くるくるとキャラクターを変化させる歌声と、トリッキーなバンド・アンサンブルで聴き手を翻弄するクインテットが、いよいよ全国へ!

 彼女たちの音楽を一聴すれば、音から滲んでいる才能を、強烈なまでの光を放つ可能性を、そして、おのずと自分のなかから沸き上がってくる興奮を感じずにはいられないだろう。冒頭からそこまで強く断言したくなるvivid undressは、kiila(ヴォーカル)、yu-ya(ギター)、syunn(ベース)、rio(キーボード)、ウツミエリ(ドラムス)の5人組バンド。2014年3月に結成されてからほどなくして、THE ORAL CIGARETTESやフレデリックなど、いまのロック・シーンで注目を集めている若手バンドを輩出した新人発掘育成プロジェクト〈MASH A&R〉のオーディションの〈マンスリーアーティスト〉に選出。また、同年7月にはデモ音源がタワーレコード渋谷店のバイヤーの目に止まり、同店限定CD『ゼロ』を発表。1店舗のみでのリリースながらプレス分をソールドアウトし、先日、その収録曲のなかから“パラレルワ”のMVが動画サイトにて公開されたばかりとなっている。

  そうした早耳なリスナーの間で話題となったvivid undressが、いよいよ初の全国流通盤となる『Unveil』をリリース。みずからを〈J-POP突然変異型ROCKクインテット〉と称する彼女たちだが、本作を聴いてまず印象に残るのは、〈別人か?〉と錯覚するほど、曲ごとにキャラクターが変化するkiilaの歌声だ。それに呼応するかの如く、6つの楽曲のサウンドも、kiila自身が綴った歌詞も、ヴァリエーション豊かな仕上がりとなっている。

vivid undress 『Unveil』 Zombie Magazine(2015)

 疾駆するバンド・アンサンブルと並走しながら〈痛い〉〈居たい〉と連呼することで〈君〉への思いを爆発させる“簡単な言葉”のようにエモーショナルな楽曲があったかと思えば、コール的な合いの手を織り交ぜつつ、猫の視点の物語をキュートに歌い上げる“人間なんだもん”のようにポップなナンバーも。さらには、4つ打ちの狭間にファンキーなグルーヴを挿入することでフィジカルに訴えかける“嘘月”や、ギターやキーボードが自由奔放に動き回るカオティックなパートが飛び出しながらも、ハッピーな手触りを残す“ワンダーランド”など、複雑に入り組んだ構成のアレンジを基調としたうえで、あくまでキャッチーに仕立ててくるところは、まさにバンドの異名の通りと言えるだろう。

 ……などと言葉を尽くしてみても、いまの彼女たちを説明しようとすると、“簡単な言葉”の歌詞から引用させてもらうならば〈簡単な言葉しか見つからない〉し、結局は冒頭に記したような状態になってしまう。vivid undressは、ここからすごいことになる――自然と誰かにそう伝えたくなる、脅威のニューカマーの登場だ。