「作曲家と編曲者によるバレエ音楽の天才的な表現をピアノで奏でたい」菊池洋子
人は本当に好きなことをすると自然に笑顔になり、心が躍動し、その行いが他人を感動させることにつながる。バレエが大好きな菊池洋子の『バレエ・ファンタジー』は、彼女のバレエに対する憧れと愛情、作品に寄せる敬愛の念が凝縮したアルバム。各曲に思い出が詰まり、バレエの舞台を連想させ、夢を見させてくれる。
「作曲家と編曲者によるバレエ音楽の天才的な表現をピアノで奏で、大好きなバレエ音楽の世界を表現しました。私はベルリンでチャイコフスキー“白鳥の湖”を観て昔から好きだった踊りの表現が自分のなかに膨らみ、ピアノでバレエ音楽を演奏できればと願ってきました」
夢は着実に実現し、今シーズンはウィーン国立歌劇場でニューヨーク・シティ・バレエ団の人気振付家ジャスティン・ペックの作品『ヒートスケープ』でオケピットに入り、マルティヌーのピアノ協奏曲第1番を演奏。さらにペックがイギリスの伝説的な振付家フレデリック・アシュトンに捧げる同バレエガラでも、ラフマニノフの“パガニーニの主題による狂詩曲”を演奏する。
「ウィーンでの演奏はまさに夢の実現です。録音ではいずれの曲も作曲家と編曲者のすばらしさに導かれ、舞台が見え、空気がただよい、ファンタジーな世界が広がっていました。今後はこれらのナマ演奏も行っていきたい」
録音は聴き手に驚きと新たな発見を促す曲も収録された。
「編曲者の多くは作曲家の弟子で作品をよく知り尽くしているため、原曲に忠実ですばらしい仕上がりです。タネーエフ“くるみ割り人形”は難度が高く、バレエの舞台やオーケストラの色彩感などをピアノ1台で表現できるよう創意工夫が施されています。サン=サーンスの“白鳥”はジロティ編で、フォーキンがアンナ・パヴロワのために振り付けた“瀕死の白鳥”の舞台が見えるよう。ドホナーニやエシュパイの編曲も優雅です。貴重なのはジョージ・バランシンの曲。彼は多芸多才で、バレエ以外にさまざまな面で活躍していたようです」
菊池洋子は群馬県出身。祖父は夏祭りで“八木節”を毎年演じた。彼女の心の奥に宿るルーツの一曲として、今回の収録となった。
「中村八大編の迫力に富む独奏版を用いています。私は子どものころ日本舞踊を習っていて、その思い出も詰まっています。いまは世界が困難な時代ですが、ひとときでもバレエの美しさや歓び、ファンタジーな世界に浸っていただければと願っています」
