Number_iにしかなしえない絶妙なバランス感
とはいえ、そこはやはりNumber_i、そこまで直球の表現で済ませているわけがない。作詞・作曲・編曲のすべてにNumber_iがクレジットされており、作詞はPecori(ODD Foot Works)、作編曲はMONJOE(DATS)とSHUN(FIVE NEW OLD)という盤石のチームで制作された曲なのでなおさらだ。
たとえば冒頭、平野の〈ライブの最前列〉で始まるバースは、信号音のような電子音とかなり歪んだ〈ビー〉というサブベースとキックが鳴っているだけでトラックの音数はきわめて少ない。続いて岸がファルセットで歌う〈服ばっかデカくなって〉のところはかなりメロディアスなフロウで、バックにはインダストリアルで金属的なビートが加わってくる。そして〈漕ぐユニコーンが導く壮大な冒険を正夢に〉というパートでは、岸がリズム感や歌の伸びやかさを含めて素晴らしいボーカルパフォーマンスを聴かせている。
その次、平野が〈君のKiss Me〉と歌うところでは、ビートがトラップ風のダンサブルなものに変化。〈ただナチュラルにiして〉からは神宮寺が歌っており、バックにはピアノが加わる。神宮寺の歌うようなフロウはPUNPEE風で、少々がなるような声の濁らせ方も豊かなニュアンスで細部まで表現していてとてもいい。ここの神宮寺に限らず、この曲では3人がさまざまなフロウ/節回しを1ラインごとに披露しており、その技巧とリズム感には驚くばかりだ。
変調した声が重ねられた〈好きになっちゃう〉のプリコーラスを含め、サビに至るまではわずか47秒間。すさまじい密度と濃度の情報量が詰まっており、3人のラップ/歌もバックの音もめまぐるしく変わっていく。空白や隙間がほとんどなく、スピード感にあふれている。
コーラスを挟んで、平野が〈悲しくはないよ/君と一緒に昔聴いてた/MDのふたりごとが懐かしい〉と歌うパートは、ビートの打点からちょっとうしろにずらしながらノる、字余り気味のフロウが見事。その後の神宮寺による、〈愛は減ったり増えたりのものじゃない〉の突き抜けるような解放感との対比もいい。2回目の〈好きになっちゃう/どんどんどんどん〉では、怒鳴るようなふざけ半分のやけくそな声も背景に混ざっていて笑える。
と、“3XL”は、Number_iらしい攻め攻めの(前衛的とも言える)音作りと多彩すぎるフロウ、遊び心が効いていながらも、ラブソングらしい愛らしさ、かわいらしさ、ポップさ、ロマンティックさが際立っており、絶妙なバランス感覚で成り立っているのだ。テクニックの面から言っても、これはNumber_iにしか歌えない、作れない曲、彼らにしか表現しえない世界だろうなと思った。
ピュアなラブソングを超えた読み込みがいのある歌詞
リリックは、〈ピュアな恋心を表現した〉とプレスリリースにはある。歌詞にも遊び心が満載だ。
曲名にもなっている〈3XL〉は、もちろん〈愛のデカさ〉を服のサイズの大きさ(〈着飾る服ばっかデカくなって〉)にたとえたもの。さらに〈3×Love〉というラインがあることからもわかるように、〈Number_iの3人の愛〉にも明らかにかかっている。
ありふれた恋愛ソングとして感情移入することも可能だが、〈ライブの最前列/君が俺の音に乗ってる〉〈虜になればなるほど/苦しみは増すのが俺のJob〉〈My楽園に集う何万のLove〉〈また待ってる最前のフロア〉といった部分を読めば、やはりこれはiLYsに向けたラブソングだと捉えられる。ファンに対するラブソングでもあるのだ。
そんななかに、〈クソアピりまくったダンスのスクール〉〈君と一緒に昔聴いてた/MDのふたりごとが懐かしい〉などリアルなエピソードが差し込まれているのがおもしろい。一方、〈あれから10何年経ってんだ/お互いそれぞれ人生やってんだ/Social Media Is A Small World/頭の片隅/君は彼氏がいてそりゃそうだ空振り〉〈幸せそうで幸せ/汗ばむ手握り返せなかったおかげで今があるのさ〉などにはビターな後悔やザラついた手触りのある実感、そして過去と対比したときの現在の立ち位置への自信が盛り込まれていて、ピュアなラブソングの域を超えた読み込みがいがある。
アナログな質感のミュージックビデオも必見だ。“未確認領域”“Numbers Ur Zone”などで見せてきた3人のコミカルな表情がたっぷり詰まっていて、ファンタジックでありながらもどこか間の抜けたユーモアが効いた映像世界は、何度でも浸りたくなる。3人の笑える演技とダンスのキレの両立も、やはり相反する要素を両立させるNumber_iらしいバランス感の賜物で、見ていて思わず〈幸せいっぱい腹一杯〉になる。YouTube Live〈THE 3XL ROOM〉で平野の口から語られたストーリー(いわく「細胞と病原菌が恋に落ちるミュージックビデオ」)とともに、掘り下げて繰り返し見てほしい。
愛も懐も〈3XL〉なデカさ
思えば、2024年1月の“GOAT”、2025年1月の“GOD_i”と、Number_iはその年の頭に挑戦的な曲を毎回カマし、聴き手を驚かせてきた。“3XL”も挑戦的な曲だが、ここには3人のポップで親しみやすい面やコミカルな面がプラスして表れている。「紅白」やフェスでのソリッドでエッジーなパフォーマンスしか知らない人にとって、(iLYsはもともと認知していた)Number_iの魅力の一つをたっぷりと届ける曲になっているのだ。多面的で表情豊かな3人のグループとしての表現に、この曲から沼る人がますます増えそうだと思った。
総合して考えてみると、“3XL”でNumber_iが見せているのは〈愛も懐もデカい〉という事実だ。ここで3人は、攻めたサウンドとポップさ、クールでキレキレなパフォーマンスとコミカルな姿といった相反する要素を両立させている。それには表現力などの技術や技巧が必要なだけでなく、〈愛も懐もデカい〉という度量の広さがなければ不可能だ。“3XL”という曲のすごさは、そのことをたった2分45秒のポップソングで端的に証明していることである。
RELEASE INFORMATION
Number_i “3XL”

リリース日:2026年1月29日
配信リンク:https://tobe-music.lnk.to/3XL
TRACKLIST
1. 3XL