2026年、L’Arc-en-Cielが結成35周年を迎える。8月には初出演となる〈SUMMER SONIC 2026〉でヘッドライナーを務め、10月からは全国各地のアリーナを巡る〈35th L’Anniversary TOUR〉の開催も控えている。
Mikikiでは、そんなL’Arc-en-Cielの歴史を全12枚のオリジナルアルバムとともに振り返っていく。第1弾では、1stアルバム『DUNE』から4thアルバム『True』までの初期4作品のレビューをお届けする。 *Mikiki編集部
『DUNE』
by 大前多恵
1曲目“Shutting from the sky”の約1分間に及ぶ鮮烈なイントロだけで、聴き手を俗世から切り離しイマジネーションの世界へと深く没入させてしまう、マジカルな作品だ。日本語で〈砂丘〉と名付けられた、L’Arc-en-Cielがインディーズ時代に発表した唯一のアルバム。ロック、ニューウェーブ、ポストパンク、ゴシックなど収録曲を個々に形容することは可能だが、明言できるのは〈多彩である〉という一点のみで、それは当時も結成35周年を迎える今も変わっていない。
1993年4月10日、10,000枚限定のスペシャルジャケット盤としてリリースされた本作。同年4月27日には“失われた眺め”をボーナストラックに加えた10曲入りの通常盤をリリースした。2004年には“Floods of tears (single version)”“夜想花”“予感”を含めた全13曲入りの『DUNE 10th Anniversary Edition』を、さらに2023年には発売30周年を記念し、メンバー監修の下オリジナルマスターテープに遡ってリマスタリングを施した『DUNE (Remastered 2023)』を発表している。
90年代初頭の日本で生まれたバンドでありながらビートロックの遺伝子を持たず、代わりにヨーロッパ由来の退廃美や幻想性が血の中に流れているような、当時のシーンにおける特異な存在。歌唱はもちろん、全楽器のフレーズがそれぞれ歌うようにメロディアスで、バンド全体として多旋律的なアンサンブルを成しているのも驚異的だ。楽曲だけでなく、メンバーの佇まいやアートワークの細部に至るまで一貫した美意識を行き届かせている点は、4ADの系譜に連なるアーティストにも通じると個人的には感じている。
2021年の〈30th L’Anniversary TOUR〉で当時の最新シングル“FOREVER”から繋げて披露された表題曲“Dune”や、〈ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND〉で忘れ難いシーンを生んだ“Voice”“Taste of love”も本作に収録されている。こうしたライブでのファンの熱狂を思い出すにつけ再認識するのは、このアルバムがいかに特別なものであるか、ということ。スパニッシュなガットギター、ピアノ、ストリングスを効果的に取り入れ、空、海、森、風といった自然界のエレメントをそのまま映し取ったようなオーガニックで広がりのある音像が心地よく、現在のhydeの筆致と比べると(曲によっては)かなり重く暗い情念が迸る歌詞など、その魅力的なアンバランスを味わえるのは本作だけかもしれない。
活動規模が拡大しポピュラリティーを獲得していく中で、美意識の原点や聴き手の心の奥底を揺さぶってやまない表現の核を保ち続け、芸術性を決して失わなかったバンドの姿勢が、この第1作目の時点で明確に示されている。それこそがL’Arc-en-Cielの強みであり、世界各国にファンを獲得し続けている所以に思えてならない。
『Tierra』
by 後藤寛子
1994年にリリースされた、通算2作目となるアルバム『Tierra』。本作はメジャーファーストアルバムでもあるが、バンドの意向で大々的に〈メジャー〉という肩書が強調されることはなかった。当時はメジャーデビューを大きなターニングポイントとして捉えるバンドが多かった中、あくまで自分たちの音楽と表現に向き合い続けるL’Arc-en-Cielのストイックさが伝わる1枚だ。
kenのギターから雄大なサウンドが広がっていく“In the Air”で幕をあけ、ボサノバ調のビートにhydeの艶やかな歌声が乗る“Wind of Gold”、ハードコアの血を感じるダークな“Inner Core”、ピアノと歌だけで構築したバラード“瞳に映るもの”など、いわゆる〈メジャー感〉やトレンドにとらわれない楽曲が並ぶ。一方で、シングルカットされた“Blurry Eyes”を筆頭に、要所要所できらめくポップセンスが開花しているところにも注目したい。メンバーのルーツや音楽的好奇心を大切にしつつ、決してマニアックに終わらずポップな聞き心地に仕上げるバランス感覚こそ、のちのヒットソング群の礎となるものだ。
特にラストを飾る“White Feathers”は、この時代を代表する1曲。ストーリー性のある歌詞を抒情的に表現するhydeを軸に、tetsuyaの力強いコーラスとベースライン、kenのサイケデリックなギターソロ、sakuraの生み出すトライバルなビートなど、物語に寄り添ったドラマチックなアレンジは格別だ。ライブでは白い羽根が舞い落ちる演出が定番となり、時代を超えて数々の名場面を作っていくことになる。

