インタビュー

いくつもの音楽的変遷を重ねてきたSSW、植田真梨恵がストレートな言葉とメロディーで編み上げるメジャー初アルバム

いくつもの音楽的変遷を重ねてきたSSW、植田真梨恵がストレートな言葉とメロディーで編み上げるメジャー初アルバム

 17歳で制作した初作品から、7年近くの時間をかけてメジャー・デビュー。彼女の才能を信じたレーベルのバックアップのもと、毎回極端なほど振り切った作品を作り続け、多彩で強固なソングライティング能力を身に付けてきた植田真梨恵が、ついに〈メジャー・ファースト・アルバム〉をリリースする時がやってきた。

 「いろんなものを削ぎ落としても、ちゃんとパワーが宿っている曲を入れたいなと思っていました。何もおかしなことは言わない、ストレートに良いと思える言葉とメロディーだけで曲を作ることが、いまの私にとって、音楽シーンのなかで大事なことかなと思っているんです」。

植田真梨恵 はなしはそれからだ GIZA(2015)

 〈おかしなことは言わない〉と断ったのには理由がある。例えば、2012年にリリースしたアルバム『センチメンタルなリズム』。〈目まぐるしくアップダウンする精神状態〉とみずから振り返る、毒の強いラヴソングや、世の中への違和感をぶちまける若い感情の暴発は、当時もいまも衝撃的だ。が、彼女はそこに留まることを選ばなかった。

  「あの時は必死で、〈私はここにいるんだ!〉と言いたかったんだと思います。でもいまは、私自身が大人になって趣味が変わったこともあって、聴いてて疲れない音楽がいいなと思うので。決して悲しいだけで終わらないような、前向きなパワーを皆さんに届ける曲をリリースしないと、メジャーでは意味がないと思っています」。

 本作『はなしはそれからだ』は、先行シングル“彼に守ってほしい10のこと”“ザクロの実”を含む13曲を収録。約半数がバンド形態のセッションでアレンジされた、イキの良いバンド・サウンドだ。甘く柔らかくエアリーな質感にもかかわらず、激しいロック・チューンにもすっと馴染む、独特な声の魅力もグッと引き立って聴こえる。

  「歌がいちばん映える形で、必要最低限の楽器で、どれだけドラマティックにできるか。ディレクションを自分でやらせてもらったんですけど、すごく勉強になりました。曲によってはアレンジャーさんにお願いして、音で遊んでもらった曲もあるし、形式にはこだわっていないんですけど、全体的に生きてる感じがする音になったと思います」。

 〈生きてる音〉がダイレクトに伝わるのは、ブルージーで痛快なギターが聴きモノな“FRIDAY”や、メロディックに疾走する“彼に守ってほしい10のこと”。キャッチーなメロディーにフォーカスすれば、ピコピコしたシンセ音が可愛い“ペースト”やソウルフルなリズムの“カルカテレパシー”。エモーショナルに心揺れるのは、とびきり甘い恋の歌“プリーズプリーズ”や、切ないラヴソング“ザクロの実”。ヴォーカリストとしての表現力なら、ミュージカル・ナンバーのように劇的な“a girl”、アコギ一本で弾き語る“昔の話”、大好きな映画にインスパイアされたという“さよならのかわりに記憶を消した”などなど。すべての曲に華があり、ドラマがあり、そして救いの言葉がある。

  「〈売れる〉ということに対して夢はありますけど、それとは別に、良いと思えるものをひたむきに作っていきたいです。誰にも言えない悩みがあったり、自分の気持ちをわかってもらえないと思っているような人たちが、音楽を聴いて、ギリギリのところで踏み止まって、救われるといいなという気持ちでいるので。良いと思えるものを100%で作って、少しでも良い方向に心が動いてもらえればと思っています」。

 メジャー進出したばかりにして、いくつもの音楽的変遷を重ね、届けるべき明確な言葉を持っている24歳。女性アーティストで賑わう音楽シーンのなかで、その存在はすでに特別な輝きを放ちはじめている。

 

植田真梨恵

90年生まれ、福岡は久留米出身のシンガー・ソングライター。2006年に単身大阪に移り、音楽活動を開始。2007年の初ライヴがレコード会社のスタッフの目に留まり、2008年の初作『退屈なコッペリア』を皮切りに、2009年の『U.M.E.』、2010年の『葬るリキッドルーム』とコンスタントにミニ・アルバムを発表する。2012年にはファースト・フル・アルバム『センチメンタルなリズム』を引っ提げて〈ap bank fes〉にも出演。エネルギッシュなライヴも評判となり、2014年8月にシングル“彼に守ってほしい10のこと”でメジャー・デビューする。同年11月のシングル“ザクロの実”を挿み、このたびニュー・アルバム『はなしはそれからだ』(GIZA)をリリースしたばかり。

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