ドイツで生きることに改めて向き合い生まれたセカンド・アルバム『Heimat』
国際的なピアニストとして活躍中の三浦謙司。彼は日本に生まれ、アラブ首長国連邦、イギリス、そしてドイツと4カ国で生活をしてきたが、なかでもドイツでの時間が最も長い。ニューアルバム『Heimat(独:故郷)』はそんな彼だからこそ生まれた。
「ドイツは住みやすいのですが、どこかなじみにくい部分もあって、受け入れられていると実感するのはなかなか難しい。ただ、二人目の子供が生まれたタイミングで、この地で妻と子供と暮らしていくという決意のようなものが改めて生まれてきて……。そこから改めてドイツ音楽に向き合うようになっていったのです」
本盤にはベートーヴェン、シューマン、ブラームスの作品が収められている。ドイツの音楽についてはどのように感じていたのだろう。
「モーツァルトやブラームスは10代から好きでしたが、バッハやベートーヴェンについては堅苦しいといった印象があり、苦手意識がありました。もともと自分がロマンティックなものや華やかな作品にあこがれを持っていたから、というのもあると思うのですが……。だからこそ留学先はドイツにしました。将来を考えたとき、自分の中で足りないもの、学ぶべきものは何かと考えたときに真っ先に浮かんだのがドイツだったのです」
今回のベートーヴェンの“熱情”ソナタ、シューマンの“子供の情景”、ブラームスの“7つの幻想曲”(Op. 116)は〈いま〉の三浦だからこその選曲だという。
「特にベートーヴェンは学生時代の自分には足りないものが詰まった楽曲でした。そのとき出せなかった音色や表現が出せるようになったのは、バッハを積極的に弾くようになったり、ドイツ語の理解が深まったり、さまざまな音色を経験したりといった積み重ねがあったからだと思います。“子供の情景”は父親になったというのが一番大きいですね。これは私が人生で一番求めていたことでもありました。これを経験したことで今まで見えなかった行間をもっと楽しめるようになったり、曲の見方が変わってきたのです。ブラームスは晩年の作品の中で圧倒的に演奏機会の少ない曲ですが、この曲にしかない魅力がたくさんあります。それをいまの私の音で伝えられたら…と」
これからも様々なレパートリーに挑戦しつつも、ドイツ音楽にも生涯向き合っていきたいと語ってくれた。本盤は三浦の新しい〈はじまり〉を示すアルバムといえるだろう。
LIVE INFORMATION
三浦謙司 ピアノ・リサイタル~セカンド・アルバム発売記念~
2026年3月3日(火)東京・築地 浜離宮朝日ホール
開場/開演:18:30/19:00
■曲目
ブラームス:7つの幻想曲集 Op. 116
シューマン:子供の情景 Op. 15
メンデルスゾーン 無言歌集より
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」ヘ短調 Op. 57
