Page 3 / 3 1ページ目から読む

写真を撮ることは心洗われる、無邪気になれる瞬間

――“Walk with the Night”と“Astronaut”については先ほど、頭の中に思い浮かんできたイメージをもとにして書かれたとおっしゃっていましたが、その時のイメージをお聞かせいただけますか?

「“Walk with the Night”の元になったのは、月明かりと街路灯だけしかない暗がりの中をひとりで歩いているような光景。悲しいことや辛いことがあった日に、ひとりで家路に就いているようなイメージなんですが……でも、そういう時にも音楽が寄り添ってくれるという気持ちを表そうと思って書いた曲です。

“Astronaut”は……私は宇宙や宇宙飛行士の仕事のようなことはぜんぜん知らないんですけど、〈宇宙にひとりで行ったらどうなるか?〉みたいな空想をもとにして書いた曲。広大な宇宙で出会う星々に対する畏怖の念を抱くかもしれないし、自分のちっぽけさや無力感を感じるかもしれない。だけど、もしかしたら、宇宙の美しさに圧倒されるかもしれない。そんなふうに宇宙の中で感じるかもしれない気持ちを想像して書いた曲です」

――“Photograph”は、聴いていくうちに心が洗れていくような味わいの曲。Bメロに入ると、ブルージーな薫りも漂ってきて、楽しさも感じられます。

「そう言っていただけてとても嬉しいです。“Photograph”は、私の趣味である写真を題材にした曲。こどもの頃から、樹々や花、空などの写真を撮るのが好きで。大人になってからちゃんとしたカメラを買って、それで写真を撮るっていうのをよくやっているんですけど、それがまさしく、心が洗われる瞬間なんです。心から無邪気になれる楽しさが写真にはあって。晴れやかな気分になったり、ワクワクしたり……万華鏡のようにいろいろな感情が湧きあがってくるんです。そんなふうに心がさまざまに変わっていく感じを表現したくて、ハーモニーや曲調などの変化を加えながら作った曲です」

――スタンダード曲も演奏されていますが、“How Deep Is the Ocean”は、おふたりのインプロビゼーションからスタートした後、それが次第に溶け合いながら、徐々にテーマが浮かび上がってくる印象的なトラックになっています。

「“How Deep Is the Ocean”は、コレクティブインプロビゼーションの演奏をアルバムに入れようと思って挑戦した曲です。コレクティブインプロビゼーションというのは、今おっしゃっていただいたように、複数の演奏者が同時にインプロビゼーションを行ない、そこから音楽を作り上げていくスタイル。2020年にデュオをスタートした頃から取り組んでいます。

シンプルなコード進行の曲を題材にすることが多いかもしれませんが、“How Deep~”は少し複雑な曲。ですがデヴィッドのおかげもあり、プレイするたびに色合いの異なる演奏になるんですね。いくつかのテイクを録って比べてみたんですが、最も新鮮な1stテイクを収録しました」

 

聴いてきたアルトサックス奏者の演奏が反映された音色

――どのトラックからも、芯が太くて艶やかな江澤さんらしいサックスの音が聴こえてきます。どのようにしてその音色を獲得されたのですか?

「実は、独特の音色を身に付けようと意識したことはあまりなくて。自分が聴いてきたアルトサックス奏者たちの音が反映されているのかもしれません。一番最初に知ったアルト奏者がポール・デスモンド。それからもちろん、チャーリー・パーカーやジャッキー・マクリーン、ソニー・スティットもよく聴きました。その他にも、リー・コニッツやアート・ペッパーのようなウェストコーストの人たちやオーネット・コールマン、ジョニー・ホッジスも好きです。そういういろいろな人に近付きたいと思ってやっているうちに辿り着いた音のような気がします」

――最後に、アルバムを作りあげた今のお気持ちをお聞かせください。

「実は、今回のアルバム『I Still Don’t Know』は、私にとって初の自主制作アルバム。デヴィッドさんはもちろんなんですが、レコーディングエンジニアのニラジ・カジャンチさん、写真家の中村治さん、デザイナーの和田陽介さんという、私が大好きで信頼している方たちの力をお借りしながら、自分の作りたい音楽をそのまま形にすることができたことをものすごく幸せに感じています。

とはいえ、その音楽を皆さんに広く聴いていただくということについては、ここからがスタート。現在、そのためのリリースライブを計画中です。直近のデヴィッドとの演奏は、3月15日、下北沢のNo Room For Squaresというお店での、粟谷さん、ジーンさんを加えたクァルテットライブ。その後、デュオでのリリースライブを行なう予定ですので、是非いらしてください」

 


RELEASE INFORMATION

江澤茜, DAVID BRYANT 『I Still Don’t Know』 Tombo(2026)

リリース日:2026年2月18日(水)
品番:TMB-001
価格:3,300円(税込)

TRACKLIST
1. Midnight Mood (Music: Joe Zawinul)
2. I Still Don't Know (Music: Akane Ezawa)
3. Photograph (Music: Akane Ezawa)
4. Hayes Highway (Music: David Bryant)
5. A Beautiful Little Fool (Music: Akane Ezawa)
6. Walk with the Night (Music: Akane Ezawa)
7. Astronaut (Music: Akane Ezawa)
8. How Deep Is the Ocean (Music: Irving Berlin)
9. What’s New (Music: Bob Haggart)

■Members
江澤茜(アルトサックス)/Akane Ezawa (alto sax)
デヴィッド・ブライアント(ピアノ)/David Bryant (piano)

■Credits
Recorded on July 8, 2025
Recorded & Mixed by Neerej Khajanchi
2nd Engineer: Kenjiro Naka
Recorded & Mixed at NK SOUND TOKYO
Masterd by NK @ AQQA Mastering
Piano Turning: Tomohiro Kaji
Art Direction & Design: Yosuke Wada (soak)
Photograph: Osamu Nakamura
Produced by Akane Ezawa

 

LIVE INFORMATION
2026年3月15日(日)東京・下北沢 No Room For Squares
Open:13:30
Live:14:00-16:30
Close:17:00
出演:江澤茜 4tet 江澤茜(アルトサックス)、デヴィッド・ブライアント(ローズ)、粟谷巧(ベース)、ジーン・ジャクソン(ドラムス)
料金:3,500円

江澤茜 as, David Bryant pf デュオ
I Still Don’t Know 発売記念ツアー

2026年5月29日(金)兵庫・神戸 100BANホール
2026年5月30日(土)静岡 LIFE TIME
2026年5月31日(日)茨城・水戸 GIRL TALK
2026年6月6日(土)愛知・名古屋 THE WIZ
2026年6月7日(日)長野 バックドロップ
2026年6月12日(金)栃木・小山 Fellows
2026年6月13日(土)東京・新宿 PIT INN(昼の部)
詳細ページ:https://akaneezawa.com/category/schedule/

 


PROFILE: 江澤 茜
東京都出身。中学入学と同時に吹奏楽部に入部し、サックスを始める。在学中に聴いたグレン・ミラー・オーケストラの演奏に影響を受け、ジャズに興味を持つ。昭和音楽大学ジャズコースを優等賞を得て卒業。2019年には西オーストラリアで行われた〈Perth International Jazz Festivel〉にてリーダーバンドで参加し、好評を得る。2021年に1stアルバム『Thaw』をリリース、第10回ちぐさ賞優秀賞を受賞。サックスを近藤和彦、碓井雅史の各氏に師事。