
温かい親しみやすさと笑いで魅了した天々高々のエンタメ精神
〈ASAMA stage〉のライブも、そろそろ後半戦へ。次のライブが始まる前に、自家製ソーセージを使ったPork SandwichesのホットドッグとKERR COFFEEのフルーティなスペシャルティコーヒーで休憩。丸太に腰かけ、自然のなかでおいしいものを食べる体験は、東京ではなかなか味わえないもので、贅沢な時間を堪能した。イベント棟を覗いてみると、ボディペイント体験ができるBASHICO BodyPaintのブースに子どもたちの長蛇の列ができていて驚いた。
〈ASAMA stage〉に戻ると、もう天々高々の開演時間になっていた。「天々高々です! よろしくどうぞ~!」とあふちゃん(アフロ)が挨拶すると、あいちゃん(ヒグチアイ)がピアノを弾きはじめる。開幕の“YG”は、プロ野球の巨人の熱狂的ファンである男子に恋する女子の歌。「野球バカ」とヒグチアイが伸びやかな声でフックを歌う。ピアノのリズムも旋律も、どこか童謡のようだ。あふちゃんは、曲の締めに野球中継を真似て、高橋由伸がホームランを打つ様を実況。観客は後方までぎっしりで、幼い子どもたちも天々高々のユーモアと親しみやすい音に魅了されているようだった。
ピアノのキラキラした高音のリフレインが印象的な“がたんごとん”では、あふちゃんとあいちゃんが息子と母を演じ、演劇的なやりとりも聴かせる。2両編成のローカル電車を描写していくあふちゃんの言葉から、御代田駅まで実際に乗ってきた、しなの鉄道の車両の様子を思い出す。その後、「我々の音楽はゆったり聴くのがちょうどいいと思うんで!」と言ってから、長野出身の2人組であることをアピールした。「でも、私の地元は長野市、シティなんで……」と言うあいちゃんに、「おっ、喧嘩するか?」と応戦するあふちゃん。タワーレコード上田店でのエピソードも披露しつつ、「えこひいきしてほしいんで!」と長野県民に訴えかけた。
続く“おわりなきおかわり”では、2人暮らしのカップルの料理や食を巡る関係性を丁寧かつ繊細に描写していった。かと思えば、中間部で「ここでタイムスリップ! いざ、石器時代へ!」の一声で時を遡り、原始人の一家の食事情をラップ。あふちゃんの「とったどー!」という叫びが〈ASAMA stage〉に響き渡った。
あふちゃんが「るーともさんが有名曲をやって盛り上げていたんで、パクろうと思います!」と笑いを誘うと、あいちゃんのピアノは聴き馴染みのあるメロディを奏ではじめた。披露したのはなんと、徳永英明“壊れかけのRadio”の独自すぎるカバー。見事に歌い上げるあいちゃんの声に耳を傾けつつ、オリジナルな解釈が加わった名曲の妙にしみじみと聴き入った。
時刻は15時過ぎ。少し日が傾き、心地よい風がそよぐ。いつのまにかステージ上のライトが点灯していることに気づいた。シンコペーションを聴かせたピアノが印象的な“やったぜべいべー”は、笑いに満ちたある夫婦の物語。アフロらしい細かく緻密な描写で、オチの付け方も見事。観客も手拍子で歌の世界に加わった。
盛り上げ上手な天々高々のパフォーマンスも、あっというまにラストナンバー。「みんなでユニゾンで歌えるところがあるんで、練習しましょう!」「あふちゃん、お客さん役やってもらっていい?」「(大声で)ゴクゴクー!」「もうちょっとあっさりで大丈夫だから(笑)」なんてやりとりから、“5959”のサビをオーディエンス全員参加で合唱。大声で歌う子どもが現れ、「すごいキッズだ!」とあふちゃんもびっくり。「〈野球部〉出しちゃっていいっすか? 腹から声を出すときは、立って出すんです! これは音楽じゃなくて体育なんで!」と、観客をさらに煽る。

加えて、サプライズも用意されていた。「なんと、ヤッホーブルーイングさんがビールを提供してくれます!」とあふちゃん。呼び込んだスタッフに法被を着せられ、「〈癒着〉の瞬間です」と笑いを誘った。「よなよなエールバージョンで、“5959”!」と言って始まった“5959”のパフォーマンス中、あふちゃんとスタッフはよなよなエール缶型のバッグから空き缶を配って回る。空き缶はブースでよなよなエールと交換できるという(「キッズはみすず飴」とのこと)。「ゴクゴクー!」の部分ではその場にいた全員の声が揃い、ここまでで一番の盛り上がりが生まれた。
「〈SCRAMBLE FES〉、最高だー! お集まりいただいたみなさんに、たくさんいいことがありますようにー!」と元気よく去っていくあふちゃん&あいちゃん。MOROHAのヘビーさやシリアスさとは対極にあるエンターテインメント精神で、老若男女を虜にした天々高々だった。