俳優・水谷豊と人間・水谷豊の70年を語り尽くした自伝
俳優・水谷豊の初の著作「水谷豊 自伝」が文庫化され、2026年1月28日に発売された。
「水谷豊 自伝」は、親友・松田優作の前妻である作家の松田美智子によるロングインタビューのもと、水谷が古希の節目に、70年の人生を語り尽くした一冊だ。北海道から東京へ移り住んだ子ども時代から、13歳での俳優デビュー後の葛藤、数々の作品の裏側と、才能溢れる監督や俳優たちとの出会いと別れ、歌手としての活動、さらにプライベートでの離婚と再婚、幅広い交友録まで、水谷豊という俳優、そして人間そのものをあらゆる角度から掘り下げ、その実像を浮き彫りにしていく。

松田優作らとの日々、「相棒」「太陽にほえろ!」「傷だらけの天使」などの裏側
「太陽にほえろ!」「傷だらけの天使」などで共演し、水谷の人生に大きな影響を与えるとともに、その死が深い悲しみと喪失感をもたらしたという松田優作、岸田森を筆頭に、萩原健一、鶴田浩二、宇津井健、三國連太郎、岸田今日子、加藤治子、小林桂樹、朝丘雪路、津川雅彦、長門裕之、渡哲也など、水谷の口から次々に飛び出す、錚々たる俳優たちとのエピソードには静かな興奮を覚えずにいられない。
また、杉下右京という風変わりなキャラクターを演じる「相棒」シリーズが四半世紀にわたって支持され続ける理由と言える〈顰蹙を恐れない〉水谷の覚悟が明かされているほか、右京の相棒が毎回どのようにキャスティングされているのか、そして一部で取り沙汰された共演者との不仲説の真相までその雄弁な語り口からは、同作へ懸ける水谷のひときわ強い想いが伝わってくる。
そんな「相棒」のみならず、初主演作である「バンパイヤ」や、「太陽にほえろ!」「傷だらけの天使」「男たちの旅路」「熱中時代」「刑事貴族」など水谷が本書で振り返る作品は枚挙に暇がない。「青春の殺人者」「幸福」など高い評価を得た映画の現場での長谷川和彦、市川崑ら名監督とのエピソードもこの上なく興味深いものだ。いずれも水谷本人の大切な思い出であるとともに、日本のテレビドラマ史および映画史を補完する貴重な証言であるとも言えるだろう。
伊藤蘭や趣里との私生活も飾らず明かせる理由
水谷はまた、妻・伊藤蘭との馴れ初めから現在の暮らし、そして同じ道に進んだ娘・趣里への想いまで、私生活についてもざっくばらんに語っている。最初の結婚と離婚の経緯や親子関係にまつわるネガティブな報道の真相など、時には答えづらいと思われる話題も投げかけられるが、水谷は驚くほど率直だ。それは、水谷の謙虚で飾らない人柄のなせる業であると同時に、松田優作という稀有な人間を愛した者同士でもある松田美智子が本書の相棒だったことの賜物ではないかと思う。
旅番組「豊さんと憲武ちゃん! 旅する相棒」シリーズでは、ツーカーの仲である木梨憲武とともに毎回大はしゃぎしている水谷だが、その少年のような天真爛漫な笑顔の素は一体何なのか。本書は、半世紀にわたって〈人間〉を演じ続けてきた水谷ならではの生きる姿勢と世の中を見つめる眼差しを追いながら、その核心に迫った一冊だと言えるだろう。
BOOK INFORMATION

発売日:2026年1月28日(水)
SKU:9784101065816
価格:781円(税込)
文庫/384ページ
どんなに嫌なことでも、見方を変えれば楽しいことになる。水谷豊はそうやって生きてきた。13歳でデビューし「傷だらけの天使」「熱中時代」「青春の殺人者」等に出演。確かな地位を築くも〈芸能は自分が進む道じゃない〉と自問自答し続けてきた。実人生も起伏に富む。離婚の痛み、伊藤蘭との再婚、親友松田優作との永遠の別れや愛娘趣里の存在――。〈顰蹙を恐れない〉人生を語り尽くす初の自伝。
PROFILE: 水谷 豊
1952年(昭和27年)、北海道生まれ。12歳で劇団ひまわりに入団。子役を経て「傷だらけの天使」「熱中時代」「刑事貴族」「相棒」など人気シリーズを牽引。また歌手としても“カリフォルニア・コネクション”などのヒットで知られる。ほかにテレビ、映画、舞台など出演多数。
PROFILE: 松田美智子
山口県生まれ、作家。同棲を経て、1975年(昭和50年)に松田優作と結婚。長女をもうけた後、1981年に離婚。著書に「飢餓俳優 菅原文太伝」、「越境者松田優作」、「水谷豊 自伝」(水谷豊と共著)、「女子高校生誘拐飼育事件」、「整形逃亡」などがある。