INTERVIEW

KOWICHI、続投のZOTにRYUSEIら新たな制作陣迎えてギャル・チューンに留まらない〈女性〉テーマにした新作を語る

KOWICHI 『SheCRET』 Pt.1

いまいちばんイケてるラッパーは誰だ!? その答えは秘密だとしても、毎夜を賑わせるフロア・キラーは、お前の彼女のボーイフレンドは、たぶんこういう奴に違いない……

 

女の子ばっか見てたから(笑)

 2MCのグループ・enmakuとして2000年代後半にデビューし、2012年にソロへ転じたKOWICHI。以降USメインストリーム寄りの作風へと大きく舵を切ってリリースを活発化させると共に、昨年のセカンド・ソロ・アルバム『The DINER』が評価され、なかでもDJ TY-KOHpukkeyを交えた“BOYFRIEND #2”と、KOHH & YOUNG HASTLEを迎えたそのリミックスがスマッシュ・ヒットに。続く“LYNE”も好評で迎えられると、年を跨いだ今年初頭にはTY-KOHとのミックスCD『STONER LIFE THE MIXTAPE』をリリース。さらに、夏を前後して発表となったDABO & DJ KEN WATANABEの“恋はAT”や、AK-69“A Hundred Bottles(Remix)”など直近の客演仕事も、川崎をレップする彼のポジションにさらなるお墨付きを与えたといえよう。

【参考動画】KOWICHIの2014年作『The DINER』収録曲“BOYFRIEND #2”

 

 そんな順調な活動にも押される形で、彼がサード・アルバム『SheCRET』を完成させた。2曲を手掛けるRYUSEIBCDMGMOITO、そしてJIGG、と前作から一新された制作陣にあって唯一続投し、今回も5曲で腕をふるっているZOT on the WAVEは、TY-KOHと並んでもはや彼に欠かせぬ存在だ。もともとシンガーの顔を持ち、前作を機にプロデューサーとして大きく名を上げたZOTは、KOWICHIの現在のスタイルや曲作りにも大きな影響を与えているという。

 「普段は貰ったデモとかあんま聴かないんですけど、誰かの紹介でたまたま聴いたらすげえよくて連絡して。それで初めて1曲やった時に、年下だけど遠慮せずにディレクションしてきて、こいつとやったらヤバいことになると思った。いまは外仕事でもメロディーを手伝ってほしいみたいな話を振られた時に、まずZOTに〈これどういう感じで行ったらカッコいいかな?〉みたいな相談もするぐらい、俺にとって必要不可欠な存在ですね」。 

KOWICHI SheCRET Pヴァイン(2015)

 タイトルに織り込んだ〈She〉が匂わせる通り、今回のアルバムは女性をトピックとした曲が中心。「“BOYFRIEND #2”を出してからギャル・チューンのオファーがメチャクチャ増えた」というから、今回の内容も一見そうした声に応えたものに見えるが、「『STONER LIFE THE MIXTAPE』を出してからずっとツアーを回ってて、そこで女の子ばっか見てたから、それが影響してるっすかね」と彼は笑う。勢いに満ちた前作と好対照なアルバムのムードと合わせて、そうしたトピックはむしろ今回の彼のラップ・スタイルが呼び寄せたと言ったほうがいいのかもしれない。

 「今回はレイドバックした気持ちいい感じのビートで気持ちいい感じに歌いたかったっていうのが一番デカいかもしれないですね。スピットしたラップが少ないのも、こんなフロウを乗っけたらこうなるなっていうところありきで選んだトラックが多いからだし、実際メロをつけてないラップのヴァースもそんなになくて、『The DINER』は全体のバランスを凄く考えたんですけど、今回は考えずにホントにやりたいことをやり倒した感じ」。

 

悪ぶってないし、カッコつけてない

 「地元が近くて、それこそラップする前からよく知ってる」という弟分のT-PABLOW2WIN)と共に遊びじゃない相手への複雑な気持ちを曲にした“No,No,No”をはじめ、楽曲のテーマには男の本音(“Real Talk”)あり、気持ちの探り合い(“おもわせぶり”)あり。あるいはMARIASIMI LAB)を迎えて派手で絵になる地元の女を歌った“GANGSTA BITCH”もあり、性別を越えて友情で繋がる女性(“Best Friend”)や自身の母親(“Mother”)に寄せた曲もあり……一口に〈女性〉がネタといっても、それを介した内容はいわゆる〈ギャル・チューン〉の範疇にとどまらないもの。〈シークレット〉というアルバム・タイトルが、自分の経験、見たこと、聞いたことを元にしたその内容を指す。 

 「歌詞はけっこう攻めてると思ってるんですよ(笑)。普段思ってても口に出さないこととか、直接本人には言わない秘密とか。やっぱ経験してるのとしてな いのとじゃリリックが全然違ってきて、例えばそれこそ“BOYFRIEND #2”も、想像したら〈2番目の彼氏〉とかすごい嫌だなって思いますよね。でも、実際なってみるとそうでもなかったり(笑)。それはホントに経験してない と書けないし、人に刺さるリリックにはならないと思うんです」。

 そうした本作にあって“10年後”は、周囲の雑音に一言入れた“余計なお世話”などと共に、アルバムの別の面を飾る一曲。これは、名古屋のシーンを長きに渡って引っ張ったMr.OZの名曲“The letter send on later”にインスパイアされたものだという。ここには未来の自分に不安を隠さぬKOWICHIの姿が映っている。

 「俺の音楽をそんなに知らない人とかには〈悪そう〉とか〈チャラそう〉ってよく言われるんですけど、俺はそんなに悪ぶってないし、カッコつけてない。“10年後”ではダサい自分、弱い部分も出したかったんですよね、ホントに思ってることだし」。

【参考動画】Mr.OZの2008年作『The Wizard Of…』収録曲“The letter send on later”

 

 もっとも、いまの彼にはそんな不安をパワーに代えるヴァイタリティーがある。今後も続くWESTAHOLICからのリリース活動の傍ら、地元で日々リンクするDJ TY-KOH、YOUNG HASTLEとのレーベル=FLY BOY設立も然り、11月に東京で予定するHASTLEとのツーマン然り。シーンの最前線を視界に捉え、彼の音楽は今日もやまない。 

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