〈女〉を通してさまざまなものが見える!? 『標本箱』と併せて聴きたい女性の物語集
性生活といった見えざる部分まであからさまに口にするシンガー・ソングライター。一聴するとドギツイが、よく聴けばそれは〈普通の女子のあるある〉。ピアノ・バラードから歌謡ロック、アイドル・ポップ風までサウンドは幅広いが、どこかいなたさを残したアレンジが親近感の元かも。
〈女に生まれたからには自分なりの女の子の世界を書きたい〉という新進シンガー・ソングライターの主題は、身近な恋の歌。だが、のちに思い出したときに床の上でジタバタしたくなるような滑稽さを忍ばせるのが彼女流だ。レトロな音作りと大瀧詠一ライクなメロディーに大器の予感が。
黒木と大森、共にアーティスト写真を蜷川実花が担当した点も共通しているが、彼女が撮った映画「さくらん」「ヘルタースケルター」のように、女性の業をセンセーショナルなドラマ性をもって露にしていくという点も通底。後者は歌の主人公が憑依したかのような激唱も大きな魅力だ。
ガーリーな佇まいとは裏腹に、プロデューサーごとにスタイルを変貌させてさまざまな〈女〉を体現していく様は、まるで『標本箱』に登場する11人の主人公をひとりで演じているかのよう。アンニュイな節回しで紡がれる女の子のブルーは、いつの時代も共通のものだ。
オールド・スクールなエレクトロ・トラックに乗せて女子の〈ありえない!〉を放射する女性MC+DJ。でもオフィシャルサイトには、〈まずはじめに、これはあなたのことを歌った歌です〉という女子へ向けたメッセージが……〈女子のあるある〉のブーメラン版ですね。
〈女性特有のさまざまな心の動きをつまびらかにする〉という詞世界を後押しするバンド・サウンドが、これまで以上に開かれた印象を残す黒木渚の新作。その風通しの良さは、〈痒いところに手が届く乙女心〉が詰め込まれたこの人の最新作にも通じる空気感がある。
松岡モトキのプロデュースによるメジャー・デビュー作。アコギの響きを大事にしたオーガニックなアレンジで、20代の女性が抱える孤独や劣等感をエモーショナルに解放する。新環境で最初の録音となった“ラブソング”は、さしずめ黒木の“革命”と同じ位置付けか。
6月には主題歌を手掛けた映画「女の穴」の公開も控える神戸発の3人組。本作は、「愛のコリーダ」を下敷きにした“狂い咲き”や遊女が主役の“花屋敷炎上”をはじめ、〈危険な愛〉を描いた詞世界をテンポ・チェンジやファンキーなリフが交わる強烈なダンス・ビートが扇動する。