©Christian Ripkens

エレクトロの享楽性とメタルコアの破壊力を正面衝突させ、世界のピットをブチアゲてきたドイツ発6人組がニュー・アルバムを完成! 脳内中毒必至の『TANZNEID』は踊る阿呆どものスマイルと多幸感を増幅させる!!

歌って騒いで踊りたくなる

 モッシュピット × ダンスフロア=エレクトリック・ コールボーイ(以下ECB)。その勝利の方程式をブラッシュアップした新作の内容に筆者のアドレナリンは出っ放しである。このドイツはカストロップ=ラクセル出身の6人組による7作目のアルバム『TANZNEID』は、従来のファンの期待を裏切ることなく、バンドの骨格をさらに太くしたうえで、新要素も加えた驚愕の作品だ。メタルコアを柱にエレクトロ/EDMを盛り込み、さらにポップ・ パンクにまで手を広げたヴァラエティーに富む楽曲が揃っている。それでいて、いずれもECBの焼印が押されたヘヴィーかつキャッチーなサウンドになった。なかでも、ビートがよりいっそう強化されている点は本作のポイントだろう。

 もともとエスキモー・コールボーイという名で2010年に結成された彼らは、当時からエレクトロニコアな音楽性で勝負していたが、2020年に前任ヴォーカリストの脱退を受けてニコ・サラックが加入したことを契機にパーティー路線へと完全にシフト。2022年に現バンド名へと改名し、同年に発表した6作目のアルバム『TEKKNO』は母国ドイツでチャート1位を獲得し、いまや世界中のリスナーから注目されるバンドに登り詰めた。

ELECTRIC CALLBOY 『TANZNEID』 Century Media/ソニー(2026)

 この新作『TANZNEID』についても、リリース初週に母国ドイツの公式アルバム・チャートでは1位を獲得。2作連続の首位となり、その人気のほどを改めて証明しているところだ。そんなアルバムの冒頭を飾る表題曲は、まさに彼らの真骨頂というべきナンバー。タイトルはドイツ語の〈Tanz(ダンス)〉と〈Neid(羨望)〉を組み合わせた造語である。メタルコアとEDM成分がてんこ盛りで、 後半には凶暴なブレイクダウンが炸裂するこの曲は、とにかく歌って騒いで踊りたくなる至福のバンガー。フィジカルを執拗に揺さぶるパワフルなエナジーが充溢しているのだ。

 続いて、2曲目はBABYMETALとがっぷり四つでコラボした“RATATATA”。2024年に配信リリースされたこの曲はECBとBABYMETAL双方のパ ーティ一気質が見事な化学反応を起こしたアンセムといえるだろう。世界的に大きなバズを生んだ“RATATATA”がここ日本でのECB人気に火を点けたといっても過言ではなく、2024年12月に開催された豊洲PITでの単独公演は約3000人収容の会場が即完。筆者も現場で観たのだが、エンタメ性にに溢れたパフォ ーマンスで観客をガンガン焚き付けていた。なお、現在この曲は両者にとってセットリストで外すことができない屈指のキラー・チューンヘと成長を遂げており、〈Fu! Fu!〉のコーラス部分では観客の大合唱を巻き起こしている。続く人気オンライン・ ゲーム 「BRAWL STARS(ブロスタ)」とコラボした“Hypercharged”は曲名そのままのハイパー・テンションな仕上がり。怒涛の攻めっぷりを発揮している。

 

さらに現場を意識した攻めのアルバム

 そして、冒頭で触れたようにポップ・パンクの要素を加えているのも本作の特徴で、豪華なコラボと意外なカヴァーには驚きを隠せない。まずはオフスプリングのフロントマン、デクスター・ホーランドを迎えた“Let The Good Times Roll”である。ECB流のパーティーコアとオフスプリングの西海岸パンクを掛け算したかのような陽性のサウンドにアガらずにはいられない。デクスターは〈この曲のエネルギーや予測不能さに惹かれた〉と語っており、両者の親和性が弾けるコラボ楽曲だ。さらに、2025年に活動を終えたカナダ産ポップ・パンク・バンド、サム41の“Still Waiting”のカヴァーに挑んており、こちらも予想以上のハマり具合。これはECBの前ドラマー、デヴィッド・フリードリヒが病気を契機にバンドを離れた際、元サム41のフランク・ズモが代役を務め、その後のツアーやレコーディングに参加した縁から生まれたアイデアだろう。原曲の魅力を損なわず、彼らの個性を随所にアピールした好カヴァーだ。

 ほかにもシングル級の楽曲が並ぶ。ニコとケヴィン・ラタイジャック、二人のヴォーカリストの掛け合いから始まる“Elevator Operator”は遊び心とユーモア溢れるフックが満載の楽曲だし、野獣の如きスクリームとキャッチーな歌メロが交錯する“Heartclub”ではメタルコアの獰猛さをダイナミックな音像へと昇華。また、“The Way You Are”はアコギを用いた爽快な歌メロから地獄絵図へと急展開するギャップの激しいサウンドが最高にクールかつ抱腹絶倒。バンド側の〈してやったり〉の表情が脳裏に浮かんでくる。また、神聖なコーラスを導入している“Revery”は壮大なスケールを描いた新境地のサウンドで、アリーナやスタジアムなど大きな会場で抜群に映えそうだ。

 〈リード・シングルとして配信された“RATATATA”や“Hypercharged”は、まだはじまりにすぎない。本編は、もっと荒々しく、もっとラウドで、生きている〉と本作に対するバンドからのコメントを読み、心の中で激しく膝を打った。前作を跳躍台にして、より現場(ライヴ)を意識した〈攻めの一枚〉へと舵を切っている――『TANZNEID』はそこが何よりも素晴らしい。

 なお、本作には4曲のリミックスも収録。代表曲“We Got The Moves”のサリヴァン・キングによるリミックスや、パオロ・フェラーラが手掛けた“TANZNEID”のリミックスなど、原曲の一部をデフォルメしたり、よりダンサブルかつ享楽的な音像に仕上げたりすることで、オリジナルとは異なるおもしろさが引き出されている。さらに、日本盤には2025年のライヴ音源2曲をボーナス・トラックとして追加。こちらはベルリン公演での“TANZNEID”、シュトウットガルト公演での"Revery"のパフォーマンスだ。母国ならではの熱烈な歓声も受けてか、ひときわド迫力で豪放な演奏に興奮が収まらない。そして、そんなECBは、今年8月29日(土)、31日(月)に大阪、東京での来日公演を控えている(大阪はDJセットにあたるエレクトリック・ ベースボーイ名義での出演)。ライヴ仕様というべき本作の楽曲が日本の観客とどんな火花を散らすのか、いまから楽しみで仕方がない。 *荒金良介

エレクトリック・コールボーイの作品。
左から、2022年作の日本企画盤『Tekkno(Japan Tour Edition)』(ソニー)、2020年のEP『Mmxx』、2019年作『Rehab』、2017年作『The Scene』(すべてCentury Media)、2015年作『Crystals』(Spinefarm)

『TANZNEID』に参加したアー ティストの関連作。
BABYMETALの2025年作『METAL FORTH』(Capitol)、オフスプリングの2024年作『Supercharged』(Concord)、サリヴァン・キングの2021年作『Loud』(Hopeless)

 

ヘドバンからダンスまで対応可能、最近のハイブリッドなメタルコア盤はこのあたり!!

BRING ME THE HORIZON 『Count Your Blessings | Repented』 RCA(2026)

ラウド・ロックの地平を広げ続けているトップランカーは、2006年のファースト・アルバムを再録した本作を発表したばかり。苛烈さを増した演奏と音に20年の進化が刻まれている。追加収録されたデスコア回帰の新曲“Dehumanized”も必聴!

 

POPPY 『Empty Hands』 Sumerian(2026)

BMTHの元メンバーであるジョーダン・フィッシュが制作した、ボストン出身のシンガーによる7作目。それまでの彼女を特微づけていたオルタナやハイバーポップの要素を削ぎ落したメタルコアど真ん中のサウンドが、圧巻の叫びを引き立てている。

 

SAMURAI PIZZA CATS 『Press Start』 Century Media(2026)

ECBのギタリスト、ダニエル・ハニスを擁する4人組の2作目。日本のメタル・アイドル、BABYBEARDをフィーチャーした“Ramen-Man”を筆頭に、エレクトロニコア~トランスコア色の濃いサウンドでナーディーな世界観をアッパーに描く。

 

GHOSTKID 『HOLLYWOOD SUICIDE』 Century Media(2024)

2020年にECBを脱退したシンガーのセバスチャン”スシ”ビースラーがその直後に結成したバンドの2作目。全編を貫くシリアスでダークな空気感は〈パーティー〉とは真逆で、袂を分かったのは必然だったのだろう。10月にはサード・アルバムを発表!

 

AVRALIZE 『liminal』 Arising Empire(2025)

ドイツのモダン・メタル4人組による2作目は、演奏技術の高さを活かしたフュージョンやファンク的なグルーヴに引き込まれる。パンピンなピアノを配した“medicine”、ニュー・レイヴを思わせる“bite my tongue”など、これは相当フレッシュ!

 

MOTIONLESS IN WHITE 『Decades』 Roadrunner(2026)

ビーストなジャケ通りのメタルコアが鳴っている、ペンシルヴァニア発5人組の7作目。コリィ・テイラーを迎えたデジタル・ハードコア“Playing God”などエレクトロの味つけが痛快で、特に“Sunglasses At Night”のカヴァーはECB級のポップさだ。 *田中亮太

 


LIVE INFORMATION
エレクトリック・ コールボーイ〈TANZNEID WORLD TOUR〉日本公演

2026年8月29日(土)大阪 GORILLA HALL OSAKA ※DJセットでの公演
2026年8月31日(月)東京・有明 東京ガーデンシアター