〈音と映像〉にいち早く取り組んだバンド
――思えば、TM初期の時代に監督とか脚本とかもクレジットされていましたよね。
「ああ、ラジオもやったね。『TM NETWORK物語』っていう東海ラジオ『SFロックステーション』の番組で僕が脚本を書いて。ウツと僕とマネージャーと、他のミュージシャンとか、今はB’zの松本(孝弘)とかが登場して。あれを見て、小室は僕に〈小説を書いて!〉って思ったんじゃないかな、今思えば。冒頭で局アナの人に情景描写とかのナレーションを入れてもらったり、そういうのをやってました。あれが本当に元祖かもしれない」
――あと、エピック・ソニーのビデオコンサート〈BEE〉で上映した「日本一のバンド男」とか。
「あ、それね(苦笑)。恥ずかしい。やったね。あれはエピック・ソニーの坂西伊作が〈木根ちゃん面白いから、なんかやろうよ!〉みたいなノリで発生して。懐かしいなあ」
――映像で表現するなど、今は音楽界隈もメディアミックスの時代になってきましたけど、TMは本当にその実験的な走りというか。
「それは、やっぱり小室さんがね、〈音と映像、音と映像〉って、ずーっと言い続けて。それで、TMはデビュー前にコンテストを受けたときに、レコード会社8社が全員手を挙げてくれたものだから選べたんですよ。エピック・ソニーはマイケル・ジャクソンをやっていたので、〈ミュージックビデオをやろうよ!〉みたいな流れから、〈音と映像〉っていうのをいち早くやってましたね、TMNETWORKは」
――それで言えば、今年(2025年)、TMはドキュメンタリー映画「TM NETWORK Carry on the Memories -3つの個性と一つの想い-」を上映しましたけど、それこそ、いつか「電気じかけの予言者たち」が原案となり映画化されてもおかしくないですもんね。
「映画ね……。最近、海外で流行ってますもんね。小室役は、誰がやるんだろ? そんなことがあったら、嬉しいかもしれないね」
TMの話し合いに〈青春ドラマ〉はない
――ちなみに、ツアーで口火を切った40周年イヤーに配信された無観客ライブ〈How Do You Crash It?〉では、初めて3人だけでステージに立つ選択をされました。その後、シリーズ化された〈FANKS intelligence Days〉ツアーも基本的にはステージに3人だけでした。その決断は本のなかでは事後報告的に「決まった」の一言くらいしか書かれていませんでしたが、「3人だけでやろう!」と会話された瞬間って、どんな感じだったんですか?
「これねえ、僕らは大体そうなんですよね。〈よし、やろうか!〉と決め込んでいく感じではなくって、気がついたら決まっているんですよ。……なんでしょう、この感じはね。1994年に終了するときも、〈みんなで一晩中話し合った結果、僕たちはこう決めました!〉なんていうことでは全然ないんです」
――それが、TMらしさですもんね。
「今回も、コンサートをやるとしたら、僕ら3人だけではないじゃないですか? やっぱりウツの事務所エム・トレスとか、小室の会社、僕は個人ですけど、周りの人もいるわけで、そのなかからなんとなくの一言が出てきたりするんです。で、全部をその通りに書いたとしても、ダラダラしてるんですよ(苦笑)。決して、かっこいい瞬間みたいなものはなくって。〈あのとき、そういえばみんなで海に行ったよね。そのとき、夕日を見ながら〈もう1回僕たちやらない?〉みたいに考えてたんだよ!〉みたいな、青春ドラマ的なことは一切なくって(苦笑)。本当にね、書けない、書かないんじゃなくて、思い当たらないというか、いつそうしたかっていうのが、わからないんです(苦笑)。
コロナ禍だったから無観客ライブで配信をやるってなって、当然、〈バンドはどうする?〉って話になったと思うけど、小室が〈とりあえず、3人がいいかな〉って言ったんだろうね」
――たしかに、環境や状況にもよりますよね。
「でも、実は3人だけでステージに立ちたいというのは、小室のTMデビューからの一貫してブレない部分なんですよ。サポートメンバー含めてバンドスタイルでやりたいというのはウツだったり、僕だったり、周りのスタッフだったり、バンド好きの人たちの意志のほうが強かったんじゃないかな。ウツなんか、歌っていてギターが歩み寄ってきて背中合わせで……みたいなアクションが好きだから、そっち側の熱がちょっと強い時代があったもので。でも、小室は、ずっと〈3人〉なんですよ。デビューしたときも、僕は〈ずっとバンドにしよう〉って言ってたのに、彼は〈いや、3人がいい〉って。で、いよいよ、ちょっと自我を通したのかなって」
――必然であり、いいタイミングだったのでしょうね。
「うん。その流れに僕もウツも乗っかって、2人とも反対はしないから。そうすると、〈デビュー当時に戻ったみたい〉って感じるんですよ。その反面、楽器の部分で僕はすごく不安を抱くわけで(苦笑)。ギターはどうすんの?って。でも、それも小室はわかっているから、〈じゃあ、ここは弾いてよ〉なんて指定してくれて、また新しいチャレンジが始まっていくという。それはそれで楽しかったりしますけどね」