2015年の作品を振り返るディスクガイド(前編)
旧知の仲である冨田恵一と2人で作り上げた実り豊かな最新作。最新鋭のジャズ・サウンドにアプローチした刺激性の高いトラックとじっくり向かい合い、いつもより躍動感に満ちた歌声を紡ぎ出す彼女がやたらカッコイイ。UKソウル色が濃かったデビュー当初の彼女が好きなリスナーもイチコロのはず。 *桑原
〈大人のラヴソング〉をテーマにした洋楽カヴァー集。作者のジェシー・ハリスと小粋なデュエットを聴かせるノラ・ジョーンズの“ドント・ノウ・ホワイ”など、清々しく凛としていて、そのうえあったかい歌声を堪能できる一枚だ。近年の諸作品と同様に、快適なリラックス空間を与えてくれる。 *桑原
猥雑なビートを追い求めてきたシンガー・ソングライター/トラックメイカーが、80sブギーなモードとナチュラルに呼応してみせた逸品。ブラコン由来のファンクネスとメロウネスを纏いながら、モダンな視点でクールにまとめ上げている。官能性とエレガンスを両立させているという意味で、真に大人な一枚。 *澤田

素敵な大人、といって思い出すのは嶋野百恵の歌のような雰囲気を纏った女性のことです。音盤上の好カップルとなるLIBROと名前を並べた本作での振る舞いは、時に思わせぶりな含みもあって、時に奔放で、それでいて品格を脱ぎ捨てないもの。大人の音の紡ぐ言葉少なな情緒は、男にも、女にも。 *出嶌
全作曲をSTUDIO APARTMENTの阿部登と共同で担い、エレクトロ・ポップにフォーカスした最新作。これまでも作品の端々で覗かせてきた洒脱なポップセンスをクールなビートの上でストレートに爆発させている。随所でドキッとさせる言葉が立ち現れるのも印象的で、いろんな意味で大人な一枚だ。 *澤田
2012年の『CITY DIVE』以降、80sテイストのアーバン感覚をモダンなエレクトロニック・サウンドで表現し続けている彼女。本作は、ホテルを舞台にしたミステリアスな物語仕立てになっており、丁寧に紡がれたフィクショナルな世界にどっぷりと没入しつつ、優雅で贅沢なひとときを堪能できる。 *澤田
Erika.名義での初作『unJour』で流線形や松原みき、大貫妙子らを取り上げ、軽やかな着こなしを見せていた彼女。この新作でもグルーヴィーな“Champagne”に甘くパッションを火照らせ、ナチュラルな“予感”に優美な笑顔を弾けさせています。ジャズ・ファンクの洗練に咲く“常花”の熱情は、もう大人。 *出嶌
EGO-WRAPPIN'のヴォーカリストによる約7年ぶりのソロ2作目。自身の声をパーカッションやループ素材として用いるなど、精緻で尖鋭的なプロダクションが施されているが、作品の軸はたおやかな歌とメロディー。ここにはオーセンティックなシンガー・ソングライター作品として享受できる普遍性がある。 *澤田
書籍「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」の著者であるジェーン・スーがコンセプト・プロデューサーで参加した、都会に暮らす不惑女性のサウンドトラック的な作品。大人の女の可愛らしさをしなやかに演出するビター・スウィートなシティー・ポップは、実は、同世代の男たちにもかなり沁みるものだ。 *桑原