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“君はロックを聴かない”で歌われる〈ロック〉とは何か

楽曲のスタイルとしては、先述した彼女の憧れの存在である吉田拓郎に最も近いが、身投げした少女について描いた鮮烈なメジャーデビュー曲“生きていたんだよな”などは、そのモチーフからどうしても荒井由実“ひこうき雲”を連想せずにはいられない。同曲の冒頭で一気に畳み掛けても明確に言葉が聞き取れる発声とともに、途中に挿入される〈危ないですから離れてください〉〈ドラマでしかみたことない〉といった警察や野次馬と思われる人物たちの言葉を演じ分ける技術などは、後にスタジオジブリの映画「君たちはどう生きるか」に声優として起用された際にも活かされているような気がする。

恋人に対する堂々巡りな感情を循環コードの中で歌う2ndシングル“愛を伝えたいだとか”は、村田シゲ(□□□)のベースが冴えるスライ&ザ・ファミリー・ストーン風のファンクなアレンジが特に光る楽曲で、そのダンサブルなサウンドはリリース当時から現在において最もDJ人気の高い楽曲である。

そして何よりあいみょんのイメージを決定づけた曲といえば、42局ものラジオ局でパワープレイを獲得した3rdシングル“君はロックを聴かない”だろう。ロックを聴かない女子に自分の好きな古いロックのドーナツ盤を聴かせる男子の気持ちを歌ったこの曲は、ロック少年にとってのささやかかつストレートなラブソングであると同時に、必ずしもロックが主流ではなくなってしまった現代に〈それでもロックをやっていく〉という、あいみょん自身の決意表明の歌のようにも聴こえる。

さて、この〈ドーナツ盤〉とは一体何のレコードだったのだろうか。これは筆者の勝手な解釈だが〈手を叩く合図/雑なサプライズ〉というささやかな押韻の部分から、スピッツ“ロビンソン”の〈思い出のレコードと/大げさなエピソードを〉を連想した。

また、ここで歌われる〈ロック〉とは何か。かつて〈ロック〉は〈革新〉と同じ意味で使われてきた。その結果、新たな世代が現れるたびに過去のロックは終わったり、死んだり、ゴミにされたりもした。それに対してあいみょんが歌う〈ロック〉は、そういった革新性の中にあるものではなく、〈過去〉そのものを意味しているのではないだろうか。