根っからの役者だからこそのロック・サウンド

 TVアニメ「けいおん!」の田井中律役などで声優として人気を集め、2013年末からアーティスト活動をスタートさせた佐藤聡美。これまでに、それぞれがTVアニメ「生徒会役員共*」「失われた未来を求めて」のエンディング/オープニング曲となった“ミライナイト”“Le jour”といったシングル群とミニ・アルバム『☆』をリリースし、さらに今年4月には赤坂BLITZでのワンマン・ライヴを成功させて順調なステップを踏んできた彼女から、初のフル・アルバム『Fanfare』が届けられた。

佐藤聡美 Fanfare スターチャイルド(2015)

 

 「赤坂BLITZで行われたライヴのテーマが〈冒険の旅〉だったので、アルバムもそれと繋がるものが良いなと思っていました。〈冒険〉や〈挑戦〉をテーマにアルバム制作したいね、という話をスタッフ陣として、曲作りを依頼する段階でその気持ちを伝えてもらって共有しています」という本作には、メイン・プロデューサーのエンドウ.GEEK)をはじめ、SHAKALABBITSRhythmic Toy World内田直孝楠瀬タクヤ(元Hysteric Blue)といった作家陣が参加。「試聴して気になったものは何でも聴きますね。アニソンもJ-Popも、ロックとかクラシックとかもいろいろ。これといって特別好きなジャンルがあるわけではないのですが、バンド・サウンドはよく聴いてる気がします。なので、自分が歌う曲は自然とそういったものが多いですね」という彼女の志向性や、ポジティヴでキュートなキャラクターもたっぷり反映された、ロッキッシュ&ポップな作品に仕上がっている。その代表が、楠瀬が手掛けたリード・トラック“紙ヒコーキ舞うこの場所で”だ。

 「“紙ヒコーキ舞うこの場所で”は、聴いている人の背中を優しく押してくれるような応援歌。紙ヒコーキと一緒に〈がんばれ〉という思いがみんなの元に届けばいいなと思いながらレコーディングしました」。

 加えて、「SHAKALABBITSワールド全開の爽やかな曲ですよね! 過去の自分といまの自分が交差するようなイメージだったり、デビュー曲の“ミライナイト”を頭のなかに思い描きながら歌いました。レコーディングにはUKIさんとMAHさんが来てくださり、歌い方の指導をしてくださったのでとても貴重な経験になりました」といったエピソードを持つアッパー・チューン“君のとこまで”をはじめ、今作は、デビューから1年半の間における彼女の表現力の成長も強く感じさせるものに。そうした変化は、自身も実感しているようだ。

 「デビューしたときに〈アーテイストであるという意識を持ってほしい〉と言われてここまでやってきたのですが、レコーディングで自分が実際にやってること、考えてること、イメージしてることを振り返ってみると、〈私って根っからの役者なんだな〉って思って。声優という土台があるからできる表現ってあって、そういうものをもっと大切にして歌っていこうって思ったら肩の力が抜けたんですけど、それが私のなかの変化かなと思います。最初の頃より自由度が高くなっている気がするなあ」。

 また、“I am a cloudy girl”では、みずから作詞にも挑戦。低気圧を吹き飛ばしてしまうようなチアフルなリリックには、ファンに対する思いも含まれているという。

 「作詞は難しかったです……産みの苦しみを感じました。仕事をしているとき以外はずっと歌詞のことが頭を占めていたので不思議な感覚でしたね。テーマは〈曇り女〉。イヴェントの日は8割曇っていて、よくファンの方から〈今日も安定の曇り空ですね〉と声をかけられるので、それをテーマにしたら皆さんにとって馴染みのあるものになるかなと思ったんです。なので、私のイヴェントがある日は、会場に向かいながらこの曲を聴いてくれたら嬉しいですね(笑)」。

 

【参考動画】佐藤聡美の2014年のシングル“Le jour”

 

【参考動画】佐藤聡美の2014年のシングル“ミライナイト”

 

 7月から9月にかけては、セカンド・ライヴ・ツアーも開催。「歌うたびにできることや、やりたいことが増えていくのがとても楽しいです。アニメ系はもちろんですが、それ以外のフェスにも積極的に出てみたいですね」と、アーティストとしてのモチベーションを上げている佐藤聡美。彼女はこの『Fanfare』をきっかけにして、活動のフィールドをさらに広げることになりそうだ。