ONE HUNDRED PLUS ONE 2025
ライター陣の選ぶ2025年の〈+1枚〉

●荒金良介

VOLBEAT 『God Of Angels Trust』 Volbeat/ソニー(2025)

ロカビリー・メタルの異名を取るヴォルビートの本作は、瑞々しい衝動で〈らしさ〉を炸裂させた傑作だった。他にはターンスタイルも破格のクオリティだったし、山嵐は常に新境地を切り拓くミクスチャーのパイオニアとして驚くべき完成度を提示。ライヴはブラッディウッド、スマパン、ショウ・ミー・ザ・ボディが印象に残った。あと、我が地元・大分で2デイズ開催された野外フェス〈ジゴロック2025〉で観た中森明菜のステージが素晴らしく、特に初日はMCも饒舌で、変わらぬ艶声に感涙してしまった。

 

●池谷瑛子

bird 『Reconnect』 ソニー(2025)

中年ともなると、四半世紀以上は聴き続けているアーティストがいくつもありますが……デビューから26年を数えるbirdはまさにそのひとり。長らく彼女に関わる冨田恵一が全面プロデュースしており、洒脱な富田節とbirdのしなやかな歌声が最高の相性を魅せつつ、ARIWAを迎えたアマピアノ風の“再び世界へ”や、スチャダラパー(こちらは35周年!)とのセンスとユーモア溢れる絡みなどの嬉しいコラボも。また人生のサントラがひとつ増えました。これからも追い続けさせてほしい!

 

●一ノ木裕之

DUSTIN WONG 『Gloria』 Hausu Mountain(2025)

あっちもこっちも地獄だらけで立つ瀬もなしや2025。そんな1年はラフ・スクワッド、グラインドハウス、sbk、ペンゲーム・ラップ・バトルといったグライム関連をはじめザ・ネックス、ラエド・ヤシン、ヴァレンティア・マガレッティ、23wa、KASAI、ユニヴァーシティからジェットスキー、リイシューのパリス1942らの音源でファイティング・ポーズを取るのがせいぜい。そんななかで亡き祖母に捧げる本作の瑞々しさには心洗われました。

 

●大原かおり

NAOKI and TAISHO 『SPECIAL MOMENTS』 H.G.L/SELECTIVE(2025)

良い作品がいろいろ出ていたのは例年通りで……というか、何を聴いても良いなと感じられるようになってきている気がします。自分のコンディションのせいなのか、全体的なクオリティが高くなってきているのか。そこからどういうものがこの先の記憶に残っていくのかなという感じで自分に期待しているところであります。

 

●金子厚武

IDLEWILD 『Idlewild』 V2(2025)

昨年の再結成発表に続き、ワールド・ツアーが大きな反響を呼んだオアシス。僕は来日公演を見られませんでしたが、オープニングを務めたアジカンが同じ週にアッシュと対バンをしていて、そちらを見られたので後悔はないです。そのアッシュの新作にはブラーのグレアム・コクソンが参加していましたが、こちらも同じ時代のバンドで、思い入れの強いアイドルワイルドが結成30年目にしてセルフ・タイトル作を出したのは非常に感動的でした。来日してくれ!

 

●北野 創

Edel Note 『片翼のトリバガ』 Lantis(2025)

人気アーティストのアニメ・タイアップが増加する一方、キャラソン文化は成熟後の先鋭化が進んでいる印象で、Ave Mujicaのガチなゴシック・メタルからAiScReam“愛♡スクリ~ム!”のカワイイ系まで、デフォルメ表現の強みを活かした音楽が今年も豊作でした。なかでも「ラブライブ! 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ」は現実と作中の時間の流れが連動したリアルタイム性がかつてない体験で、1年限定で活動する新ユニット・Edel Noteの物語的な世界観には、本人たちのドラマも込みで惹き込まれました! これって壮大な実験演劇では?

 

●鬼頭隆生

ORNETTE COLEMAN 『Dancing In Your Head』 Horizon/ユニバーサル(1977)

年々、深い思い入れと共に音楽を評するテキストの意義を大きく感じます。〈Everything Jazz〉シリーズのリイシューはドン・ウォズや黒田卓也などによる新規コメント付きで、名盤・定番に新たな光を当てていました。なかでも本作はオーネット・コールマンがモロッコとパリでその音楽性を革新した偉大な一枚(だが日本ではサブスク非対応)。没後10年を期に邦訳された評伝「オーネット・コールマン 領土と冒険」も、その音楽の伝播力を網羅する偉業でした。

 

●久保田泰平

GENE LOVES JEZEBEL 『Glad To Be Alive: Live In Nottingham 1986 (The Complete Concert) 』 Beggars Banquet/Iconoclassic(2025)

ボルショイとかジーン・ラヴズ・ジザベルとか、80年代中期のベガーズ・バンケット盤をなぜかよく聴いてました。で、86年作『Discover』のボーナス盤に8曲だけ入ってたライヴ音源の完全版(17曲入り)がこれでして、“Desire”を聴きたいがためにためらうことなく入手。未発表のライヴ音源って、やっぱアガりますね……とか言いつつ、いちばん聴いてたのは、セイラーのミックステープ。

 

●桑原シロー

タブレット純 『タブレット純 大いに歌う 中川博之作品集』 コロムビア(2025)

2025年、もっとも艶やかな歌声を聴かせてくれたのは誰だったっけ?と記憶を手繰り寄せた刹那、ニュッと出てきたのがタブ純のご尊顔だった。ムード歌謡の父、中川博之の珠玉の名曲にふたたび息吹を与えたファースト・アルバム。彼の慈しみに満ちたルーツ巡礼に触れ、胸の深みに沈んでいた原風景がそっと目を覚ましたのだった。原曲の肌触りを精妙に再構築してみせた音響表現もみごとで、香ばしさ満点。情念揺らめくムード歌謡の美景。

 

●郡司和歌

MERMAID 『DUBMAID』 Beer & Records(2025)

相変わらずマイペースにアンダーグラウンド界隈をゆるり回遊したこの一年。とあるパーティーでDJがプレイした瞬間〈なに、これ誰の曲!?〉と胸を打ち抜いたのが本作に収録の“LOVE”。ブレンダ・ラッセル“A Little Bit Of Love”をモチーフに、ゆるめのダブを施したほろ苦くスウィートなサウンドに完全にやられました。これだから現場通いはやめられない……と出会いのワクワク感を再確認した2025年。生涯現役でいたいものです。

 

●近藤真弥

VLURE 『Escalate』 Music For Nations(2025)

ジョン・グレイシャーやデイヴといったUKラップの良作を楽しみつつ、2025年はロック作品に惹かれることも多かったです。特に韓国のソーシャルクラブ・ヒャンウ、日本の羊文学、アメリカのギースなど、現在の世情と共鳴可能な音と言葉がにじむアルバムやEPを愛聴しました。今回の選盤も、そのなかの一枚。スコットランド出身のレイヴ・パンク・バンドによる本作は、多幸感に満ちた集団的反抗行為としてのレイヴを受け継いだアルバムです。

 

●澤田大輔

TESTPATTERN 『APRÈS-MIDI』 ¥EN/アルファ/ソニー(1982)

2人のグラフィックデザイナーによるユニットがYENに残した82年作がついにリイシュー。(下世話ながら)近年の中古市場におけるオリジナル盤の価格高騰などを鑑みると、文字通り待望の復刻じゃないでしょうか。同時代の英コンパクト・オーガニゼーションあたりと共振する洒脱なポップセンスと、エレガントかつシンプルにデザインされたエレクトロニック・サウンドの稀有な結託がタイムレスな輝きを放つ名作です。無果汁団や想像力の血などによる80年代テクノをフレッシュに再解釈した新作たちと併せて堪能しました。

 

●田山雄士

a flood of circle 『夜空に架かる虹』 インペリアル(2025)

印象深かった出来事は、学生時代から大好きなthe pillowsの解散です。とはいえ、後悔しないほどライヴを観てきて、悲しみよりも感謝の気持ちが強く、思いのほか凹んでません。今もメンバーは音楽を続けてますし。最後にMikikiさんで総括文を書かせていただき感謝。そして、彼らの信念を継ぐa flood of circleの新作が◎。絶望しそうなときも、この向こう見ずなロックンロールが背中を押してくれる。結成20周年の武道館、ピロウズのときは盲腸入院だったけど、フラッドはちゃんとお祝いしたい。

 

●土田真弓

VARIOUS ARTISTS 『Krautrock Eruption - An Introduction To German Electronic Music 1970-1980』 Bureau B(2025)

相変わらずアナログ・シンセの音色が大好物なもので、2025年もこういった作品を買い漁っていました。有名どころが収められているので、タイトル通りにクラウトロックの入門盤としても良いし、個人的にはミニマルなサウンドの中にテクノ前夜の沸々とした爆発力のようなものが感じられてワクワクします。そんな〈音〉の方向から2025年の初出作を選ぶなら無果汁団の『ナサリー』。ポップス作品としても傑作で、今後もマイペースに新作を届けてほしいです。

 

●藤堂輝家

SOPHIE ELLIS-BEXTOR 『Perimenopop』 Republic(2025)

仕様違いのヴァイナルを3種も買い、単独がないならと苗場まで足を運んだハイムの4作目が問答無用のベストではあるんですが、そのWHITE STAGEで出番を待つ間にロイエル・オーティスによる“Murder On The Dancefloor”カヴァーでブチ上がったのをきっかけに、近年の活動をおさらいして知った本作を次点で選出。原点回帰のサウンドは2000年代初頭に宇田川のレコ屋で12インチを買い求めた淡い想い出を甦らせてくれたのでした。

 

●長澤香奈

ME:I 『WHO I AM』 LAPONE GIRLS(2025)

中毒性が高く心躍る楽曲を発見してはリピートした2025年。なかでもME:Iの“MUSE”が持つメロウかつポップで変化に富んだサウンドにハマり、デビュー曲“Click”からの軌跡と彼女たちの多彩な魅力が楽しめるこのアルバムをワクワクしながら聴く日々でした。“MUSE”は、YouTubeで公開した生バンドを従えた〈ロッキン〉の映像もクールで最高。他にも、離婚伝説、原因は自分にある。、水平線など、キャッチーさにドキッとするような音楽との出会いが多かった一年でした。

 

●林 剛

YUFU 『Heal Me Good』 Zip/Kissing Fish(2025)

台湾からオランダを経由して届けられ、後に日本盤も出された、この東アジア最高峰と言っていいヴィンテージ・ソウル作に年明け早々から虜になった。ガレージ・ロックを出発点としながら一途にソウルを追求し、〈74年〉に照射して当時の空気や土地の香りまで再現する心意気とセンスに感服。再評価も何周目かという70年代ソウルだが、冷静に俯瞰できるいまだからこその視点、そして何より対象への愛が唯一無二の新しいレトロを生んだ。Mikikiの記事も読んでほしい。

 

●Masso 187um

RAMIREZ 『THA PLAYA$ MANUAL II』 Velvet Note/Empire(2025)

2025年のトピックは何と言っても〈FORCE Festival〉の開催とトラヴィス・スコットの来日公演に尽きるでしょう。こんなヒップホップのライヴをずっと見たかった、という方も多いのではないかと思います。来年以降も期待しております。/昨年の本企画でスヌープ仕切りのデス・ロウから出たドッグ・パウンド作品をピックしましたが、まさか1年後にスヌープとダズの関係がここまで悪化してしまうとは……喧嘩と仲直りを繰り返している界隈でもあるので、また復縁し、共演してくれる日を待ちます。/「プルリブス」、離脱すべきかどうか悩みどころ(現在4話途中)。

 

●宮本英夫

植田真梨恵 『時間は止まりたがっている』 PRIMARIE(2025)

本厄の1年をなんとか乗り切れそうで、それにつけても年齢や環境と食事や趣味や音楽の組み合わせは年々変化して、平たく言うと(さまざまな意味で)うるさいものや辛いものや圧の強いものがダメで、パーソナルで思索的でノスタルジックなものにまず耳が惹かれる昨今、“田んぼ・トライアル・パチンコ屋”のあまりにも心地よく静謐でプライベートで実直な言葉と音と声の浮遊感覚に代表されるこのアルバムにOPUS OF MY EARを捧げます。

 

●村尾泰郎

CAMERON WINTER 『Heavy Metal』 Partisan/BIG NOTHING(2024)

NYのロック・バンド、ギースの中心人物、キャメロン・ウィンターの初ソロ・アルバム。マンドリン、チェロ、ヴィブラフォンなど、さまざまな楽器を使ってギースとは違ったサウンドを展開。どこにたどり着くのかわからない個性的なメロディー。もごもごと呟くような低音の歌声は、知らないうちに頭のなかにこびりつく。キャメロンがリスペクトするレナード・コーエンを思わせる孤高さもあって、ギースより好きかも。

 

●村上ひさし

THE ORB 『Buddhist Hipsters』 Cooking Vinyl(2025)

レトロ・ハウスに開眼する若手を横目に、オジサンたちも原点回帰。あちこち寄り道したけど、やっぱりこれが得意なんじゃよ、と言わんが如くジ・オーブが90年代初期を思わせるアンビエント・ハウス作で勝負に。キリング・ジョークのユースやシステム7、ロジャー・イーノ、元メンバーのアンディ・ファルコナー他も駆けつけ、時間軸が30年ほど歪んだ感じ。永遠ずーっと聴いていられるこのトリップ感は、あの時代の達人たちならでは。時には退化も前進なのだ!?

 

●山口哲生

ETHEL CAIN 『Willoughby Tucker, I’ll Always Love You』 Daughters Of Cain(2025)

実話怪談にどハマりして、取り憑かれたようにYouTubeを漁り続けた2025年。ある日の深夜、突如PCがエセル・ケインの『Perverts』を流しはじめて、あまりにも不気味すぎる音世界に〈怪談の聞きすぎで呪われちゃったかも……〉と、恥ずかしながら本気で焦りました。その後は、夢現なゴシック・フォークでメロディアスな本作をリピートすることが多く、ポップなものが好きという自分の趣味嗜好を再認識しながら、気付けば2枚ともよく聴いていました。

 

●山口智男

LUKE BELL 『The King Is Back』 All Blue(2025)

将来を嘱望されながら、2022年8月に32歳の若さでこの世を去ったシンガー・ソングライターの未発表音源集。双極性障害を患っていたため、表立った活動こそできなかったものの、楽曲制作には精力的に取り組んでいたことを物語る全28曲。未発表音源の類は、やはり未発表で相応しいと思わせるものが少なくないが、これが未発表のままだったとしたら、稀有な才能を失ったUSカントリー界にとって、その才能を後世に伝えることすらできないという二重の損失になっていたはず。

 

●山西絵美

HOLLIE COOK 『Shy Girl』 Mr. Bongo(2025)

久々に〈New Opus〉の原稿を書かせてもらうにあたって、少し意識的に多ジャンルの作品を聴くようにした2025年。いろいろ更新されていて驚きましたが、そういう進化系は編集部の選ぶ100枚に入ってくると思い、〈+1〉は自分の守備範囲内からセレクトしました。斬新な音を楽しんだからこそ、基本に忠実な本作の輝きが私のなかで一層増したっていうのもありつつ、それを抜きにしても、UKラヴァーズ・ロックの名盤と呼べるアルバムに出会えたのはエステルの2018年作『Lovers Rock』以来。2020年代のどの年に出ても、私の〈+1〉はきっとこれです。