(左から)サカモトヨウイチ、村尾泰郎

 変わり者の集団? ただのインディーズレーベル? 90年代のインディーシーンに独自のムーブメントを起こした謎多き音楽集団〈エレファント6〉。彼らはいったい何者なのか? そんなエレファント6をおよそ10年追いかけ、2019年に返却必須のレンタルビデオ方式のみで公開され、VHSテープでしか観ることができなかった幻の映画「エレファント6レコーディング・カンパニー」が全国公開を迎えた。

 そんな本作の試写会が2026年7月27日に月島のブロードメディア・スタジオ試写室で開催された。上映後にはバンド・ELEKIBASSの中心人物にしてインディーズレーベル〈Waikiki Record〉の主宰者・サカモトヨウイチと今作のパンフレットにも寄稿している映画/音楽評論家の村尾泰郎によるトークショーもあり、幅広い層が足を運び大盛況に終わったイベントの様子をお届けしよう。


 

エレファント6との出会い

 この映画が発表される前にエレファント6についてどれだけの人が、どれだけ詳しく知っていたのだろうか。アルバムについているロゴから、インディーズレーベルだと認識しているだけの人も多いのではないだろうか。チャートやメジャーなイベントだけを追っていると、その名前に出会うこともなかなかに難しい存在だが、二人はどのようにエレファント6にハマっていったのだろうか?

サカモトヨウイチ「エレファント6とはいつどこで出会いましたか? というのも、出会うにもハードルが高めなバンドが多いですよね、それこそ昨日のフジロックに誰も出ていませんしね(笑)。だから各世代で出会い方も違うはずで、どのように出会ったのかが気になっています。誰かから勧められたりとかですか?」

村尾泰郎「わたしは90年代後半、レコードショップで働いていたときに入荷して、そのとき初めて知りました。今では考えられないですが、国内盤もいくつか出てきて、それでよく聴くようになっていった感じです。そうした中で日本のロック好きやインディーファンにも話題になっていった感じがしますね」

サカモト「自分もレコードショップで出会ったんですよ。とあるお店に入ったときに流れていて、すぐにこれは一体誰の曲なのか店員さんに聞いたんです。それがオブ・モントリオールだったんです」

 

スクリーンから伝わるDIYの楽しさ

 今回の映画「エレファント6レコーディング・カンパニー」では、90年代後半のエレファント6という名前が世に知れ渡っていく時代感や、彼らの音楽づくりに向ける情熱がよくわかる内容になっており、この日の観客もスクリーンに釘付けになっていた。二人はどのような感想をもったのだろうか。

村尾「アメリカでは90年代前半はオルタナやグランジと呼ばれるものが流行っていたと思うんです。その後に音楽シーンが細分化していく中で色々とシーンが変わっていくような空気感があって、今回の映画ではその空気感がすごく伝わってきました」

サカモト「メンバーたちが出会うシーンとかはまさにそんな雰囲気が強くて印象的です。お互いにソニック・ユースが好きだと語りあって仲良くなる感じとか」

村尾「そうなんです! それまでの音楽シーンの根底にあった、なにか荒んでいる感じというか鬱屈としたものが、彼らには感じられない」

サカモト「たしかに、彼らからはハピネスを感じますよね」

村尾「楽しく音楽をつくることが一番大事だというのがすごく伝わってきますよね。この映画を通じて〈売れたい〉のではなく〈自由にやりたい〉という彼らのスタンスがよくわかりました」

サカモト「そうですよね。売れたくないわけじゃないけど、やりたいことへの妥協はしないというのがスゲーなあと思いました」

 

VHS版からの変化

 2019年に映画をVHSのレンタルビデオ方式のみで公開するという、非常にユニークな方法で世に出た今作だが、サカモトはそのVHS版も観ているという。違いなどはあるのだろうか。

村尾「今作は最初、出来上がったものを普通に出しても面白くないから、いくつかの都市のカフェやレコードショップに〈エレファント6レンタルクラブ〉という謎のチラシを置いていたみたいですね。そこにある連絡先に電話をかけるとVHSが送られてくるという(笑)」

サカモト「しかも無料なんですよね」

村尾「返却時に一緒に添えられていたメッセージやイラストなどが、すごく嬉しかったみたいです。そういうのもエレファント6らしさがありますよね」

サカモト「もはや一連の流れがアートというかインスタレーション作品のようですね」

村尾「サカモトさんはそのVHS版も観ているんですよね?」

サカモト「はい。でも、今回の劇場用のものとは少し違っていて、今回の方が圧倒的に観やすいです! 冒頭に謎の無声映画みたいなものが入っていたりしましたから……」

村尾・会場「(爆笑)」

 

ものづくりの話であり、人と人の繋がりの物語

 エレファント6の名前には〈レコーディング・カンパニー〉とはあるが、いわゆる会社や法人といったものではない。スピリットが同じなら誰でもエレファント6を名乗ってよいという。だからこそ同じ志をもつミュージシャンが多く集まった。そうした〈繋がり〉の魅力を最後に語ってもらった。

村尾「今の時代、DIYで音楽をつくるというと録音から配信まで個人で完結してしまうことも多いと思うのですが、彼らは横の繋がりでお互いに手伝っていたというのが素敵ですよね」

サカモト「そうですね。今回の映画のパンフレットに掲載されている関係図を見ると〈誰と誰が一緒にやっていた〉というのが書ききれなくなるほど繋がっていますよね。このパンフレットもぜひ見てもらいたいので劇場に足を運んでいただきたいです」

村尾「そうですね、友達のスケジュール帳にこそっと〈エレファント6〉って書いておいて一緒に行くとかね(笑)」

会場「(笑)」

サカモト「すごくエレファント6的だ(笑)。でも、ぜひご友人と一緒に観て、あれこれと語りあってほしい映画ですね。本日はありがとうございました」

村尾「ありがとうございました」

 


MOVIE INFORMATION
映画「エレファント6レコーディング・カンパニー」
監督:チャド・ストックフレス
出演:ロバート・シュナイダー、ビル・ドス、ウィル・カレン・ハート、ジェフ・マンガム
原題:The Elephant 6 Recording Co.
配給:キングレコード
(2022年/アメリカ/93分)
公式サイト:https://elephant6-movie.jp/index.html
X:@elephant6_movie
全国公開中
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