
〈ウーパールーパー〉を使おう
――小室さんがコンセプトを考えながらも、木根さんは木根さん、宇都宮さんは宇都宮さんのフィルターを通して、結果、独自のTMらしさが方程式のように生成されていくいい関係なんですよね。
「それは大きいですね。デビューから決まっていた関係性なので。そのときは、おぼろげというか、そんなに確信はなかったけども、今思えば、こうやって長い間やってきて、ずっとお互いのいいところを認め合っている3人というか。〈ここはウツだね〉とか〈ここは木根でしょ〉とかって、ずっと言い合っている。リスペクトとかは口には出さないけど、そんな暗黙の了解で40年間やってきた感じがあって。〈これは木根に任せておけば、木根のTMになるでしょ〉みたいにね」
――まさしく。この書籍「電気じかけの予言者たち -再起動編-」の存在もそういうことですね。それこそ、小室さんの引退宣言の流れで、ウツさんがソロツアーでTMの曲を演奏されたり、トリビュートライブもTM軸でなさったり。ウツさんがギアを上げたというか、引っ張った感じが印象的でした。
「それは2人で話し合ったことでもないし、ウツはそういうことを言わないから、そんな話を全然しないんだよね。それが、ある日ツアーを観に行ったときにソロでTMの曲をやっていて、僕も僕なりに感じることがあって。〈やるだけのことはやろうよ〉っていう思いが、なんとなくあったんだよね。話し合って熱く語ったりはしないんだけど。太陽系でいうところの惑星の配置の関係性のように、距離を置きながらもずっと続いているのが、この3人なんだよね」
――2000年頃、プログレ的な〈Major Turn-Round〉のツアーでは、メールでのやりとりをライブ映像に活用されたことがありましたけど、今回の書籍化でキーとなったのがメンバー間、それこそスタッフ間もですけど、LINEでの会話だったそうですね。それが残っていたことを、執筆するうえで活かされているとか。
「それが7作目にして、一番助かった。それこそ、LINEに残っていた〈何月何日に……〉っていうのが、ひとつの軸となりました。ライブのリハーサルとかをやっている間に、水面下で音源のやりとりがあったりね。それは、手帳にメモするだけでは残せないやりとりだったりするんですよ。本当にLINEさまさまでした」
――改めて、印象的だったLINEでのやりとりってありますか?
「嬉しかった、印象に残ってるのは……〈ウーパールーパー〉かな(苦笑)。ルーパーというサンプラーのような機材を使うことを小室から提案されたんだけど、よくわからないから本当にウーパールーパーだと思ったエピソード(笑)。
あと、ツアーのゲネだったかな、初日かな、ライブ音源を聴いて、すぐに小室さんからLINEが来て、〈木根さん、いろんなことをやってくれてるんだよね〉って言ってくれて(笑)。僕が勝手にやってるみたいな文面だったけど、小室に言われたことを全部一生懸命やってるだけなんだけど(笑)。〈助かるよ。本当にすごい。ありがとう〉って言うから、〈なんなんだろう、この人は〉と思ったな(笑)。でも、褒めてくれているから、嬉しかったよね」
TM流チーム論は距離感と平熱を保つこと
――バンド論にも通じるところだと思ったんですけど、マネージメントの立岡正樹さんを中心にコード譜や連絡先一覧、ツアー台本みたいなものを作っていらっしゃると本には書かれていて。それって、けっこう面白いことだなと。
「僕らはずっとバンドの中にいるものだから、それが当たり前になっているんだけど。たとえば、ウツのサポートに来たメンバーとか、〈30年この仕事してるけど、こんなことをしてもらったのは一度もないよ〉って言う人たちを見て、〈あ、うちだけの珍しいことなんだな〉って。僕らはそれに慣れちゃってるけど、そのことによって共通認識がブレなくなるワケで、工夫してくれていてありがたいなって」
――TMならではのツアーの巡り方のなかで、継承していきたいことや大事だと感じることってありますか?
「熱を上げずに距離を置いて楽しくやる。これで40年やってきたから。誰か1人の温度が上がりすぎちゃったりすると、誰かが冷めちゃったりとか。それは、スタッフも含めてね。だから、誰か1人が〈ワ〜〉ってなると〈ん?〉ってなったりとかする。熱を本当にいいところ、36.2℃くらいに抑えながら、常にいい距離感を保つこと。それが、長く音楽活動を続けていく秘訣というか。
よくね、ツアーが終わって、みんなで温泉旅行をしている人たちがいるんだよ。それって、あまり長続きしないような気がする。あ、わからないよ、僕がそう思うだけだから。僕たちはそれをやったら終わるだろうな(苦笑)。っていうか、ウツが〈なんで俺、小林(亮、マネージャー)と温泉行かなきゃなんないんだよ〉って言うだろうね(笑)。それぐらいが、本当にいい関係性なんだと思うんだよ。もちろん年齢や環境、人によるとは思いますけどね」
――企業のチームマネージメントや組織論で、採用やチーム作成のときの大事な要素にそんな側面があるそうですよ。今の時代、それは証明されているという。
「なるほど。僕らは計画的じゃなくて、結果。考えてみたら、そこかなっていう。〈よく3人の仲がいいのは、どうしてですか?〉って聞かれて、ウツが〈居心地がいいのかな。嫌だったら一緒にいないし〉みたいに言ってて。でも、それ以上でも以下でもないんだよね」