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『Prema』を経て誰もが知る〈Fujii Kaze〉へ

ヨーロッパツアーを終えた藤井は、そのまま北米ツアーに突入。また、このタイミングで『Prema』からの第2弾シングル“Love Like This”を先行リリースした。藤井が幼い頃から慣れ親しんでいた80年代のソウルやR&Bのエッセンスがふんだんに盛り込まれた“Love Like This”は、MVでも映し出される海のような、大いなる愛を感じられる傑作だ。

その後、藤井はビリー・アイリッシュの来日公演でオープニングアクトを務めたのち、9月5日、ついに3rdアルバム『Prema』をリリースした。本作について藤井は「EIGHT-JAM」での特集で「腹をくくるまでが大変だった。英語のアルバムに振り切るっていう決断にいたるまですごく時間がかかった」と語っている。この発言から察するに、制作当初は〈全編英語詞でいいのか?〉という気持ちが彼にあったということだろう。真意は定かではないが、同インタビューで藤井は今後の音楽制作について「わかりやすくしていきたい」とも語っており、英語という言語の縛りが何かしら聴き手の制約になってしまうのではないか、そんなことを懸念して悩んでいたのではないだろうか。

そうした葛藤を経て完成した『Prema』は、70年代から2000年代まで、各ディケイドのブラックミュージックの旨味を抽出したような作品となった。90年代ニュージャックスウィングを彷彿させる“I Need U Back”、ジャジーなピアノも秀逸なヒップホップビートの“Prema”、マイケル・ジャクソン“Thriller”の世界観とビリー・ジョエル“Uptown Girl”のハネるリズムをミックスしたような“Casket Girl”など、楽曲のコンセプトからサウンド、アレンジにいたるまで、そこかしこに藤井の愛するアーティストや作品のリファレンスが見て取れる。

そして2026年、藤井は『Prema』を引っ提げたワールドツアーを開催する。同ツアーの前には日本国内を巡るアリーナツアーのほか、インドでのロラパルーザやコーチェラといった海外の大型フェスへの出演も控えている。日本やアジアをホームとした〈藤井 風〉から、世界の誰もが知る〈Fujii Kaze〉へ。藤井の真の飛躍の瞬間はまもなくやってくるはずだ。