多様な歌い手とのタッグで現出する新世界
「進撃の巨人」「アルドノア・ゼロ」といった人気アニメのみならず、映画/TVドラマ/ゲームなど多方面で活躍中の劇伴作家・澤野弘之が、ヴォーカル曲をメインに据えて2014年に立ち上げたプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]。その第1弾となったAimerとのコラボ盤『UnChild』では、特有のハスキー・ヴォイスが「機動戦士ガンダムUC」の主題歌を筆頭とした重厚なオルタナ・チューンと出会うきっかけを作り、イツエの瑞葵ことmizukiを歌い手に抜擢した第2~3弾のシングル『A/Z|aLIEz』“&Z”では、本隊と比較して、彼女の歌により直情的なエモーションを誘致した彼が、第4弾作品となる両A面シングル『X.U. |scaPEGoat』をリリースした。
荒廃した世界を舞台に人間と吸血鬼の戦いが描かれる「終わりのセラフ」のオープニング/エンディングを飾る本作は、それぞれが同アニメの2人の主役をイメージしたものだという。吸血鬼の殲滅部隊に属する百夜優一郎を投影した前者は、3か国語を操る20歳の女性新人ヴォーカリスト、Gemieの艶やかな激唱をスピード感溢れるビートに乗せたエレクトロック。そして後者は、元は人間だったものの、瀕死の怪我を負った際に敵の血を与えられたことで吸血鬼と化した百夜ミカエラの姿が重なる、スケール感のあるロック・バラード。同曲ではCrystal Lake、NOISEMAKER、wrong cityという次世代ラウド・シーンの注目株らと発表したスプリット盤『REDLINE RIOT!!』も記憶に新しいSurvive Said The Prophetのフロントマン・Yoshが起用され、センシティヴな絶唱で拭い去ることのできない哀愁を体現している。
改めて4作品を振り返ってみて思うのは、才能あるニューカマーを的確にフックアップする澤野の慧眼だ。公開される場/メディアに合わせた音でドラマティックな物語を紡ぐ楽曲の完成度はもちろん、SawanoHiroyuki[nZk]が毎回フレッシュな感動をもたらす理由は、そこにもあるのだろう。