Page 2 / 2 1ページ目から読む

オリジナル・アルバムで振り返るマイラバの20年

 akko藤井謙二のデュオを小林武史がプロデュースする形でMy Little Loverがデビューしたのは95年のこと。最先端サウンドを採り入れながらも、時の流れに風化しない普遍的なポップソングを追い求め続けるマイラバの基本姿勢はすでに、初作『evergreen』において明確に表明されている。“Man & Woman”“白いカイト”“Hello, Again ~昔からある場所~”など小林のセンスが満開となったヒット・シングルをはじめ、新人らしからぬ圧倒的な完成度を誇る楽曲が満載の本作。akkoの歌声が放つ豊かな色彩感覚もマイラバらしさを感じさせるものとしてここで定着する。2作目の『PRESENTS』はアコースティック色の濃い曲が存在感を増し、中期ビートルズ的な音作りが特徴の“NOW AND THEN ~失われた時を求めて~”など、どこか懐かしさを湛えた楽曲も目立つ内容に。一転、わずか半年後に届けられた『NEW ADVENTURE』はデジタルな感触が色濃く滲む作品となり、スペイシーな世界観を持つ“Private eyes”など新たなアプローチを提示する曲も多く登場。

 そして4作目『Topics』におけるいちばんの聴きどころは、ダークな“BABEL'S TOWER”といった藤井の作曲によるナンバーだろう。だが、雑多な音楽的要素がバランス良く配合された本作をもって藤井が脱退。続く小林との2人体制となってからの初アルバム『FANTASY』は、穏やかな空気を演出する打ち込み曲がひしめく落ち着いた印象の作品に仕上がった。

 その後、6作目『akko』からマイラバはakkoのソロ・プロジェクトとして再出発する。同作から鮮やかに浮かんでくるのは、心機一転し、明快なポップソングを追求するakkoの姿。その方向性は、キリンジ堀込高樹堀込泰行レミオロメン前田啓介を作家陣に迎えた7作目『アイデンティティー』やakkoによる初作曲ナンバーを含む8作目『そらのしるし』でも踏襲され、無垢でオーガニックな雰囲気を備えた楽曲が増えていく。この20年間、マイラバの中心にあったのは柔らかくて透明感溢れるakkoの歌声。過去作を振り返りながら、その魅力がまったくもって不変であることにただただ驚かされるばかりだ。 *桑原吏朗