前回のメンバー全員インタヴューから約1年を経て、バンドを取り巻く状況が様変わりしたPAELLAS。11月21日(土)の〈Mikiki Pop Festival '15〉への出演も決定している彼らは現在Littleize recordsに所属し、来る作品リリースに向けて作業を進める一方、サンプラーを駆使するお茶目な新メンバーとサポート・ギタリストを迎えての5人編成で行うライヴは一気にグルーヴ感を増し、バンドとしての強度が相当アップしている。5月にYOUR ROMANCEを迎えた自主企画ライヴで見せた姿は、静と動のコントラストがはっきりした聴き応え&見応えのあるステージで、これまでになく興奮したものだ。そんな順調な前進を見せている彼らに、〈最近どう?〉な2度目の全員インタヴューを敢行! 東京で本格的に活動を始めて1年半が経ち、彼らの心に移ろうあれこれを訊いてみた。
――お久しぶりのインタヴューで、前回(昨年秋)からだいぶ経って、いろいろバンドも様変わりしているようなのでこのあたりでお話を訊きたいなと思います。そして新しいメンバーの方が……。
マサダ(サンプラー)「中野区に住んでおりますマサダと申します。趣味は……」
――あっ、趣味はひとまず大丈夫です(笑)。
Tatsuya Matsumoto(ヴォーカル)「マサダくんは最初お客さんとしてライヴを観に来てたんですよ。あと、この人のイヴェント出たりして」
――そういうオーガナイズ的なこともされていた、と。
Masaharu Kanabishi(ベース)「そう、やってる」
Matsumoto「それで仲良くなっていつの間にか(バンドに)入った(笑)」
Kanabishi「いつの間にか入った、はアレだけど(笑)」
――そこは面倒臭がらないでください(笑)。ちなみにマサダさんのパートは肩書的にはどう言えばいいんですか?
マサダ「サンプラー」
Kanabishi「シンセサイザーというのではなく、打楽器的な音も出すし、シンセの音も出す担当というか。シンセ担当が抜けた時にどうしよっかと考えてたのは、シンセサイザーの上手い人を入れるというよりかはもっと柔軟な立ち位置で、シンセの音も出せて他の音も補える人がいたらいいなと。その結論が、サンプラーに音を入れて叩くという役割の人を入れるっていうことだった」
Matsumoto「音を作ることやプログラミングは全部ビッシー(Kanabishi)がやるので、あとは叩いてもらう。だから条件的には僕らの音楽を知ってて、なおかつ好きであること、それからリズム感。それから、そういうポジションでも楽しめる人っていうか、それを本気のミュージシャンに頼んじゃうと消化不良になるから。曲によっては使わない場合もあるので」
Kanabishi「ただ踊ってるだけの曲とか(笑)」
Matsumoto「そういうことができる人を探してて、この人に出会った感じです」
――マサダさんは、これまでにバンド経験はあるんですか?
マサダ「そうですね、昔は自分でバンドをやってて、曲作ったりとかしていました。僕が上京したのはPAELLASより半年ぐらい前なんですけど、東京に出てきてからPAELLASを知って音源を買って、彼らが上京してきたタイミングでライヴを観に行ったんです。そこからよく観に行くようになってメンバーと遊ぶようになり、いつの間にかバンドの手伝いで映像を撮ったりとかするようになった」
Kanabishi「そう、最初はいろいろ手伝いをしてくれていて」
マサダ「手伝いをするようになったら、次は〈メンバーとしてやってみないか?〉という話になって。そもそも僕は日本で好きなバンドは多くないんですけど、そんななかでもPAELLASは好きだし、PAELLASだったらおもしろいことができるかなと思ったので〈いいよ〉と。それで〈何やるの?〉となったんですけど、その2週間後くらいにライヴで(笑)」
Kanabishi「昨年の大みそかに新宿MARZで演ったのが最初」
Matsumoto「正直マサダくんは、(スキルの)テストも何もせずにキャラだけで選んだんですよ」
マサダ「実は他にも女の子2人、候補がいたんです」
Matsumoto「メンバー募集をかけたら来てくれて」
マサダ「(その2人以外の)サブ・メンバーとして俺を入れようって話になったんですけど、最初のライヴの日程が合うのが俺しかいなくて、結局俺だけが演ることに」
Matsumoto「こまっちゃん(Takahiro Komatsu/ドラムス)はマサダくんと仲がいいから、〈マサダくん、マジでリズム感ないからやめたほうがいい〉って言ってて」
――そうなんですか(笑)?
マサダ「最初は戸惑いましたね(笑)」
Kanabishi「ハハハハハ(笑)、そのレヴェルちゃうやろ」
マサダ「スティックを握ったこともないそんな僕が……最初は戸惑いましたね」
Kanabishi「実際に、他候補だった女の子2人と比べて、マサダくんがいちばん下手でした。間違いなく」
――でもマサダさんのキャラクターを買って、彼に入ってもらおうと。
マサダ「でもやっぱり最初は迷いましたよ。立ち位置で言ったら(笑)」
Kanabishi「普通のバンドにあるような立ち位置じゃないから、それをやったこともない人にいきなり〈2週間後にライヴだ〉って覚えてもらって、ほぼミスらずに叩けただけでもすごいって思った」
――え! そんな状況だったのにノー・ミスで!?
Kanabishi「スタジオに入って練習したんですけどまともにできなかったから、パッドを持って帰って練習してきてもらって、当日の楽屋でも2人で合わせながら、ここはこう叩く、ここはこう叩く、って指導しながらやって」
――それでできちゃったと。
Kanabishi「できちゃった。意外と本番には強いなと」
――実はセンスがあったんですね!
Matsumoto「PAELLASの音楽が好きっていうのもあったと思う。たぶんちゃんと練習してきたんですよ」
――結構マジメ。
Kanabishi「それから繰り返していくうちにどんどんグルーヴが合っていったんです。もともと人としてのグルーヴも僕らと合っていたから、それが良かったんだと」
マサダ「最初は黒子的な存在でいたほうがいいのかなって思ったんですけど、スタジオでの練習やライヴを重ねるうちに、ここにきて自由を許されるようになってきたんです。自分の見た目もそうだし、出したい音があったら提案してくれていいよって言われるようになった」
Matsumoto「マサダくんには最初から好きにやってほしかった。アーティスト写真を撮る時なんかも、この人だけ自由」
――確かに異彩を放ってますよね。
Matsumoto「そういうキャラの人を求めていたので」
――PAELLASはわりとクールなイメージで、メンバーはそのイメージのままなんだけど、なかにポツンとマサダさんのような人がいると目を惹きますよね。
Kanabishi「俺らも実際に話せばそんなクールなキャラではないけど、そういうイメージを崩してくれる人間が入るといいかなって」
――サポートではなく、ちゃんとメンバーなんですよね?
Kanabishi「メンバーだよね、完全に」
Matsumoto「俺はそう思ってる」
マサダ「最初は準社員のつもりだったんですけどね」
Kanabishi「いまマサダくんがいないと成り立たない曲がいっぱいあるから」
Matsumoto「アーティスト写真には入っていないんですけど、シモナカくんというサポートのギタリストもいて。彼はDYGLというバンドをやってるんですけど、アナン(Satoshi Anan/ギター)と違うタイプのギターが欲しかったのでサポートとして入ってもらいました」
――マサダさんに加えて彼も入ったことでライヴの良さが格段にアップしましたよね。単純に音の厚みという点でもそうですし、何より熱量が以前とは全然違う!
Anan「個人的には、もうひとつ別でバンド(never young beach)を始めたのが大きい」
Matsumoto「ちょうどシモナカが入ったタイミングとアナンが自信を取り戻したタイミングが上手い具合に重なって、良くなった」
――自信を失ってたんですか?
Anan「自信がなかったっていうか、ちょっと欝な時期があって。バイトもめっちゃ入ってて、バンドも忙しくなったから」
Matsumoto「いつもライヴを観に来てくれる人に〈アナンくん今日どうしたの? 調子悪いの?〉って心配されたりして」
――あらあら、それはいかんですね。
Anan「結構キャパがオーヴァーしちゃって、それでバンドにもあんまり身が入らない時期があった。でもその後にバイトを辞めて音楽に専念するようになったから、気持ちを取り戻せた」
Matsumoto「引き出しがめっちゃ増えたよな」
Anan「引き出し増えた。もうひとつバンドをやることで、PAELLASとは違うインプットとアウトプットがあるし、スタジオも多く入るから自然とギターを触る時間が増えたので」
Matsumoto「全然変わったよな。いままではアナンらしいギター(・プレイ)はあるけど、それ以外は自分で弾いていても自分じゃないって思いながら弾いてる感じやった。でもいまは引き出しが結構増えて、自分のものにしてるなと思う」
Anan「自分の演奏ひとつで主張できるようになったっていうか」
――いまはnever young beachと上手く両立して、良い相乗効果が生まれてるんですね。
Anan「いまのところはギリギリ両立できてる」
Kanabishi「スタジオも入れなくなったらアレだけど、まだそこまでにはなってない。(PAELLASとしても)単純に〈ネバヤンのギターの人がいるバンドなら、ちょっとライヴ観て見よう〉みたいな感じの人がいてもいいと思うし」