カッコイイと思ったものがつまり、やりたい音楽! 心機一転の機会に掴んだ、自分だからこそのおもしろさ

 ビートルズで音楽の楽しさを知った小学生時代、演奏ごっこに明け暮れた10代、故郷の札幌から単身イギリスに渡って音楽修行を試みた結果、日本の音楽の素晴らしさにも気付いた20代前半、そして東京へ──。洋邦のロックの旨味をブレンドしながら、きめ細かなメロディーセンスとポップかつエンターテイメント性の高い楽曲を届けてきた笹木ヘンドリクス……改め、笹木勇一郎

笹木勇一郎 東京シティらんでぶー Colourful(2015)

 「〈ヘンドリクス〉でやってたことと思いきり変えたほうが良いのかとか、まあ、そのへんの考えが落ち着くまでしばらく時間がかかったんですけど、“""not""_alone”というR&Bとかヒップホップのエッセンスを採り込んだ曲を作ったことがポイントになって。もともと好きだったけどヘンドリクスではやったことがなかったタイプのものだったから、これはもうスパッと切り替えてやるんじゃなくて、新しいものを足していこうと。結局、カッコイイと思ったものが自分のやりたい音楽だし、それですべてが動きはじめるんだっていう」。

 そんな彼が、メジャー・デビューから1年を経て、ファースト・アルバム『東京シティらんでぶー』を届けてくれた。ここには、デビュー・シングルとなった“星のかけら”などヘンドリクス時代からある曲のほかに、前述の“""not""_alone”やいしわたり淳治との共作詞となった“レモンソーダの雨”、心機一転の決意表明と支えてくれた人たちへの感謝を込めた“一人の歌い手、たわいのない独り言”などネクスト・フェイズへの突入を強く感じさせる新曲たちが収められている。

「いしわたりさんがやられてたスーパーカーを聴いたのが中学生の頃で、そのとき〈なんかテンションがアガる! めちゃくちゃカッコイイ!〉って思ったんですね。で、いまは自分がそう思われなきゃいけない位置にいるようになったわけですけど、それこそ中学生にイイ歌だって思ってもらうにはどういう言葉を書いたら良いのかっていう、そういう話もいしわたりさんとできたし、確実に僕の視野を広げてくれましたね。あとは、今回のレコーディングで、自分が〈ファースト・テイク好き〉だっていうのを改めて思い知って、ほとんどの曲で初めのほうのテイクを選ばせてもらいました。バンドのテンションがひとつの方向に向かってるんだけど、思ってることがちょっとずつ違うところでぶつかり合っているほうが音楽としてはおもしろいと思うんですよね。なので今回は、僕の好きな音楽のおもしろさと、笹木勇一郎だから作品にできる音楽のおもしろさの両方をうまく詰め込むことができたなって思います」。