自分たちなりのパーティーを続けることで、多くの人に愛された彼ら。ここでSAYONARAだからこそ完成したのは、5人らしいドラマを湛えた〈ファースト・アルバム〉!!

 

 

それぞれの戦う場所

 サヨナラだけが人生だ――なんてことを言った映画監督がいたけれど、これほど素敵なサヨナラが言えるなら、それは最高の人生かもしれない。2015年2月28日、SAKEROCKが解散を発表した。ロック、ジャズ、ラウンジ、プログレ……どんなジャンルにも囚われない、何にも似ていないから〈ホニャララ〉としか言いようがないインスト・サウンドで孤高の道を歩き続けて15年。初CDのリリース直前に野村卓史(キーボード)が、2011年に田中馨(ベース)が脱退し、SAKEROCKは星野源(ギター/マリンバ)、浜野健太(トロンボーン)、伊藤大地(ドラムス)の3人になった。そこから4年間、オリジナル・アルバムは発表されず、それぞれのソロ・ワークが加速。その最中に星野が病に倒れたりと、バンド活動が途絶えてはいたが、個々の活躍がSAKEROCKを生かし続けているようにも思えた。そんななかでの解散宣言。バンドを代表して、リーダーの星野が解散を決断するまでの経緯を説明してくれた。

 「バンドとして活動していくなら、常に戦っていかなければいけないと思うんです。〈戦う〉っていうのは、新しい音楽を生み出したり、お客さんを増やしたり、いろんな戦い方があると思うんですけど、ここ数年、SAKEROCKとして戦うべき場所が見えなくなっていたんです。なぜかというと、3人編成になって動けずにいる間に、みんな個人で戦う場所ができてしまったから。それでずっと悩んでたんです」。

 星野は前作以降、2枚のソロ・アルバムを発表。役者として映画にも2本出演するなど多方面で活躍していて、彼はそんなソロ活動を「(SAKEROCKとは別に)戦う場所が生まれて、戦わざるをえなくなってきた」と振り返る。そして、それは在日ファンクを本格的に始動させた浜野や、ドラマーとして引っ張りだこになった伊藤とて同じこと。そんななかで、「ベスト(2014年に発表した『SAKEROCKの季節』)に新録曲“Emerald Music”を入れた時に、大地君とハマケン(浜野)に〈(SAKEROCKを)またやりたいんだ〉って言ったら、ハマケンに〈いまはやりたいことがあるから、ちょっと厳しいかもしれない〉って伝えられて。それがひとつの気持ちの区切りにもなりました。〈是が非でもSAKEROCK!〉ってことにはもうならないよな、でも仕方がないよなって」。

2014年のベスト・アルバム『SAKEROCKの季節』収録曲“Emerald Music”