活動期間は2007~2014年とわずか7年間でありながら、現在も後進に影響を与え続けているバンド、andymori。解散後も元メンバーはそれぞれ個々の活動を続けているが、解散から10年経った2024年、初期の楽曲“すごい速さ”がTikTokから突如バイラルヒットしたことで再び脚光を浴びている。オリジナルアルバムのアナログレコードでのリイシューが発表されるなど、andymoriについて語られる機会が増えた今こそ彼らがどんなバンドだったのかを改めて再考したい。当時、バンドへの取材もおこなっていた音楽ライターの金子厚武が綴った。 *Mikiki編集部


 

〈和製リバティーンズ〉として登場した3人

2024年の上半期はひさびさにandymoriの周辺が騒がしかった。2023年12月にCDデビュー15周年を記念したInstagramとTikTokのレーベルスタッフアカウントが開設されると、2009年に発表されたファーストアルバム『andymori』の収録曲“すごい速さ”がTikTokを起点にバイラルヒットを記録。6月にはオリジナルアルバム全5作がアナログレコードでリリースされることも発表された。バンドの解散からは10年が経過し、彼らが活動していた当時を知らない若いリスナーも増えたこのタイミングで、改めてandymoriというバンドの足跡をすごい速さで振り返ってみたい。

2007年に同じ大学の出身である小山田壮平、藤原寛、後藤大樹の3人でバンドを結成。バンド名は〈アンディ・ウォーホル〉と〈メメント・モリ〉から〈andymori〉と名付けられ、2008年にデビューEP『アンディとロックとベンガルトラとウィスキー』、2009年にファーストアルバム『andymori』を発表した。

andymori 『アンディとロックとベンガルトラとウィスキー』 Youth(2008)

andymori 『andymori』 Youth(2009)

2000年代後半の日本のバンドシーンでは2000年代前半の海外における、いわゆる〈ロックンロールリバイバル〉と共振するバンドが頭角を現し、OKAMOTO’S、毛皮のマリーズ、黒猫チェルシーなどがメジャーデビューをして、2010年に開催された新人バンドの登竜門〈スペースシャワー列伝〉のツアーには、andymoriとともにTHE BAWDIESとSISTER JETが顔を並べていたのには時代感がよく表れている(もうひと組はavengers in sci-fi)。

当時andymoriに対してよく言われていたのが〈和製リバティーンズ〉という呼び名で、メンバー自身も彼らのファンを公言。もしくは、ステージ上で激しく体を動かし、ときにがなるようにシャウトをする小山田の様子が若き日のポール・ウェラーに似ているとされ、andymoriが3ピースであるということもあり、ザ・ジャムと比較する声も見受けられた。

その一方で小山田は国内外のフォーク/カントリーを愛聴し、日本語詞で歌われるリリカルな旋律は他のバンドと一線を画すものであった。国内で言えば吉田拓郎に代表される1970年代のフォークがルーツに感じられるし、カントリー歌手のスキータ・デイヴィスによる1960年代のヒット曲“The End Of The World”は彼らのライブにおける定番の登場曲だった。

そして、ブリティッシュロックな曲調と、日本語詞によるフォーキーなメロディーとの組み合わせという意味でリンクを感じるのがくるりであり、2009年にリリースされたくるりのトリビュートアルバム『くるり鶏びゅ〜と』では“ロックンロール”をカバー。くるり主催の〈京都音楽博覧会〉への出演などで交流を深めると、2013年に開催されたライブハウスツアー〈FUN! FUN! FUN!〉には当時くるりのメンバーだったファンファンが参加し、彼女は小山田のソロ作でも客演するなど、交流は今も続いている。

VARIOUS ARTISTS 『くるり鶏びゅ~と』 NOISE McCARTNEY/スピードスター(2009)