COLUMN

ウィントン・マルサリスとリンカーン・センター・ジャズ・オーケストラが新レーベル設立、伝説のキューバ公演をCD化

Photo by Frank Stewart for Jazz at Lincoln Center

 

さらなる祝祭の夜を求めて

 2010年10月、およそ8年間にも及ぶ気の遠くなるような外交的折衝をへて、ついに近くて遠い異国の地キューバのハバナに降り立ったウィントン・マルサリス(tp)率いるリンカーン・センター・ジャズ・オーケストラは、完売したチケットを握りしめたキューバの群衆たちが待つホールで、キューバ人の音楽家たちをもステージに招き入れ、群衆たちを熱狂させた。ジャズとキューバ音楽が混じり合った遠い昔の美しき時代をさかのぼり、この数年後に現実のものとなる歴史的な快挙を予見するかのように、音楽は国境を越えることを証明して見せた。

JAZZ AT LINCOLN CENTER ORCHESTRA,WYNTON MARSALIS Live In Cuba Blue Engine(2015)

 2015年7月ウィントン・マルサリスとリンカーンセンター・ジャズ・オーケストラは苦難の時代を経て、再びソニーと手を組み、新レーベル、ブルー・エンジン・レコードを立ち上げることを発表した。近年もその精力的な活動に衰えを見せることはなく、ウェイン・ショーター(ts)からカート・ローゼンウィンケル(g)まで様々なゲストたちを迎えた企画公演を実現し、インターネットを通じたコンサートの世界同時配信やさまざまな教育活動まで、音楽家たちの世代交代に際しても、その鮮度と質を落とすことなく、ウィントンのもとグローバルに活動を続けてきた。そして新レーベルからの第1作が、伝説となった彼らの貴重なキューバ公演のドキュメントとなる。今後、彼らの膨大なアーカイヴからの録音群が順次リリースされていく予定だ。

 遠い昔に混じり合ったジャズとキューバ音楽は、それぞれの音楽に魅せられた数多くの信奉者たちを生み出し、ゆっくりと静かに熟成され発展し、シーンの未来に多大なる発展をもたらしてきた。あるものは国を捨て、家族を残し亡命し、あるものはさらなる異国の地に赴き、遠い夜明けを夢見て活動を続けた。ジャズという名のパスポートを手にした音楽家たちに国境などはなく、世界中どこの地でも彼らは共鳴し、祝祭を上げることができるのである。

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