日本のアニメ史に手塚が遺した足跡を知る上で欠かせない貴重な遺産

 アニメーションとはアニマ(生命)をものに吹きこむことで、生命の本質はメタモルフォーゼ(変形)にあります。手塚治虫がアニメにおいて最も魅了されたのは、この生命のメタモルフォーゼを動く映像で直接に表現できる点でした。ですから、手塚はマンガ家として成功したのちも、アニメーターとなって多くの作品を作りました。

 本書は、手塚のアニメの業績を、大判2巻、800ページの豪華本に集大成したものです。収録された資料は、ほとんどが手塚自身の手で描かれた原画、絵コンテ(台本)、キャラクター設定画、イメージボードなどで、大半が本書で初公開されるものです。手塚ファンはむろん、日本のアニメーションに真剣な興味を寄せる人にとって、大いなる贈り物となるでしょう。

手塚治虫 『手塚治虫アニメーションアート・アーカイブス』 玄光社(2026)

 第1巻は、記念すべき手塚の初長編「西遊記」から、「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」を経て、「千夜一夜物語」といった超大作まで、1960年代から70年代前半をカヴァーします。

 第2巻は、70年代後半から80年代に連打された2時間枠のテレビアニメ(「100万年地球の旅 バンダーブック」など)を中心に、手塚アニメの多彩な試みを網羅しています。

 私たちはアニメを見るとき時間を忘れてイメージの流れを消費していますが、本書に載った絵コンテでは、ワンカットずつを凝視することが可能です。私が一番凄いと思ったのは、第1巻の「ジャングル大帝 すすめレオ!」の絵コンテです。そこには、手塚が魅了されたメタモルフォーゼの速度感が生々しく反映されています。そうして見直すと、アニメという芸術の底知れぬ深さを驚異的な精度で追体験することができ、目も眩むような喜びが湧いてきます。

 第2巻の手塚アニメ最高の1本、「森の伝説 PART-1」のキャラクター設定画も凄いのひと言。ここには、コール、マッケイからディズニーを経て、リミテッド・アニメに至るアニメの歴史がメタモルフォーゼの連続として絵に結晶しています。この作品が初上映されたのは、1988年、手塚が病に倒れる1か月前のことでした。