デヴィッド・フォスターヴァーヴのチェアマンになって初めて契約した新人……そんな予備知識があったからなのか、ダーティ・ループスの“Hit Me”を初めて聴いた時に、具体的な音はまったく違うもののエアプレイを思い浮かべたのだ。あるいはアヴェレージ・ホワイト・バンドタヴァレスリー・リトナービル・チャンプリンなど、80年前後にデヴィッドの関わってきた他の作品が思い浮かぶ箇所もあるが、ともかくデヴィッドを特別に惹き付ける何かをこのスウェーデンの若者たちが持っていたのは確かだろう。ベタになることを恐れない様子も新鮮なポップ・フィーリングは、フュージョンや産業ロックなど往年の洋楽に親しんできたリスナーにもぜひ味わってほしい。

 

▼デヴィッド・フォスターの関連作を紹介

左から、エアプレイの80年作『Airplay』(RCA)、シャリースの2010年作『Charice』(143/Reprise)、ルーベン・スタッダードのニュー・アルバム『Unconditional Love』(Verve

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 ▼参考作品

Earth, Wind & Fire Faces ARC/Columbia(1980)

“Lost In You”でホーン・アレンジを手掛けるのは、デヴィッド・フォスターやクインシー・ジョーンズの御用達でもあった説明不要の名匠ジェリー・ヘイ。デヴィッドとジェリー、TOTOの面々も大きく参与したEW&Fの本作は、この前後のクインシー仕事にも通じるという意味で、聴けば非常にダーティ・ループス的です。

 

 

OLE BORUD The Best VIllage Again(2013)

ポップスでもEDMでもUSやUK産のものとはまた異なる、衒いのないまっすぐさが北欧モノのいいところ。日本でも話題になったノルウェーの貴公子は、ゴスペルからメタルにまで至る下味の幅広さを爽快なAORフレイヴァーでアウトプット。原材料はダーティ・ループスに近そう?

 

 

AVICII True: Avicii By Avicii PRMD/Universal Sweden/ユニバーサル(2014)

リリースされたばかりのセルフ・リアレンジ・アルバム。ダーティ・ループスは繊細なブラシ使いも交えて“Wake Me Up”をジャズっぽいカントリーに仕立てているが、アヴィーチー本人の再解釈はフュージョンっぽくなっているのがおもしろい。

 

 

STEVIE WONDER In Square Circle Motown(1985)

ジョナの気持ち良いほど舞い上がるハイトーン・ヴォーカルは、ジョーイ・テンペスト(スウェーデンですね!)がスティーヴィーの節回しで歌っているかのよう! 御大がホール&オーツを意図的に模倣した本作前後の〈モダン・ポップ〉な佇まいもまたダーティ・ループス的。

 

 

TOTO Isolation Columbia(1984)

デヴィッド・フォスターとの仕事も多いスキルフルなミュージシャンたちによって結成されたバンド。生身のミュージシャンシップに当時の最先端テクノロジーも折り合わせた(良い意味での)産業ロック的な貪欲さはまさにダーティ・ループスさながら。これもジェリー・ヘイ絡みの一枚。

 

 

RED HOT CHILI PEPPERS Blood Sugar Sex Magik Warner Bros.(1991)

マーカス・ミラーなんかも直球で連想させるヘンリックのプレイですが、13歳でベースを始めてロックを聴きはじめてから憧れてきたのはレッチリのフリーだったそう。『Loopfied』でもド頭からイキイキとスラップしまくっているのが楽しい!

 

 

MAROON 5 It Won't Be Soon Before Long Octone/A&M(2007)

最新作での堂に入ったダンス要素の吸収ぶりにも同時代性は感じられるけど、ソウルファンクをシャープに取り込んだドゥービー感覚の共通ぶりという意味では、このセカンド・アルバムを挙げておきたい。アダムの歌唱もこの頃はスティーヴィー色が濃厚。

 

 

SNARKY PUPPY Family Dinner Volume 1 Ropeadope(2013)

ロックやソウルを高度な演奏で柔軟にミックスしたフュージョン作品という意味では、このブルックリンのバンドにもループファイな感覚がある。エンダンビら多様なシンガーとの絡みが聴きもの。