全国のタワーレコードのスタッフが、己の〈耳〉と〈直感〉だけを基準に世間で話題になる前のアーティストの作品をピックアップし、全店的なプッシュへと繋げる企画〈タワレコメン〉。これまで、相対性理論神聖かまってちゃんクリープハイプceroKANA-BOON、洋楽ではストライプスチャーチズといった現行シーンの最前線で活躍するアクトをいち早く発掘しており、現在は月1回のペースでオススメ・アイテムを紹介しています。Mikikiでは、そんなタワレコメンの選定会議に潜入し、作品の魅力を視聴コンテンツと共にお届け! 今回は7月度の洋楽編です!!

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タワーレコードの本社にて行われるタワレコメンの会議。今回も音楽通のスタッフたちが〈これぞ!〉というオススメ作品を持ち寄り、タワレコメンの狭き門を通過するための熱いプレゼンを繰り広げました。何百タイトルという新譜のなかから候補作に挙がったのは……!?

夏の陽光を想わせるシャイニーなシューゲイズ・ポップで会議のスタートを明るく彩ったのは、スウェーデン、オーストラリア、UKの出身の男女4人によるロンドン拠点の多国籍バンド、キッド・ウェイヴの初アルバム『Wonderlust』。トイテンプルズを輩出したヘヴンリーから届けられる本作は、ダヴズらとの仕事で知られるダン・オースティンがプロデュースを担当。シューゲイザー的な湿り気をオルタナ成分がカラッと中和したいい塩梅のサウンドに加え、グランジ風衣装で化粧っ気もないのに美女なシンガー、リー・エメリーの魅力でインディー男子(女子もね!)のハートを掴むこと必至の注目盤です。

 

続いて紹介されたのは、ケンドリック・ラマースクールボーイQJ・コールらとも絡むウィリー・Bデジ・フォニックス)が全面バックアップするLAのシンガー、ミッキー・テイラーの日本デビュー盤『HiiGrade 2.0』。ジェネイ・アイコ以降のフローティングな歌唱マナーを抑えつつ、ビート・コンシャスなトラックも平然と乗りこなす柔軟さが只者じゃない! 話題となったエイサップ・ロッキー“Wassup”カヴァーのほか、日本盤にはBudaMunkによるリミックスも収録されているので、昨今のトガったヒップホップ/ビート・シーンに興味のあるリスナーはマストの一枚です。

 

音を聴いた瞬間、4月のタワレコメンにも選ばれたジェイムズ・ベイを抑えてBBC〈Sound Of 2015〉の1位に輝いた(ちなみに昨年度はサム・スミス!)という経歴に誰もが納得したのが、トルコ発の3ピース・バンド、イヤーズ&イヤーズの初作『Communion』。ディスクロージャーゼッドマデオンからパッション・ピットあたりまで、ダンス/エレクトロ・ポップ・シーンの最前線にいるアーティストたちの旨味をギュッと凝縮したようなサウンドは反則の一言。この夏、踊れる作品を探している人は外せないアルバムですよ!

 

ここ数か月のタワレコメンの選考にも名を連ねたブリーアクアドールズエックス・ヘックスなど、カリスマ的な魅力を持った女性ミュージシャンがフロントに立つロック・バンドも多い昨今のシーン。そんな流れを汲む注目のバンドが、紅一点のエリー・ロウゼル擁する北ロンドン発の4人組=ウルフ・アリスで、彼女たちのファースト・アルバム『My Love Is Cool』がとにかくクール! 溌剌とした“Bros”から『In Utero』期のニルヴァーナを想わせる“Moaning Lisa Smile”(日本盤とUS盤に収録)まで、あの手この手で楽しませてくれます。しかも今年の〈SUMMER SONIC〉で来日!

 

ジェフ・バックリーに影響されたという繊細な歌声と、ミューズコールドプレイ路線の王道UKロックならではのスケール感を併せ持った新人らしからぬ音でスタッフを魅了したのは、こちらもサマソニ出演が決まっている大型新人バンド、ナッシング・バット・シーヴス。一筋縄ではいかない懐の深さが見え隠れする彼らは、ロイヤル・ブラッドデフトーンズあたりに通じる〈剛〉なギター・アレンジも得意としており、今秋にリリース予定の初フル・アルバムで世界的ブレイクもありえる! いまのうちにタワーレコード限定EP『Ban All The Music EP』で押さえておきましょう~。

 

「タワレコメンでハードな音も紹介したいんです!」という魂のプレゼンが印象的だったのは、前述のロイヤル・ブラッドボッツらと同じ2ピース編成で激しくロックするUKの鉄砲玉デュオ、スレイヴスのファースト・アルバム『Are You Satisfied?』。パンキッシュで悪ガキなノリはセックス・ピストルズからUKのお家芸とは言えるものの、むしろ初期のビースティー・ボーイズに近い感覚のストリート臭も強烈で、よくわからないけどヤバそうな雰囲気だけは出まくりです。アルバムにも収められる破壊的なパーティー・チューン“Cheer Up London”のパンチ力ったら……。なお、彼らもサマソニ出演が決定済み。すごいライヴを見せてくれそう!

 

そんな〈いま〉のブリテッシュなノリがスレイヴスとも共通しているは、リバティーンズ(祝!サード・アルバム発売)やカサビアン並の不敵なロックにスタッフも思わず〈おおっ!〉と声を上げたウェールズ出身の3ピース・バンド、トランポリンの本邦デビュー作となる日本独自企画盤『Artwork Of Youth』。というか声があまりにもリアム・ギャラガーすぎる(笑)! オアシス・フォロワーは数あれど、ここまで歌い方が似ているグループもいなかったのでは? 90年代以降のUKロック・バンドのエッセンスを結晶化したようなサウンドは、この系統の音が好きな人はハマったら抜け出せないかも?

 

なぜか最後はブラック・ミュージック系の音が紹介されるケースが多いタワレコメン会議ですが、今回トリを飾ったのも、ブリストルから現れた12人編成のアフロ・ファンク・バンド、ノー・ゴー・ストップのアルバム『Agbara Orin』。「アフロ・ビートを聴いたことがない人にもアピールできるインパクト!」と推薦するスタッフの言葉にも納得のサウンドは、フェラ・クティトニー・アレンらのレジェンドたちが鳴らした生命力溢れるアフロ・ビートを継承するホンモノです。ハスキーな喉でパワフルに歌う紅一点、マリー・リスター嬢の存在感も圧倒的!

 

以上、普段に比べてUKロック・シーンからの刺客が多かった気がしつつも、どれも魅力的な作品がラインナップされた今回のタワレコメン会議。悩んだスタッフたちが多数決で選んだのは……!?