貪欲に新しい才能を探しつつ常に新しいサウンドを追求する重鎮が4作目を投下。多彩な顔ぶれがパッションを燃やして生まれた、真にオリジナルなスタイルとは?

新しい才能との出会い

 2008年の第1弾からだいたい4年おきにリリースを重ね、ライフワーク化しているDJ PMXのリーダー・アルバム最新弾『THE ORIGINAL IV』が完成した。前作にあたる『THE ORIGINAL III』のリリースは2017年。そこではニュー・ウェストなサウンドへのアプローチと、シーンの移り変わりを受けたKANDYTOWNの面々やGADORO、Staxx T(CREAM)、t-Ace、AYA a.k.a. PANDAといった新しい顔ぶれの参加が注目されたが、その前の2015年くらいから、旧態依然で新陳代謝に乏しい日本のウェストコースト・シーンには痺れを切らしていたという。

DJ PMX 『THE ORIGINAL IV』 DBL MUSIC/ユニバーサル(2020)

 「その頃からUSのウェストコーストでもYGとかマスタードとか、若い世代がどんどん出てきて、一気に流れが変わった。それで『THE ORIGINAL III』もラチェットとかハイフィーとか、新しいベイエリアの音をめざして作ったんです。若手を中心に起用して新しいビートでやるっていう主旨は今回も変わっていませんね。昔のままでやり続ける美学もあるけど、やらなかった後悔のほうがデカくなるだろうと思って」。

 前作リリース後、自身のレーベルであるDBL MUSICを本格始動させ、DIABLOや10代のシンガーであるKOHKIら若手を積極的にプロデュース。さらに新しい才能との出会いを求め、2018年からは全国のフリースタイルの猛者が集まるMCバトル大会〈UMB〉の決勝にバトルDJとして毎年参加。ABEMAの人気ヒップホップ番組「ラップスタア誕生!」や「SMASH HIT」にもビート提供者として携わった。結果、「ラップスタア誕生!」の優勝者であるDaiaと¥ELLOW BUCKSは本作に参加。「SMASH HIT」から生まれたKEN THE 390との“Be Natural”も収録されている。

 「若いアーティストと新しいことをやりたいし、新しい才能と出会えることは凄く嬉しいです。〈UMB〉も『ラップスタア誕生!』も若手のやる気がひしひしと感じられる場所で、熱量も意気込みも違うし、勝ち上がろうっていう気持ちが全然違う。そこに物凄く刺激を受けます。逆に、KANDYTOWNの連中はそういう場に出ないけど、凄くネタを掘りまくっていたり、熱さの種類が違っても音楽へのパッションを凄く感じるんです。いまのアーティストは良い意味で我が強いから、なかなか〈うん〉と言わない奴もいますけど、いつかは振り向かせたい(笑)。それもひとつの楽しみです」。

 新作からの第1弾シングルとなる先行カット“House Party”には、常連のKOWICHIに加えてシリーズ初参加のJAGGLAをフィーチャー。PMXが「東西のヒーロー」と呼ぶ両者の初コラボを実現させた。

 「コロナ禍でパーティーっていう状況でもないと思うんだけど、自分の一連の流れからするとパーティー曲とクルージング曲は欲しいなと。そう考えたときにクラブのパーティーっぽいノリは“Party Tonight”があるから、こっちは〈House Party〉だと。そしたら2人が載せ難い内容の歌詞を書いてきて(笑)。でも、そこはアーティストの主張だから尊重しました。メーカーからピー音入るかもよ、と2人には伝えてたんだけど大丈夫だったんで、いい意味で時代は変わったなって(笑)」。

 第2弾シングル“Scenario”には、シリーズ参加済みのDABOとHI-Dを招き、そこに先述の新顔¥ELLOW BUCKSをプラス。DABOと¥ELLOW BUCKSがそれぞれに恋の駆け引きのシナリオを綴っている。

 「ビートを聴かせる前の段階で、¥ELLOW BUCKSにまず連絡して、誰とやりたいか尋ねたんです。そしたら〈レジェンドとやりたい〉と返ってきて。彼はZeebraと“Do It”をやってたから、じゃあ次はDABOくんだなって。一方で、HI-Dにはビートを聴かせてフックのメロディーとラフの歌詞を先に録ってもらっていたんです。それを聴いた時に、自分の“Miss Luxury”(08年)の流れにあるラヴソングが欲しかったのもあって、これはわかりやすくラヴソングにしようと。DABOくんは奥さんと出会ったエピソード、¥ELLOW BUCKSはイケイケなナンパな男みたいな内容で書いてくれて、イメージ通りのものが出来ました」。