©新井すみこ/KADOKAWA

ロック愛で結ばれたシスターフッドの物語が、新たな展開を迎える

 本誌#179(「intoxicate vol.179」)で紹介したいしいひさいち「ROCA」と並ぶ出色の音楽漫画、最新第4巻が登場。両作品に共通するのは女性音楽家の物語であることで(かつシスターフッドの物語)、このあたり欧米のヒット・チャートをテイラー・スウィフト、チャペル・ローン、チャーリーxcx、オリヴィア・ディーンらが席巻し、クラシックで沖澤のどかやミルガ・グラジニーテ=ティーラら女性指揮者が活躍する現在との共振を感じる。

新井すみこ 『気になってる人が男じゃなかった VOL.4』 KADOKAWA(2026)

 ギャル系陽キャの大沢綾と地味な陰キャだが並々ならぬ音楽的才能を持つ古賀美月。1990年代のグランジ&オルタナ系を中心としたロック愛で結ばれた二人の女子高校生シスターフッドの物語はしかし、4巻で大きな転換点に至る。潜在的に二人の間を循環していた感情は高揚の末、友情を超え決壊し、それが愛情であることが劇的に認識されるのだ。この展開には賛否両論もあるようだが、高校卒業と機を一にして、物語が青春グラフィティの枠を超えてゆくのもまた必然だろう。

 二人を結びつける音楽の在りようもパラレルに変化する。二人が聴く音楽として作中に登場する多くの固有名詞――ニルヴァーナやレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、スマッシング・パンプキンズといったビッグ・ネームたちとその楽曲は巻を追うごとに数を減らし、第4巻では派生的にエアロスミスやオアシス等の名が現れる程度。理由は明白で、古賀美月のミュージシャンとしての覚醒が彼女のそして彼女たち自身の歌へと向かってゆくからだ。そして引用ページをご覧の通り、〈聴く〉行為と愛情の確認が共振してゆくことにも注目したい。

 かくして本作の主人公たちは二重の試練に立ち向かう。高校から踏み出したより摩擦の大きな外界で、二人の愛を深めてゆくこと(幸い今のところ周囲は自然に受け止めているのが現代的)、そして創る側の美月と聴く側の綾が一体となり〈自分たちの音楽〉を探してゆくこと。同時にそれは作品表現上の試練でもある。セクシュアリティに踏み込むことで困難さも増す彼女たちの愛をどう描くか。既存の曲に頼らず〈彼女たちの歌〉をいかに画面上に鳴り響かせるか。4巻刊行後、Xとインスタグラムで発表されているその先の話はしかし、果敢にその課題に挑んでいる。息を凝らしこの漫画が奏でる〈新しいサウンド〉の行方を見届け、聴き届けよう。