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ハゲとかパンイチも、必然じゃなくて偶然

――しかし、こうしてインタビューしてても流石にいいネタが多いですね。

「いやいや(笑)。まぁ伊達に46年生きてないというか。ホンマにずーっと音楽やってたわけでもないんで」

――スタートの遅さがプラスになってる部分もあるんですかね?

「あります、あります。やっぱり広告系とかマーケティングの会社にいたから、自分の名前を売るのも当時の仕事と直結してると思います」

――ちゃんとマーケティングを考えてやってるんですね(笑)。

「例えば、よくバンドマンがチラシを作って配るじゃないですか。でも、チラシなんてアホほど溢れてるんで。そこで僕は自分のティッシュを作って配ってたんですよ」

――あ~、いかがわしさも出ていいですよね。

「あとはライヴハウスに貼ってもらう告知のポスターも、自分の目がLEDで光るようにしたりとか。わりとコストはかかっても……」

――最終的には回収できる。

「そう。普通のバンドマンって、地方に行ったら交通費で赤字になるとか、その瞬間だけで考えるやないですか。僕は1年スパンで回収できればいいやって会社で学んできたんで。昨年12月にワンマンで渋谷WWWを満杯にしましたけども、あのときもお客さん全員にTシャツをプレゼントしたお陰やって思っていて。だから、ソールドアウトでもお金はそんな残ってないけど、僕は〈WWWを満杯にした〉というのをお金で買いたかったんですよ。その話が1人歩きするんで。それはたぶんサラリーマンの発想やと思うんですよね」

――ちゃんとサラリーマン経験が活きてるんですね。

「ホンマはもっと破天荒に、ホテルの窓からバーッとテレビ投げたりとかムチャクチャしたいですけどね(笑)」

 

――で、CDを出してみてどうですか? いままではちゃんとした音源はまったく出してなかったわけですよね?

「そうですね、やっぱり環境は全然変わりました。これまではお客さんもなんとなくライヴに来とったのに、いまはCDのおかげなのか、コール&レスポンスも起こるようになってきて。サビもちゃんと歌ってくれるようになったり」

――〈CDを出すのって効果あるんだな〉ってあたりまえのことに気付いてる感じですけど(笑)。

「いやいやホントに。いままでも出したかったんやけども、出し方というか作り方がわからなかった」

――そういうシンプルな話なんですね。

「そうです。なんかこだわりがあったりとか」

――アーティストとしてのイメージが……みたいなものがあったわけではなく。

「そうそう。実際トラックはすでにあるから、スタジオに入ってヴォーカルだけミックスしたら出来てしまうんですけど、それでええんかなってのもあって。僕のやってることは、内容が聞き取れて、物語がわかってナンボやと思うし。それを通学途中の人や、ドライヴしながらデートしとる人が聴いとったら〈あ~うっとうしいわ~!〉とか〈もう止めて~!〉って絶対なると思うんです。だから僕はCD的じゃないのかなと思って、リリースに踏み込めなかったんですけども。でも加茂さんが、〈ちゃんと作らんとWWW埋まらんで〉と言ってくれて、結果的に凄く良かったなって」

『あなたのあな』収録曲“バンドマンの女”

 

――この先、知名度が上がっていくと名前を変えなきゃいけない段階も来るんですかね。

「いや~……」

――でも、放送禁止用語なわけではないじゃないですか。何かを想起させるだけで(笑)

「そうですね。ただ実際に、ちょっとした街ぐるみのフェスに出演するときとか、名前を変えさせられたことも何回かあって」

――玉袋筋太郎だとNHKはNG、みたいなのがあるんですね。

「ある東北のイヴェントに行ったら、クリ&トリックリスになっとったり」

――ダハハハハ! 大差ないじゃないですか。しかし、クリトリック・リスの〈リック〉はサイケデリックの〈リック〉だってことが今日の収穫でしたね。

「あ~、それ言ってもらえると嬉しいですね。僕が初めてフレーミング・リップスを聴いたときに凄く感動したのも、めっちゃハッピーな曲でも、なんか凄く物哀しいんですよね。身体は楽しくて動きたいんやけども、脳は哀しくて泣いている、みたいな。そういう日常ではなさそうなシチュエーションも、いわばサイケデリックなんじゃないかなと。そういうのに影響を受けたんで、イヤらしいかもしれんけど、〈泣き笑い〉みたいなのはちょっと採り入れてるつもりです」

――マヌケな話なんだけどなぜか泣ける、みたいな。

「そうですね。まぁそれで、“トイレの神様”みたいに強引に人を殺して泣かそうというのは絶対したくないんですよ。僕の曲に出てくるノンちゃんはホンマに死んでるんで。死んでない人を殺したりとか、そういう泣かし方はしたくない。自分の感情のなかで処理できるレヴェルで、泣きの部分を採り入れられたらいいなと」

――活動を始めたときからヴィジュアルはこういう感じだったんですか?

「もう36の時点で頭は丸めていましたね。30前半はブライアン・イーノ的にまだちょっと髪も残っていたんですけど、あるとき一厘刈りくらいにして。会社の人もめっちゃビックリしてました。ただね、やっぱり陰口は叩かれとったんですよ。〈あいつちょっとヤバイね〉みたいな。それが聞こえるようになって、まぁヅラも無理やなと。実は1回オーダーしてるんですよ。でも、1回も被ってない」

――カツラを持ってはいるんですか?

「はい。でも、被らなくて良かったです。ヅラも麻薬みたいなもんで、ずーっと被ってリニューアルして、被り続けないかんもんですし。それに、もしカミングアウトしてなかったらクリトリック・リスもやってないと思うし。ホンマに人生の分かれ目ですよ」

――たぶん、こういうルックスになったことで年齢を重ねるごとに味わい深くなっていきますもんね。

「ハゲとかパンイチも、必然じゃなくて偶然ですしね。初めはヤケクソでパンイチになって、たまたまハゲてきたから丸めて(笑)。3人が偶然来なかったおかげでリズム・マシーンを貸してもらえて、それでいまのスタイルがあるわけだし。やろうと思ってやったことじゃなくて、ホンマになんか流されていった。自分でも不思議やなと思いますね。こんな奴、なかなかいないと思いますよ」

――クリトリック・リスという名前やヴィジュアルが余計な縛りになっているかもしれないけど(笑)。

「ハハハハハ! でもね、名前とパンイチとハゲっていうのがアイコンにもなってるんで。だから名前もこのままで行けるんやったら行きたいですね」

 


 

〈クリトリック・リス × CQ 2マン〉
日時/会場:2月11日(木・祝) 大阪・北堀江club vijon
開場/開演:19:00/19:30
チケット:2,500円/3,000円(1D別)

〈恋をしようよVol.11〉
日時/会場:2月14日(日) 東京・新宿レッドクロス
開場/開演:18:00/18:30
出演:クリトリック・リス/恋をしようよジェニーズTHE TON-UP MOTORS
チケット:2,800円/3,300円(1D別)

〈クリトリック・リス「あなたのあな」リリース記念インストアライブIN 渋谷店〉
日時/開演:2016年2月22日(月) 20:00~
場所:タワーレコード渋谷店4Fイヴェントスペース
イヴェント内容:ミニ・ライブ&〈?会〉
参加方法:観覧フリー
問合わせ先:タワーレコード渋谷店 03-3496-3661

当日タワーレコード渋谷店にて、クリトリック・リス『あなたのあな』をご購入いただいたお客様に、先着でイヴェント参加券を1枚配布いたします。イヴェント参加券をお持ちのお客様はミニ・ライブ終了後の〈?会〉にご参加頂けます。
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