今から半世紀前の1975年4月25日、あるバンドが人知れずリリースした一枚のレコード。このアルバムはその後、現在に至るまで日本のポップミュージックに多大な影響を及ぼしつづけています。そんなシュガー・ベイブ『SONGS』の50周年記念盤のリリースを祝って、Mikikiはタワーレコードのスタッフたちへ〈『SONGS』と併売するなら?〉と聞いてみました。バイヤーとしての腕が問われる(?)それぞれの選盤、架空の『SONGS』コーナー展開をお楽しみください。 *Mikiki編集部
熊谷 祥(東浦店)
〈City Pop〉。日本から発信され世界中の音楽ラヴァーの注目を集めているこのジャンルの始まり的作品がシュガー・ベイブの『SONGS』なわけだが、その日本のシティポップに対するアジアからの最上の回答がこのIkkubaruの『Decade』。インドネシア発のシティポップバンドとしてAOR好きから熱い視線を送られてきた彼らだが、結成10周年の2024年にリリースされた本3rdは最高傑作と言っていいクオリティ。シティポップとAOR両方のエッセンスに加えて、亜熱帯の国らしい陽光を感じさせる熱気が個性を醸し出す。「音盤紀行」の作者である毛塚了一郎氏書き下ろしのジャケットも音楽とのシンクロ率が高く傑作と呼ぶにふさわしいアルバムですよ。
叶 歩(藤沢オーパ店)
『SONGS』は説明不要、シュガー・ベイブ唯一作にしてJ-POP史屈指の金字塔として君臨する名盤ですが、そのサウンドの影響はシティポップは勿論、果ては海外へも波及しているのは周知の通り。
今日は湘南藤沢から、最高のハワイアンAORを届けるハワイの日系バンド、グリーンウッドの一枚をご紹介。
ハワイ出身日系ロビン・キムラを中心に結成され、シティポップブームが起こるはるか昔の1985年に名曲“Sparkle”のカバーを自主制作でリリース。ハワイアンAORを世に知らしめたアーティストですが、今作は24年にリリースされた最新作。
『SONGS』収録の①“Down Town”始め、②“Magic ways”、➄“Your Eyes”、⑦“Recipe”など山下達郎カバーが4曲も収録。ほか、竹内まりや、桑田佳祐、久保田利伸など選曲も極上。原曲をリスペクトしながらも、爽快なメロウアレンジが至福の10曲。
TANAKAHMANN(新宿店)
今回のお題〈シュガー・ベイブ〉、アレもコレもと思い浮かびましたが、どれもベタ過ぎて……悩んだ挙句、最近拙宅のレコード棚から再発見・聴き込んでいる一枚を。そもそも日本語によるポップスを進化・発展させてきたのは〈はっぴいえんど~大瀧詠一~シュガー・ベイブ〉の系譜だけじゃないぞ!という意味も込めてレコメンド。
70年代初頭にアメリカの大手MGMレコーズと契約、全米を回った伝説的なバンド=ブラウン・ライス。そのメインボーカリストのひとり、惣領智子が77年に発表した2ndソロアルバムとなる本作は、細野晴臣を師と仰ぐシンガーソングライター西岡恭蔵とその愛妻KUROが作詞を手掛けたライトメロウ名曲“City Lights by the Moonlight”から始まり、シュガー・ベイブ“雨は手のひらにいっぱい”と並べて聴きたいレイニーソング“信号機”や粘っこくファンキーな“めざまし時計”、“I Say Who”、メロウグルーヴな“ふたりの朝”など、アルバム通して楽曲も粒ぞろい。
サウンドプロデュースを務めた惣領泰則はそのブラウン・ライスのリーダーであり、ソウルやディスコフュージョン、ソフトロック~A&Mサウンドをうまく歌ものポップスに落とし込んだ手腕に唸らされる。
なにより、大橋純子や八神純子などの実力派ボーカリストたちにも比肩する歌唱力・表現力で聴かせる惣領智子はもっと評価されるべき歌手のひとり。
日本の音楽業界に勢いがあり、贅沢にバジェットを使い最高のミュージシャンを揃え録音された日本のポップス最高峰の一枚といえるだろう。