押すけど、うまく弾かないようにしようと……。

それから、今年に入ってから女性の作家に目がいくようになって、共感するようにもなったんです。今までアーティストは音楽でも何でも男性の方が好きだった。音楽をやっていく上で、大きく言うと生きていく上で性別の違いに目が行くようになったというのもあります。音楽的な面でも仕事でも、考えることが増えて。そういうところで女性に、女性の創作に自然と、以前より共感するようになったのかもしれません。もっとも、性別が関係ないところを目指したいですが」

yagihiromi 『lemma』 MY BEST!(2025)