EMPIRE STATE OF MIND
【特集】深化するNYインディー
この街からはいつだってヒップでクールな音楽が聴こえてくる――トレンドの賞味期限は日に日に短くなる一方だけど、それだけはずっと変わらない事実。インディーの首都NY、その最新コレクションを覗いてみよう!
★Pt.1 アニマル・コレクティヴ『Painting With』のインタヴューはこちら
★Pt.2 ラ・ラ・ライオット『Need Your Light』のインタヴューはこちら
★Pt.3 いま聴くべきNYインディー作品のディスクガイドはこちら
★Pt.5 スクール・オブ・セヴン・ベルズ、ダイヴ、チェアリフトについてのコラムはこちら
NYインディーの注目レーベルを紹介!
TERRIBLE
アルバムとしては2012年の『Shields』からリリースの止まっているグリズリー・ベア。昨年に新曲作りを始めたとの情報も出たが、一部のメンバーはLAに越しているため、果たしてどうなることやら。そんなマイペースの本隊とは打って変わって、クリス・テイラーが主宰するテリブルは次々に俊英たちを送り出し、いまもNYシーンを活気付かせている。その筆頭は牧歌的なドリーム・ポップとエッジーなエレクトロニック・サウンドの融合を図るエンプレス・オブだろう。スタイルは異なるが、ゴシックな空気を纏った歌唱には、同じくブルックリンで活動するジュリアナ・バーウィックみたいな神秘性が宿り、カリスマ性も十分。
そして、エンプレス・オブとは対照的なド派手キャラのゲイ・ラッパー/プロデューサー、リーフの初作『Riot Boi』もこれまた凄かった。デヴ・ハインズやジャングルプッシーらが客演しているほか、気鋭プロデューサー陣(ソフィー、ダブル・ダッチ、エヴィアン・クライストなど)が腕を振るい、奇抜なトラップ/グライムを提供。それらをネチネチしたフロウで乗りこなす主役が、何よりカッコ良くて!
さらに、パーフェクト・プッシーとステージを共にすることの多いシック・フィーリングのカオティックなパンク盤『Suburban Myth』や、サイケ/シューゲイズ・ポップ/ハウスが混然一体となったLA出身のリーガル・ディーガルによる『Not Now』(クリスみずからがプロデュース!)も、スキモノたちを虜にし……。なお、いずれの作品も一筋縄ではいかないので、心してどうぞ。 *青木正之
CAPTURED TRACKS
マイク・スナイパーが2008年に設立したキャプチャード・トラックスは、ブルックリン・シーンを代表する人気レーベルだ。LAのダム・ダム・ガールズやヴァージニアはブラックスバーグのワイルド・ナッシングを輩出し、規模を広げていった一方、過去1年を振り返ってみても、60年代趣味を忍ばせたギター・ポップで人気急上昇中のEZTV、女性シンガーをフロントに据えたノイズ・パンク・バンドのパーフェクト・プッシー、ドリーミーなサイケ・ポップを鳴らすウィドウスピークらのアルバムをリリースするなど、地元アーティストのサポートにも変わらず尽力。その姿勢に好感が持てる。
シューゲイザーやパンキッシュなギター・ロックを得意とする集団……なんてイメージも強いだろうが、それはキャプチャードのひとつの側面にしか過ぎない。例えばシカゴ・ハウスやイタロ・ディスコの要素を見い出せるソフト・メタルズは、同レーベルの多彩な方向性に華を添えている一組と言えよう。
また、80年代にUKのポスト・パンク・シーンでカルト的な人気を博したデュオ、シャイニー・トゥー・シャイニーのコンピレーション『When The Rain Stops』を発表するなど、近頃は埋もれていた音源を掘り起こす作業にも手を伸ばしはじめている。さらに、マイク社長はトラブルマン・アンリミテッドの主宰者であるマイク・シモネッティと新レーベルの2MRを立ち上げて……と、この周辺の賑わいは、まだしばらく続きそうだ。 *近藤真弥
DOUBLE DOUBLE WHAMMYS
レヴェル・アップのメンバーが2011年に設立したダブル・ダブル・ワミーは、カセットや7インチを少量だけプレスするという界隈のブームに倣い、もともとそっちに力を入れていたレーベル。が、CDへの揺り戻しが始まりつつあるシーンの流れもあって、これから徐々にタワレコでも入手できる作品が増えていきそうです。で、ひとまずこの2枚――フランキー・コスモスのバックを務めるガブリエル・スミスのソロ・プロジェクト=エスキモーの『O.K.』と、男女4人組のフローリストによる『The Birds Outside Sang』。音を簡潔に説明すると、キャット・パワーやワクサハッチーに繋がるようなドリーム・フォーク・ポップです。マージやK好きというオーナーの趣味が前に出ていて、リリース形態が変わっても、このまま90sなオルタナ感にこだわっていくんだろうな。 *山西絵美